【医療介護あれこれ】リハビリテーションの変更点①:概要

長 幸美

アドバイザリー

平成28年度の診療報酬改定ではリハビリテーションの考えかたが大きく変わり、戸惑う事も多いのではないでしょうか。昨年の介護保険の改定で通所リハビリテーションに「目標管理」が必要になり「卒業」という概念が入ってきました。それと同時に自宅での生活の実際を元に必要なリハビリを行う事を求められてきました。今回の改定で新たに導入された「目標設定等支援・管理料」では、維持期(生活期)になった方は「医療から介護へ移行」という道筋が明確になって、さらに維持期(生活期)のリハビリは介護保険で行うと言う方向性が明らかになってきました。
今回は、維持期のリハビリテーションと目標設定等支援・管理料について整理してみましょう。

先ずは現在のリハビリテーションの流れをおさらいしましょう。
下記の図は今回の改定の説明会資料ですが、このように「急性期でのリハビリ」から「回復期」、「維持期」とリハビリテーションを行う場所も内容も変わっていくことがこの表により明確化していると思います。
リハビリ

(出典:平成28年度診療報酬改定の概容 20160304)

また、その治療に必要な日数の目安が以下のように整理をされていますが、ここで注目すべきは疾患別リハビリテーションの中に「廃用症候群」に対するリハビリが独立したということです。
また、改定のQ&Aが少しずつ出されていますが、
長期臥床による運動器不安定症によるものであった場合は廃用症候群リハビリテーションで算定
運動器不安定症の算定開始については最初に診断された日を起算日とする
などの回答が出されています。

なお、運動器不安定症については、定義や診断基準なども明確化されていますので、ご留意ください。
参考までに運動器不安定症の定義と診断基準について以下に記載します。

<運動器不安定症の定義>
高齢化に伴って運動機能低下をきたす運動器疾患により、バランス能力及び移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり転倒リスクが高まった状態

<診断基準>
下記の、高齢化に伴って運動機能低下をきたす11の運動器疾患又は状態の既往があるか、又は罹患しているもので、日常生活自立度並びに運動機能が以下の機能評価基準に該当する者

(機能評価基準)
1.日常生活自立度判定基準 ランクJ又はAに相当
2.運動機能: 1)又は2)
1)開眼片脚起立時 : 15秒未満
2)3m timed up-and-go(TUG)テスト : 11秒以上

(高齢化にともなって運動機能低下をきたす11の運動器疾患又は状態)
①脊椎圧迫骨折および各種脊柱変形(亀背、高度腰椎後湾など)
②下肢の骨折(大腿骨頚部骨折など)
③骨粗しょう症
④変形性関節症(股関節、膝関節など)
⑤腰部脊柱管狭窄症
⑥脊髄障害(頚部脊髄症、脊髄損傷など)
⑦神経・筋疾患
⑧関節リウマチおよび各種関節炎
⑨下肢切断後
⑩長期臥床後の運動器廃用
⑪高頻度転倒者

各疾患別リハビリテーションの急性増悪の定義は、リハビリテーションの通則へ「対疾患の増悪により、1週間以内にFIM又はBIが10以上低下するような状態等に該当する場合」という文言が追加された事により、全ての疾患別リハビリテーションに適用される事になりました。

また、今回の改定においては、初期加算・早期加算の起算日と算定要件の変更・明確化されていますので、注意が必要です。

<リハビリテーション算定日数の開始日と日数>

日数 開始日
心大血管疾患リハビリテーション 150日 治療開始日(変更なし)
呼吸器リハビリテーション 90日
脳血管疾患等リハビリテーション 180日 発症・手術・急性増悪又は最初に診断された日
運動器リハビリテーション 150日
廃用症候群リハビリテーション 120日 廃用症候群の診断又は急性増悪から起算

<初期加算、早期加算の起算日と算定要件>
初期加算(14日間)、早期加算(30日間)の起算日は、起算日の明確化・厳格化が行われました。
以下の表をご参照ください。

起算日
心大血管疾患リハビリテーション 発症、手術若しくは急性増悪から7日目又は治療開始のいずれか早いもの
呼吸器リハビリテーション
脳血管疾患等リハビリテーション 発症、手術又は急性増悪の日
運動器リハビリテーション
廃用症候群リハビリテーション 廃用症候群にかかる急性疾患の発症、手術若しくは急性増悪又は廃用症候群の急性増悪の日

また、外来で算定可能なものが限定化されていますのであわせてご注意ください。

点数 入院で算定可能なもの 外来で算定可能なもの
早期加算  30点

心大血管疾患リハビリテーション

呼吸器リハビリテーション

脳血管疾患等リハビリテーション

運動器リハビリテーション

廃用症候群リハビリテーション

脳血管疾患等リハビリテーション

運動器リハビリテーション

 初期加算  45点

 

※経過措置:平成28年3月31日時点で早期加算又は初期加算を算定している者については従来どおりとする

疾患別リハビリテーションを算定する場合には、レセプトの適用欄に、以下の2点を記載(コメント)することが求められています。
①疾患名
②当該疾患の治療開始日又は発症日、手術日又は急性増悪の日
 

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著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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