【医療介護あれこれ】医療介護のこれから

長 幸美

アドバイザリー

先日、北九州市医師会主催の、「医療・介護従事者研修会」に参加し、厚生労働省老健局老人保健課長 真鍋馨先生のお話を拝聴いたしました。
テーマは「地域包括ケアと医療・介護連携」で、2040年に向けてなにを考えていくのか、方向性を確認する時間となりました。

少子高齢化が加速し、現実問題として介護職の不足が叫ばれています。

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平成28年に初めて中医協の資料の中でこの「人口推移」を見たときにはかなり衝撃を受けました。明治維新後の急激な人口増もさることながら、2000年以降の急激な人口減、この日本の急成長は「団塊の世代」がしっかりと支えてくれたからだと思います。
しかし、この人口推移では、増加したのと同じペース・・・もしかするとそれ以上に加速して人口減少が予測されています。この少ない人数でどのように高齢者や地域を支えていくか・・・これが「地域包括ケア」であり「働き方改革」の大きな目的だと、認識を新たにいたしました。
・・・とはいえ、地域によってはその現状は大きく異なります。

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出典:社会保障制度国民会議資料(H25.4.19 第9回 資料3-3より)

これは社会保障制度国民会議の資料ですが、二次医療圏ごとに人口推計を基に「医療需要のピークアウト」の時期を表しているものです。

地方ではもうすでに医療需要のピークアウトを迎えているところもあり、地域差があることがわかります。2025年には、ほとんどの地域でピークアウトを迎えます。これは人口の増減にも大きく関与していて、2040年問題は「人口問題」であることも見て取れると思います。
「2040年問題は大都市の問題だ」といわれる所以がここにあるのではないかと思います。

さて、これらを念頭に置きながら、「地域医療構想」「地域包括ケア」を見ていきましょう。
このコラムの中でも幾度も取り上げてきましたが、そもそも、「地域包括ケアシステム」とはどのようなモノでしょうか?

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(出典:厚労省 地域包括ケアシステムより)

平成25年8月6日に取りまとめられた「社会保障制度改革国民会議報告書」の中で「地域で暮らしていくために必要な様々な生活支援サービスや住まいが、家族介護者を支援しつつ、本人の移行と生活実態に合わせて切れ目なく継続的に提供されることも必要であり、地域ごとの医療・介護・予防・生活支援・住まいの継続的で包括的なネットワーク、すなわち地域包括ケアシステム作りを推進していくことも求められている」とされています。
これは、お困りごとが移動30分程度で解決できるしくみづくりとも読み替えることができ、これは、「まちづくり」そのもので、大きなリーダーシップが必要になってきます。

また、この報告書の中には、「地域包括ケアシステムは、介護保険制度の枠内では完結しない」ということも書かれており、「訪問診療、訪問口腔ケア、訪問看護、訪問リハビリテーション、訪問薬剤指導などの在宅医療が不可欠になり、かかりつけ医の役割が極めて重要になる、と書かれています。

このことを大前提に置きながら、毎年出されている「骨太の方針」を読み解いていくと、来年以降の大きな流れが見えてくるのではないでしょうか?
この中では、公立・公的医療機関の役割は「民間医療機関では担えない機能に重点化すること」2025年において達成すべき医療機能の再編・病床数等の適正化・・・つまりダウンサイジングも含めて検討してほしいということが書かれています。
福岡県内だけを見ても、福岡市と北九州市、その周辺地域では医療を取り巻く情勢は違います。周辺状況をしっかりと見極め、マーケティングに基づいて医療機関や介護事業所の立ち位置をきめていくこと・・・軸足をどこに置くかを考えていく必要があるのではないかと思います。

また、平成30年度の診療報酬・介護報酬の改定の中にも、「働き方改革」のキーワードが入ってきていました。地域の中で、医師の確保対策や「勤務環境改善アドバイザー」を活用した取り組みが進められていますが、地域医療構想の中で医療機能の分化を検討していくうえでも、とても重要になってきます。
医師は「医師の仕事に専念する」、看護師は「看護師の仕事に専念する」・・・
それぞれの専門職が「免許がなくてはできない専門的な業務」に専念できるようにしていくのが、本当の働き方改革ではないかと、ひそかに考えています。
そのために免許を持たない「事務職員」「補助職員」が何をすべきか、考えてみてもよいのではないでしょうか?

この中では「医師の応召義務」についても、具体的な検討も始まっています。
これまでは「断ってはならない」という部分での足かせが大きくのしかかって今したが、これが際限ない長時間労働を求められている・・・とすれば、働き方改革はできないのではないかと思います。個々の医療機関・・・地域の中の医療機能に応じて、役割分担を行うことにより、解決の糸口が見えてくるといいなと思います。
また、このためには、地域の住民の理解も必要になってくるでしょう。
医療機関や介護事業所を上手に活用し、「地域の中で暮らし続ける」こと、「自立した私らしい暮らしをしていくこと」を住民自らが考えていくことが大事だと思っています。

全国的には、わが街健康プロジェクト(倉敷市)、おおた高齢者見守りネットワーク(みまーも)(東京都)、暮らしの保健室、みどり町文庫・・・をはじめとして地域の中での取り組みの輪が少しずつ広がってきています。

1時間強の短い時間ではありましたが、地域の中で、どのような取り組みが必要とされているのか、わが社としても何ができるのか、考える時間となりました。
来春にはまた診療報酬改定が行われます。また、6年に1回は医療計画・介護計画の見直しが行われることになりました。この機会に、来年度の改定に向けて、足元を見直してみられませんか?

<参考資料>
〇社会保障制度改革国民会議報告書概要 平成25年8月6日
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/pdf/houkokusyo_gaiyou.pdf

〇経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太方針2019)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2019/2019_basicpolicies_ja.pdf

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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