【医療介護あれこれ】これからの有床診療所に求められる役割とは・・・

長 幸美

アドバイザリー

地域医療構想の中で『有床診療所に求められる役割』とは何かを考えてみたいと思います。

平成28年度診療報酬改定は、『地域医療構想を後押しする改定』であると位置づけられており、病床機能分化をはじめ、外来の機能や医療・介護サービスの確保を着実にすすめることを検討されていることは皆様ご承知の通りです。
ある意味有床診療所にとっては『市場の拡大』、大きなチャンスと捉えることもできます。

では、その背景から簡単にお話ししましょう。

お正月の日経新聞にもありましたとおり、人口は昨年約30万人弱の減少があり、超高齢化社会に向かって加速していると考えられます。認知症患者数は、久山町研究事業の報告から、上方修正され、10年後には700万人とも800万人とも増加の予測があります。少子化・核家族化が進んだ今日では、介護離職の問題も大きく、働きかたや介護の支援の為の仕組みをどうするのかということも議論されています。

そのような中で、地域に密着して医療・介護を提供されている『有床診療所の役割』はどのように位置づけられているのでしょうか?

平成26年の「医療介護総合確保推進法」により、医療法が改正され、有床診療所の役割が明確に規定されました。

○医療法第30条の7(抜粋)
2 医療提供施設のうち次の各号に掲げる者の開設者及び管理者は、前項の必要な協力をするに際しては、良質かつ適切な医療を効率的に提供するため、他の医療提供施設との業務の連携を図りつつ、それぞれ当該各号に定める役割を果たすよう努めるものとする。
一 病院 病床の機能に応じ、地域における病床の機能の分化及び連携の推進に協力し、地域において必要な医療を確保すること。
二 病床を有する診療所
その提供する医療の内容に応じ、患者が住み慣れた地域で日常生活を営むことができるよう、次に掲げる医療の提供その他の地域において必要な医療を確保すること。
イ 病院を退院する患者が居宅等における療養生活に円滑に移行するために必要な医療を提供すること。
ロ 居宅等において必要な医療を提供すること。
ハ 患者の病状が急変した場合その他入院が必要な場合に入院させ、必要な医療を提供すること。

平成28年度診療報酬改定においても、以下のように議論が行われています。
無題

中央社会保険医療協議会総会(第262回)(H25.12.4)資料

有床診療所の役割が明確化するとともに、医療の機能分化も進み、『治す医療から、治し支える医療へ』転換期を迎えています。『在宅療養支援診療所及び病院(200床以下)』の評価も上がり『後方支援』としての有床診療所・中小規模病院の評価が大きくなってきています。また、『他院との連携』『多職種との連携』を実施されることに対し評価されてきています。

具体的な有床診療所が担っていると考えられている役割です。
① 病院からの早期退院患者の在宅・介護施設への受け渡しとしての機能
 ② 専門医療を担った病院の役割を補完する機能
 ③ 緊急時に対応する医療機能
 ④ 在宅医療の拠点としての機能
 ⑤ 終末期医療を担う機能

如何でしょうか? どのようにお感じになられますか?
「重たいなあ」「うちひとりでやろうと思っても、夜間や休日の対応は難しいよ」ということが正直な感想ではないでしょうか?
でも、ちょっと待ってください。
『ひとりで支えよう』と思うから気持ちがなえてしまうと思うのです。

生活には『これで終わり』というものがありません。介護事業所や高齢者住宅では高齢化に伴う体の変化や呼吸の変化など、対応に不安を抱えている方も多くあります。『看取り』や『ターミナルケア』を行う事業所はなおさらです。在宅医療で大事なことは、高齢者が自宅で安心して暮らし続けることができるように、『病気』と上手に付き合い、『健康を維持する(予防)』ことをサポートすることだと思うのです。これは、小児や難病の方、障害者も同様だと思います。まさしく『地域包括ケアシステム』です。

『地域包括ケアシステム』『地域の実情に応じて、住み慣れた地域ですみ続けることを支援するための体制』です。『住まう人』を中心に互いに支援しあうこと、医療・介護・福祉が連携して『一緒になって』支えあうこと・・・つまり、役割分担なのです。
『地域の生活を支える』ためには、医療と介護の連携(一体化)、『後方支援』『多職種連携』が重要になり、その後方の支援をしていくことが必要となってきます。

これから先、診療報酬改定の審議が進んでくると思われますが、有床診療所の役割は明確化されてきていますし、地域の中では必要不可欠なものであると考えられます。
有床診療所にとってはまさに好機到来! 市場拡大のチャンスです。
改定への準備として、『自院の機能や提供できる医療』を見つめ、『地域』を見つめ何が必要か、何を必要とされているのか、これからの自院の運営を考えるうえで、『軸足をどこにおいていくのか?』・・・じっくりと考えてみませんか?

経営コンサルティング部
経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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