【平成30年度診療報酬・介護報酬改定】入退院支援の変更点

長 幸美

アドバイザリー

<参考>【速報】平成30年度診療報酬改定資料 告示出ました!

今回の改定で、大きく変わってきていることの一つに、「入退院支援」と「在宅復帰」があります。病院は治療をするところで、「家に帰る」ことをどう支援していくのか・・・入院医療の実績評価として考えられています。

 

始めに入院料の変更点を見ておきましょう。図1

出典:20180207 中医協資料「個別改定項目について 参考資料」より

〇急性期医療・・・看護配置は10対1をベースに、

実績評価として「重症度」等の加算 7段階評価

〇急性期医療~長期療養・・・13対1をベースとした特定入院料(回復期リハ・地域包括ケア)と

 一般病床から地域一般入院基本料

                            実績評価として地域連携、重症等の評価があります。

〇長期療養・・・療養病床20対1がベースに、

       実績評価として、医療区分2,3の割合、在宅復帰率、看取り、データ提出など

       より重度な患者さんの受入れ等で評価見直し

全般的には、実績評価の部分はその医療機能において必要な診療を実施していますか?というような視点で見直しをされると、より整理できるのではないでしょうか?

図2

出典:20180207 中医協資料「個別改定項目について 参考資料」より

在宅復帰についても整理され、機能ごとにカウントができる病棟等が見直されています。本来の病棟の役割を考えていくと、致し方ないかなというところが多いと思いますが、7対1を維持するために自院の中で完結するように病床編成を変えてきている医療機関さまは、非常に苦しい状況になりますね。今回のお話とは少し違いますが、「そもそもどういうことを求められているか」、「地域の中での役割は何か」ということをよく考えていく必要があります。

図3

出典:中医協資料「答申」参考資料より(20180207)

さて、今回のお話に戻しましょう。今回のお話は「入退院の支援」についてです。

医療機関は、「治療の場であり、生活の場」ではありません。したがって、治療が終われば「自宅や地域に帰る」ことが必要となります。しかしながら、高齢者や障害を負ってしまう方にとって、自宅での生活が困難な状況になることも十分に考えられます。そのために必要な支援をすることを目的とした病床区分が「回復期リハビリ」、「地域包括ケア」、「療養病床」であり、「老健」ということになります。その特徴を充分に理解して、医療資源を使うことが、「社会福祉士」や「退院支援看護師」に求められています。

 

入退院支援の推進 

住み慣れた地域で継続して生活できるよう、患者の状態に応じた支援体制や地域との連携、外来部門と入院部門(病棟)との連携等を推進する観点から、「退院支援加算」の評価を見直し、より入院早期から入院加療のイメージを持ち、退院後の生活に向けてどのように対応をするのかを考え、対応することに対し、評価が創設されました。

 

予定入院の場合は、外来において入院中に行われる治療の説明、入院生活に関するオリエンテーション、持参薬の確認、褥瘡・栄養スクリーニング等を実施し、支援を行った場合の評価を新設されています。

 

【新設】 入院時支援加算       200点(退院時1

<算定対象>

(1) 自宅等(他の保険医療機関から転院する患者以外)から入院する予定入院患者であること

(2) 入退院支援加算を算定する患者であること

 

◆退院困難な要因

ア 悪性腫瘍、認知症又は誤嚥性肺炎等の急性呼吸器感染症のいずれかであること

イ 緊急入院であること

ウ 要介護認定が未申請であること

虐待を受けている又はその疑いがあること

医療保険未加入者又は生活困窮者であること

カ 入院前に比べADLが低下し、退院後の生活様式の再編が必要であること(必要と推測されること)

キ 排泄に介助を要すること

ク 同居者の有無に関わらず、必要な介護又は養育を十分に提供できる状況にないこと

ケ 退院後に医療処置(胃瘻等の経管栄養法を含む)が必要なこと

コ 入退院を繰り返していること

サ その他患者の状況から判断してア~コまでに準ずると認められる場合

 

<施設基準>

(1) 入退院支援加算の届出を行っている保険医療機関であること。

(2) 入退院支援加算1、2又は3の施設基準で求める人員に加え、入院前支援を行う担当者を病床規模に応じた必要数、入退院支援部門に配置すること。

(3) 地域連携を行うにつき十分な体制が整備されていること。

 

◆過去の実績等

過去1年間の介護支援等連携指導料の算定回数が、「イ 一般病棟入院基本料等の場合」の算定対象病床数(介護支援等連携指導料を算定できるものに限る。ただし、区分番号「A307」小児入院医療管理を算定する病床を除く)に 0.15を乗じた数と「イ 一般病棟入院基本料等の場合」の算定対象病床数(区分番号「A307」小児入院医療管理料を算定する病床に限る)に○を乗じた数と「ロ 療養病棟入院基本料等の場合」の算定対象病床数(介護支援等連携指導料を算定できるものに限る)に 0.1を乗じた数の合計を上回ること。

 

<留意事項>

入院の予定が決まった患者に対し、入院中の治療や入院生活に係る計画に備え、入院前に以下の内容を含

む支援を行い、入院中の看護や栄養管理等に係る療養支援の計画を立て、患者及び関係者と共有すること。

   ① 身体的・社会的・精神的背景を含めた患者情報の把握

   ② 褥瘡に関する危険因子の評価

   ③ 栄養状態の評価

   ④ 持参薬の確認

   ⑤ 入院中に行われる治療・検査の説明

   ⑥ 入院生活の説明

   ⑦ 退院困難な要因の有無の評価

 

地域連携診療計画加算(入退院支援加算の注加算) 

<算定要件>

当該保険医療機関において入退院支援加算の届出を行っている病棟に入院している患者について、退院時又は転院時に当該他の保険医療機関又は介護サービス事業者等に当該患者に係る診療情報を文書により提供した場合

<施設基準>

入退院支援加算に係る施設基準の届出を行っている保険医療機関であること。

 

【新設】 小児加算    200点(退院時1回) 

入退院支援加算1の施設基準の一つである介護支援等連携指導料の算定件数の要件を、小児を専門とする医療機関や病棟の場合は緩和する。また、入退院支援加算1、2に小児加算を新設する。

<算定対象>

入退院支援加算1又は入退院支援加算2を算定する15 歳未満の患者

 

地域連携診療計画加算(入退院支援加算の注加算)

地域連携パスを活用した入院~在宅の支援に対し、計画の策定が退院支援加算1の算定している病院のみ認められていましたが、今後は入退院支援加算と整理されたことにより、「入退院支援加算」を届出している病棟に拡大されました。

 <算定要件>

当該保険医療機関において入退院支援加算の届出を行っている病棟に入院している患者について、退院時又は転院時に当該他の保険医療機関又は介護サービス事業者等に当該患者に係る診療情報を文書により提供した場合

<施設基準>

  入退院支援加算に係る施設基準の届出を行っている保険医療機関であること

 

今回の改定で、「地域包括ケア」を推進するための支援について考え方が変わり、介護報酬の改定でも評価が様々についてきています。

 

たとえば、「訪問看護ステーション」については、入院時に際し「訪問看護での状況を入院する医療機関に伝えるために情報を提供する」ことにより、報酬がついています。

その要になるのは、ケアマネージャであり、「かかりつけ医」となります。

かかりつけ機能の状況についてはまた別の機会に説明したいと思います。

 

 

<参考資料>

〇中央社会保険医療協議会 総会(第388回) 議事次第 (平成30年1月31日)

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192796.html

 

〇第158回社会保障審議会介護給付費分科会資料 (平成30年1月26日)

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192309.html

 

 

経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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