【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】入院医療(その8)

長 幸美

アドバイザリー

今回は入院医療(その8)についてみていきましょう。
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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

【入院医療の評価体系】
前回の改定で、「7対1」から「10対1」への意向へ誘導されましたが、なかなか「10対1」への移行が進んできませんでした。また、徐々に要件が複雑化し、わかりにくい状況となっていました。

今回の改定では、急性期機能、回復期機能、慢性期機能、という機能別に基準となるものを決め、重症度や看護配置等を加算により配点し、評価体系自体を変えていこうというものが出てきました。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

入院医療の機能別の評価としては以下のスライドのように提案されています。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

たとえば・・・
急性期病棟については、「一般病棟10対1入院基本料」を基本として、重症度、平均在院日数、看護配置等で加算をつけていく、など・・・

慢性期については、「療養病棟20対1入院基本料」を基準として、「医療区分2.3の割合50%」「在宅復帰率」により加算をつける。満たさなければ減算・・・など。

回復期機能については、ベースを決め、入院元等により加算を検討する・・・など。

大きく変わると思われますが、すっきりとするのではないでしょうか?

また、「重症度、医療・看護必要度」については、手術後の日数の見直しなどが行われるのではないかと思われます。

 

【救急医療(その2)】
救急医療管理加算については、現在も非常に査定が多いのが現状となっています。
二次救急医療機関における重症救急患者の見直し等が行われるのではないかと思われます。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

二次救急医療機関は、許可病床数が少ない中小の病院が多くなっていますが、その看護体制の確保が課題となってきています。
つまり、病棟の看護師が対応する屋艦隊などは、1名が救急対応をするために、病棟の夜間の看護基準を満たさないということがおこっています。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

この救急医療管理加算、二次救急の救急搬送受け入れ態勢について、病床規模が小さい病院については看護基準の緩和をするかどうかということも含め整理されています。

 

【短期滞在手術等基本料】
DRG/PPSの考え方を入れたものが、この短期滞在手術等基本行になると思います。
今回の改定で、DPC対象病院との整合性や診断群分類について算定のルールも含め検討されるようです。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

【入退院支援】
病院は、そもそも「治療を行い、生活に帰す」という役割があると考えられます。
スムーズに退院することが出来ない場合は「退院支援」を行うことに対し加算として評価されてきました。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

退院困難な要因では、「緊急入院であること」「ADLの低下」や「生活様式の変更」などが大きな要因となっています。そこで、入院早期から関わることで、スムーズな支援を検討することが出来ると考えられてきました。

しかし、在宅の生活を知っている「介護支援専門員」や「外来・かかりつけ医」の入院前からのかかわり・・・つまり入院前の環境を知っている方のかかわりが非常に重要になるということがアンケート結果からわかってきました。

地域連携診療計画など、回復期リハビリテーション病棟での取り組みが有効であることがわかってきています。

退院に際しての「共同指導」については、退院後の在宅医・訪問看護師との限定した連携になっていますが、介護支援専門員が退院時の医療機関との連携について時間調整などが難しいことなど課題が挙げられています。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

退院支援に関する課題としては
① 医療機関は、「診療所」や「居宅介護支援事業所」との連携が多い。
② 訪問看護ステーションへの情報提供
③ 退院先への栄養管理等の情報提供が少ないこと
があげられると思う。

その情報提供をどのように行うのか、評価していくのかということが課題の一つになっているように思います。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

栄養管理の情報提供については、
管理栄養士が栄養管理に関する情報文書を作成している例は少なく、摂食嚥下機能低下、経管栄養、低栄養等の 患者に関するものが多いのが現状です。

退院時の栄養管理の情報提供の例として、次のような提案が行われています。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

退院時の療養上の情報提供としては次のように整理されています。
他には介護事業所への情報提供や障害福祉サービス事業所への情報提供など、どのような連携をしていくのかという課題が残っていると思います。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

障害サービス事業所への情報提供としては次のような支援に対するものが考えられます。
参考までにご覧ください。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

介護支援専門員(ケアマネージャ)との連携については、現在は以下の評価がついています。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

さて、最後に小児についての退院支援です。周産期医療の発達により、重症者の小児が増加しています。この小児やその家族については支援大使絵を含む療養環境が非常に重要で、退院後の療養生活の支援やサービスの調整を行うことが求められています。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

小児の退院支援については、早期からの退院支援に加え、医療機関を含め関係機関との連携が必要になってきます。障害福祉サービスとの連携を推進するため、相談支援専門員の評価や地域で支援を受けながら生活していくことが必要となり、多くの関係機関との調整が必要となってきます。退院支援加算の対象、算定要件等について評価することも必要ではないかと思われます。

 

【データ提出加算】
データ提出加算については、慢性期及び一般病棟の13対1、15対1についてもデータ提出加算の提出を求めていく方向性が出されてきています。回復期リハビリテーション病棟、療養病棟20対1については要件化することも検討されています。

提出するデータの内容については、項目の合理化や見直しなどを入れていく方向の要です。

 

【入院患者に対する褥瘡対策】
褥瘡対策については、入院患者のうち持ち込みの褥瘡が多いこと、入院中の発生については医療機器関係による損傷が原因であることが指摘されています。

ADL維持向上等体制加算における褥瘡のアウトカム評価として院内褥瘡発生率1.5%と出されています。

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出典:中医協資料「入院医療(その8)」より

 

療養病棟については、褥瘡対策として、褥瘡評価実施加算(15点)が設定されていますが、入院時の評価とは別の評価表で行われていることなどから、見直しを必要ではないかと考えられています。

入院中の新たな褥瘡発生の予防、療養病床における褥瘡対策については入院時からの対策がより推進されるよう、アウトカム評価の導入などが検討されています。

 

【参考資料】
入院医療(その8)

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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