【医療介護あれこれ】人生会議について

長 幸美

アドバイザリー

平成も終わりを迎え、新たな「令和」の時代が始まりました。10日間の連休も終わり、ようやくいつものリズムが戻ってきた・・・というところでしょうか。

そんな中、たんぽぽ先生こと永井康徳先生のセミナーが北九州市で開かれ、同僚とともに行ってきました。今回はセミナーを通して「自宅で看取る」ということ考えていきたいと思います。

在宅医療を志している方はご存知だと思いますが、昨年の医療・介護同時改定は、「地域医療構想を後押しする改定」であると位置づけられています。

コラム1

(出典:「平成31年3月在宅医療・介護連携における診療報酬と介護報酬」より)

つまり、どういうことかというと、「地域の医療機能をそれぞれの強みを生かして、手を携えて地域で生きる人々の生活を支えていきましょう」・・・ということです。まだ、少し抽象的ですね。
住民が長くその地域の中で住み続けるために作ろうとしている仕組み・・・そのためには医療のバックアップが不可欠だと考えられています。

キーワードは「最期まで自分らしく」

人は生まれたときから、みな平等に「死」は与えられています。
いつかは必ず死ぬ・・・言い換えると、生まれたときから、「死」に向かって時を歩み続けているとも言えます。その限られた「生きる」時間を、どのように過ごしていくのか、どこで過ごすのか、だれと過ごすのか・・・ということがとても大事になってきます。
国民がどこで最期を迎えたいと思っているのか?
厚労省が行ったアンケート調査の結果では、家族に迷惑・手間をかけないのであれば、自宅で最期の時を過ごしたいと思っている方が多い、との結果が出ていました。

昭和初期のころは、出産も看取りも自宅が多かったと聞いています。人の生活の中で、人は生まれ、亡くなっていった時代です。「生」「老」「病」「死」すべて生活の中にありました。
1970年代半ばすぎに、看取りの場は、病院に移行してきました。私は核家族でしたから、祖父母は離れて暮らし、時代の流れと同じく、病院で亡くなりました。自分の親はどうしたらいいか、私の最期はどこで迎えようか・・・まだまだ先のことだと思っていますが、考えていく必要があるかもしれません。

これから「団塊の世代」が75歳を迎える2025年に向けて、これまでにない高齢化と多死社会になるといわれています。今、少しずつ、病院以外の場で、出産をする方も増え、看取りの時間を過ごす方も増えてきています。
私の両親も80台半ばを迎え、少しずつ弱ってきました。どのように支えていくのか、他人ごとではありません。

いま、全国各地で、「看取り」をテーマとしたセミナーや検討会、勉強会が開催されています。その中で「最期の時まで自分らしく生きる」ことに寄り添い支えていく仕組みが、ACPつまり「アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning :ACP)」・・・「人生会議」です。
昨年の改定で、介護事業所も病院も、このACPを実施することが推奨され、算定の施設基準の中に組み込まれてきています。仕組みとして考え始めた医療機関・介護事業所にとっては、とてもハードルが高いものとなっていますが、実際には、スタッフやケアマネージャ、相談員の方々は自然に行っていることではないでしょうか?

たんぽぽ先生は、このことを
「その方がどう生きてきたのか、本人の気持ちに思いを馳せてみることがとても大事、そうすることで、一緒に考えていくことで在宅医療は可能になる」
「気持ちは揺れてあたりまえ」
「一度決めたら終わりなのではなく、何度も何度も選択をやり直していい、それを医療者は支えるだけ・・・」
と表現されていました。

今はこう考えている」ということが大事なのだということでしょう。そう考えるとそんなに難しいことではなさそうだな・・・と、思いました。日常的に、家庭の中や生活の中、仕事の中では行っていることですよね。
施設基準の中で「本人、家族を含め、介護に携わる方々が集まり、相談して決めること、考えに変わりがないか確認し、その都度話し合い記録を取ること・・・」などと決められているから、なんだかとても難しい、大変なことと感じますが、本来の姿に立ち戻り、話をしたメンバーと内容を記録していけば、その仕組みがあればよいということと考えると、少し気が休まりませんか?

「楽なように、やりたいように、後悔しないように」

すべてを受け入れ、寄り添い最後までより良く生きること、簡単なようでとても難しいことかもしれません。その人の生き方に向き合うことは、「この人ならどう考えるんだろう」ということを生き様や価値観を思い起こし、その人にとって何が一番大切か、考えていくこと。これが寄り添っていくことだと思いました。

それと同時に、生活全般に言えることで、このような考え方ができると、社会ももっと生き心地が良くなるのではないか、地域の連携にもつながっていくこと・・・と感じました。

最後に、たんぽぽ先生が書かれた「看取り」の説明をするときの冊子をご紹介します。

コラム2

〇「家で看取るということ」  医療法人ゆうの森 監修
お問い合わせは:たんぽぽ企画株式会社 089-953-1163
http://www.drtampopo.jp

 

<参考資料>

〇関東甲信越厚生局「在宅医療・介護連携における診療報酬と介護報酬
(オリジナル資料集)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/houkatsu/originalshiryoushu.html

 

〇第1回人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会資料
「アドバンス・ケア・プランニング、いのちの終わりについて話し合いを始める」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000173561.pdf

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

制作者の直近の記事

コラム一覧に戻る
お問い合わせ

PAGE TOP