【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】個別事項「外来医療(その3)」について②
長 幸美
アドバイザリー前回は、①生活習慣病の重症化予防、②遠隔診療について述べました。今回は、③後発医薬品の使用促進、④多剤・重複投薬等の適正化について述べます。
【後発医薬品の使用促進】
後発医薬品に関しては、「骨太方針2017」の中で、2020年9月までに後発医薬品使用割合を80%とし、できる限り早期の達成ができるように使用促進を図ることが目標とされています。
調剤薬局の後発医薬品調剤体制加算の算定割合としては68%を超える状況となっており、前回改正の影響が大きいと考えられます。
後発医薬品を選ぶきっかけとしては「薬剤師からの説明」により後発医薬品を選択した患者が多い状況が報告されています。
ジェネリック医薬品を使用したくないという患者が一定量(3割弱)いるのも事実で、その理由として①副作用に不安がある、②使い慣れたものがよい、③切り替えて副作用・効き目や使用感が悪くなった、と答えています。
しかしながら、約3割弱の方が、具体的なきっかけがなかったり、医師がすすめなかったり、ということを使用しない理由として挙げられており、調剤薬局の薬剤師や医療機関の医師への働きかけが必要な状況もうかがえる結果となっています。
医師にとっては、一般名処方についてすべての一般名処方を行うことにより、加算点数が付く仕組みがありますが、今後は一般名処方の増加が後発医薬品の調剤に有効との調査結果もあり、次期改定において、方策が検討されていくものと思われます。
【多剤・重複投薬等の適正化】
高齢者になるにしたがって、定期的に内服する薬剤の種類が多くなる傾向があります。これは対症療法や、フリーアクセスにより、様々な医療機関で、それぞれの症状に合わせた投薬が行われています。
これら多剤投薬については、様々な副作用があり、転倒等の危険や腎機能・肝機能の低下に影響があることなど、考えられています。この中には薬剤師の役割が明記されています。
出典:20171101中医協資料「外来医療(その3)」より
日本医師会は、下記のようにかかりつけ医に対し、適正な処方を行うように手引きを作って呼びかけています。
出典:20171101中医協資料「外来医療(その3)」より
前回改定においては、「かかりつけ医師及び入院を受け入れた医療機関の医師」と「かかりつけ薬剤師・調剤薬局」に対し、2種類以上減薬できればその説明や手間について評価した点数を配点しました。
「かかりつけ薬剤師、調剤薬局」に対しては、「医療機関への疑義照会への対応」と「残薬管理」について評価が付きました。
また、薬剤師の処方提案に関し提案が増えたかという問いについては、9割の事例で、薬剤の変更や減少があったとの報告があり、かなりの手ごたえがあるようです。
この取組については、今後も進められていくのではないでしょうか?
処方を行う医療機関としてもしらない顔はできないように思います。
出典:20171101中医協資料「外来医療(その3)」より
また、この残薬管理にも関連するのではないかと思いますが、長期投薬を行った場合の「分割調剤」への評価があります。長期処方については、前回改定前と比較して30日を超える長期投与を行う医療機関が増えています。医師の負担軽減の観点からも、慢性疾患の長期投薬は推奨されているように思いますが、その反面、お薬の紛失や飲み忘れ等のトラブルも増加しているのではないでしょうか?
私の知り合いの「訪問薬剤師」は、いろいろな工夫をしながら「飲み忘れ」をなくすように努力をされています。
我が家の老親も「お薬カレンダー」で管理をしていますが、認知症が進んでくると、「日付や曜日の感覚」がなくなり、飲んだのか飲まないのかわからなくなることもあるようです。訪問介護、訪問看護も含めて、連携を取りながらサポートしていくことが必要になるかもしれません。
出典:20171101中医協資料「外来医療(その3)」より
また、平成24年度の診療報酬改定~、ビタミン剤、うがい薬、湿布薬の保険調剤が制限されています。現在は血行促進・皮ふ保湿剤(ヒルドイド)の美容効果が注目され、美容目的の方へも保険調剤が行われていたことが判明し、マスコミにも取り上げられ、大きな話題となっています。治療目的か美容目的かにより、保険で取り扱いができるかどうかが分かれてきます。
保険医療機関として、医療人として適切な使用を行うようにするべきではないか、ここでも基本に返り「保険診療とは」ということを考える必要があるのではないかと思います。
こう考えていくと、「原点に返り、振り返る」ということも非常に大事ではないかと思う今日この頃です。
◆参考資料◆
経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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