【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】個別事項(その3)について
長 幸美
アドバイザリー新米の便りが届き、実りの秋を感じている今日この頃ですね。
さて、中医協も10月11日に個別事項(その3)として、救急医療、小児・周産期医療、医療安全対策について協議されました。
【救急医療】
救急医療は年々増加し、平成27年度は600万件の出動件数に上っています。この10年間に、約15%の増加をみています。中でも高齢者に締める割合が高く、約半数は軽症症例が含まれていることも現実にございます。
救急医療の整備体制としては如何でしょうか?
出典:中医協資料 個別事項(その3:救急、小児・周産期等)より
救急医療体制の整備としては、都道府県ごとに救命救急センターを指定(都道府県知事の指定)し、必要に応じドクターヘリ・ドクターカーによる救命救急医療を提供するべく整備されています。現在は47都道府県に288か所整備され、徐々に増加してきています。
反面、二次救急医療機関は減少傾向にあります。応需状況の公表を含めて、救命救急センターの充実状況を段階評価し、受け入れ応需体制、地域貢献度、地域の関係機関との連携等を含め、評価が検討されています。
年齢別では、高齢者の搬送が半数を占め、軽度者から中度者の搬送が増えているという状況があります。このようなことも含め、充実段階評価にかかる加算を設け、診療報酬上の評価を検討されています。
【小児・周産期医療】
小児慢性特定疾患にかかっている児童等については、長期にわたる療養を要することが多く、医療費の一部を助成する制度があります。
対象者としては、14の疾患を指定されており、悪性新生物、慢性腎臓病、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、内分泌疾患、内分泌疾患、糖尿病・・・など、長期にわたる療養が必要で、かなりの経済的な負担が考えられます。現在のところ、罹患者数は横ばいで、今後も維持される傾向にあると考えられています。15歳以上の子でも小児科による入院を受けている患者があり、今後小児慢性特定疾患医療支援の対象となる患者については対象年齢の上限を見直すことも検討されています。
出典:中医協資料 個別事項(その3:救急、小児・周産期等)より
妊娠・出産にかかる支援体制は、下記の通り、母子手帳の交付、相談窓口、妊婦健診から出産後には訪問指導等でサポートするように体制をとられています。
出典:中医協資料 個別事項(その3:救急、小児・周産期等)より
この中でもあるように、妊娠出産への母体の安全と精神的なサポートも踏まえ、妊娠~出産育児へのサポートを実施するように支援体制をとられています。
高リスクの妊産婦さんの出産や、精神疾患を抱えた妊産婦さんの出産などが増加していること、自費健診である妊婦健診を受けない妊婦さん方が増えていて、周産期の危険を大きくしていることも課題となってきています。
出典:中医協資料 個別事項(その3:救急、小児・周産期等)より
お薬については、胎児への影響が出る可能性があるため、このような体制で、お薬の情報を共有しEBMに基づいた治療を行えるように支援体制が整備されています。
周産期医療の体制としても、母子医療センターと一般病院やクリニックが手を携えて分娩へのリスクへ対応できるように考えられていますが、これらの体制について、どのように評価していくのか、現時点では現状の把握と課題の整理が進められている状況です。
出典:中医協資料 個別事項(その3:救急、小児・周産期等)より
妊産婦のメンタルヘルスケアについても多職種協働チームによるアプローチが必要だと思われますが、院内だけではなく、学校、行政スタッフ、公民館等の協力も欠かせないものと考えられています。
出典:中医協資料 個別事項(その3:救急、小児・周産期等)より
これらの中で、医療として診療報酬上どのように評価していく必要があるのかが議論の中心となっているように思います。
【医療安全対策】
これまで、横浜で起きた患者の取り違えや、都立広尾病院の消毒薬の誤注入など生命にかかわる医療事故の発生から、「医療の安全対策」について様々に議論され、平成27年10月からは医療機関において発生した死亡または死産事例を対象に、医療事故調査制度が施行され、医療事故の原因を明らかにするための必要な調査を行うことが義務付けられてきました。
出典:中医協資料 個別事項(その3:救急、小児・周産期等)より
そのような中で、医療安全管理部門への医師の関与について、専従の医師、看護師、薬剤師の配置がある場合には、医療安全管理体制が有意的に効果があるという報告がされました。診療報酬上の評価はまだまだ低いように思いますが、現行の医師の配置要件など、評価の見直し検討が提案されています。
まだまだ、現時点では課題の整理と、検討の方向性、要望等が出されている状況ですので、明確な方向性がわかるわけではありません。しかしながら、現時点で審議会として何に注目しているのか、現状の皆さんの医療機関の状況をしっかりと見定め、医療機関としてどのような機能を持ちたいと思っているのかも含めて見直していくことも必要な時期ではないでしょうか?
<参考資料>
中医協資料:個別事項(その3)救急、小児・周産期、医療安全
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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