【医療介護あれこれ】適時調査と個別指導

長 幸美

アドバイザリー

11月に入り、すっかり朝夕が冷えて、紅葉が鮮やかになってきました。
先月、岐阜の飛騨小坂へ行ってきましたが、とても自然が豊かなところで、朝夕はひんやりとして、紅葉も始まっていました。秋も中盤といったところでしょうか・・・

私ども佐々木総研は、税務会計の会社が母体となり、お客様は医療機関や介護事業所の方が多い関係もあり、様々な法律の中で日々の業務が行われています。その中で、このところお問い合わせが多くなってきている話題をお届けします。
医療機関は、医療法の中で「医療機関としての最低限のルール」が定められています。これは病院を運営するうえで、一番基本になるものです。
この表は、人員配置の基準の表ですが、施設設備に関することや医療安全面のルールなど医療機関を運営する最低限の必要なルールがまとめられています。
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保健所が年に1回、「立ち入り調査」に来ますが、それは、この「医療法第25条」に基づいた検査となっています。参考資料を添付していますのでご覧ください。

さて、本題に入ります。この医療法の規定のほかに、「保険医療機関」としての指定を受けています。それと同時に、医師は、医師免許を取得した後、「保険医」としての資格も取得しています。そこで基本となるものが、「保険医療機関及び保険医療養担当規則」略して「療担規則(療担)」といわれるものです。

医療機関は、様々な法律で規制もされています。半面、法律により守られていることもあります。先ほど述べた「療担」の中で、年に一回「定例報告」を行うことが定められています。これは、施設基準等の届け出を行っている内容について、医療機関の中で自主点検を行い、地方厚生局あてに実地状況を報告するものです。

施設基準の届け出に関しては、医療機関の責任において、「施設基準を満たしているかどうか」の検証を行い、地方厚生局に届け出をします。その時に、地方厚生局は届け出内容に関し、要件審査を行い、受理・不受理を決定します。医療機関は、受理され、取得した施設基準に関しては、算定を続ける限り施設基準の要件を満たし続ける必要があります。
適時調査は、この施設基準が守られているかどうかの調査ということになります。

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平成16年にこの適時調査と定例報告の方法が若干変わりました。

自主点検でどうだったのか、という右のような報告書を事前に出すことになりました。基準を満たさない状況であれば、自主的に取り下げをすることになります。
つまり、基準管理については、全面的に医療機関の責任のもとに行うことになります。

                                                   

 

                                                     

適時調査はあくまでも届出を行われている施設基準が守られているかどうか・・・ということの確認になります。しかし、「個別指導」に関しては、健康保険法第73条に規定され、保険診療の取り扱いや請求に関する行政指導の意味合いが含まれています。

このところクリニック様で「集団的個別指導」や「個別指導」が入るといったお声を聴く機会が増えてきました。

「集団的個別指導」は、封書又はハガキが届き、集合研修の後、個別に算定状況の確認や指導が行われることがあります。しかし、この「集団的個別指導」に参加しない場合は、個別指導に移行する可能性がありますので、注意が必要です。

集団的個別指導は、レセプト1枚当たりの平均単価が高い医療機関が対象となることが多くなっています。これは、間違えた保険請求により高額になっていることがないかどうかを確認するようにという意味合いが含まれています。これは診療科による格差を是正して判断されているというふうにお聞きしています。先生方の診療を是正するものではありませんので、過剰に反応して「診療内容を請求しない」ということがないようにしていただきたいと思います。

また、個別指導に関しては、「返戻や査定」により診療内容の確認や注意喚起を促しているにも関わらず、漫然と請求を行っていると疑われた場合、また、適時調査等で明らかに違反していることが分かった場合や是正指導に従わなかった場合などで個別指導に移行する場合があります。この場合、診療報酬の返還や改善計画の提出等が必要になる場合があります。

保険診療上は「懇切丁寧に療養の給付を担当」しなければならないこと、「療養の給付は、療養上妥当適切な者でなければならない」と定められています(療養担当者規則第2条)。また、保険医の診療は、医師又は歯科医師が「適確な診断をもととし、患者の健康の保持増進上妥当適切に行わなければならない」とされています(療養担当者規則第12条)。
また、保険診療の具体的方針に「必要と認められる場合」に行うことも定められ、過剰な診療や特殊な治療等は行わないようにということも明記されています。

診療の根拠、保険請求の根拠は「カルテ」の中にあります。
この機会に一度先生方の医療機関で「施設基準」の見直しを行い(自主点検)、基準の管理ができているのか、記録が行われているか、保険請求は妥当であるのか、という視点で見直されてみては如何でしょうか?

<参考>
※各市町村にこれらの基準は公開されていますので、市町村のホームページをご確認ください。
福岡市 診療所 立入り検査基準(平成27年5月作成)

平成26年度の医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査の実施について

福岡市 平成28年度福岡市病院立入検査

平成28年度 保険診療の理解のために(関東信越厚生局東京事務所・東京都福祉保健局)

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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