【医療介護あれこれ】入院医療(その3)

長 幸美

アドバイザリー

今年のゴールデンウィークは、お天気に恵まれましたね。福岡では「博多どんたく港祭り」が行われましたが、この好天のなか・・・と思いきや、スコールのような雨が降り、ドンタク恐るべし!と感じたかたは私だけではないのではないでしょうか?

今回のコラムは先月末に行われた中医協の中から「入院医療(その3)」についてみていきたいと思います。

「入院医療(その3)」では、療養病床がその議論の中心となりました。

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出典:厚労省「入院医療(その3)」20170426

医療の提供体制としては、病床数は増加傾向にある一方で、平均在院日数はやや減少傾向にあり、1年を切り、療養病床1で337.2日です。反面、稼働率は88%とかなり高い水準を維持しています。また、療養病床1の届出病床が増加傾向にあります。

医療療養2(25対1)は、今年度末で経過措置が切れ、その後の動向が注目されています。今現在、介護療養へ転換することはできません。将来的に人員の確保や患者さんの在宅移行支援の現状からすると、施設への転換が進んでいくのではないかと思います。

療養病床の平均単価は、療養病棟入院基本料1で平均51,922点、基本料2で40,621点となっています。福岡県では、全国平均よりも若干低くなっています。
人員の配置はいずれの基準においても多めに配置されているのが現状で、看護師1人当たりで換算すると基本料1で3.3人、基本料2では3.8名となっています

認知症を有する患者の割合は約6割と高い状況です。

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出典:中医協資料:入院医療(その3)20170426

このように認知症の患者は、診断基準が明確になってきたこと等で、一般的にも増加の傾向にあると思いますし、80歳以上の高齢者は2人に1人は認知症の患者であること等が予測されてきています。これらの結果からも、必然的に、今後、施設も含めて慢性期の病床では認知症の対応が必須となってくることが予測されてくると思います。

現実の問題として、私の周辺でも、夫婦2人のうち1人は認知症であったり、近所の方でも認知症の方を介護されているという話が増えてきています。先日同窓会に出かけた時に、約三分の一の方が認知症の介護をしているという話があり、そのために同窓会に来られないという友人もいました。とても他人事ではありませんね。

医療機関・介護事業所は、この対策として、「認知症研修」を取り入れ、専門職だけでなく事務職まで、病院を挙げて認知症への対策を講じていく必要があるのではないでしょうか?

また、入院の状況を見てみると療養病床入院基本料1では、医療区分2.3の割合が高く、基本料2では医療区分1の割合が高くなっているのが現状のようです。

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出典:中医協資料:入院医療(その3)20170426

最後に、看取りについてですが、国民の意識調査では、約6割ができるだけ長く自宅で過ごしたいという思いは持っているが、家族への遠慮(配慮といったほうがよいかもしれませんが・・・)や体調変化時の不安などから、多くの方が難しいのではないかということを考えていらっしゃるようです。

それに加えて、先生方の中にも「看取り」や「ターミナル期」の医療的対応について、多くの不安を抱え、在宅に踏み切れない方もあるように感じています。そのようなところからも在宅への移行がなかなか進まないということがあるのではないでしょうか?

中医協のこの議論の中で、やはり地域包括ケアの考え方が見え隠れしてきます。
入院医療の機能分化を整理していく中で、この慢性期病床をどのように考えていくのか、施設としてどのような対応をしていくのか、入院患者さんの分析とともに、地域のニーズや自院の役割を見直す必要があるのではないかと思っています。

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出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「<地域包括ケア研究会>地域包括ケアシステムと地域マネジメント」
(地域包括ケアシステム構築に向けた制度及びサービスのあり方に関する研究事業)、平成27年度厚生労働省老人保健健康増進等事業、2016年

 

<参考資料>
入院医療(その3)

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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