【医療介護あれこれ】これからの地域包括ケア時代と時期改定に向けて
長 幸美
アドバイザリー前回のコラムでは、「人材枯渇時代」ともいえる人口減少の話をしました。
「この内容を受けて、時期改定に向けて、想像力を働かせてみましょう!」・・・というのも、人材の確保、育成がキーワードになるのではないかと思うからです。
また、クリニックであっても、「介護がわかりません」「認知症はお断り」という状況では、クリニックの運営が難しい状況になっていきます。このため今回はちょっと早いかもしれませんが、「地域包括ケア時代」に向けて少し考えてみましょう。
さて、第一に皆様の事業所は人材の確保にどのようなことをされているでしょうか?
「いや~、介護人材は募集しても応募する人が少なくてねえ・・・」という声が聞こえてきそうですね。
では、その少ない「人材」、やっと採用した「人材」を「人財」に変える努力はどうなさっていますか?「人」は放っておくと「人在」「人罪」になり兼ねません。この「人財」に変える事業所の取り組みが、これからの医療機関や介護事業所にとっては大事なことになると確信しています。
現在、今までにない「人口減少時代」に突入しています。
「若者の車離れ」が話題になりはじめ、久しいのですが、皆さんどのようにお考えでしょうか?これは、地方から若者がいなくなっていることの証ではないでしょうか?
地方では、鉄道やバスなどインフラが発達しておらず車がないと生活ができません。つまり、若者は、車が必要ではない都会を目指している・・・という証ではないかと危惧しています。福岡市も含め、都会では車は必要ありませんからね。
それでは、地方では、どこから、人材を集めてくるのでしょうか?どのようにして「少ない人材」をつなぎとめていこうとされているのでしょうか?
その一つは、政府が言う「生涯現役」元気なうちには働いてもらう。それともう一つが、いま話題になりつつある、介護人材の「技能実習生」の受入れです。
「一体何歳まで働かせるきなの?」「外国人を雇うなんて」という声が聞こえてきそうですね。
果たして本当にそうでしょうか?・・・どこかで聞いたようなセリフ(!)すこし、見方を変えてみませんか?
もちろん、70歳まで、現役そのままに働ける人は、少ないかもしれません。しかしながら、先駆者の知恵をいただきながら、少しずつ働いてもらうということも考えられるのではないでしょうか?
それから、「外国人を受け入れる」ということは、そんなにたやすいことではありません。8月にフィリピンの送出し機関を視察し、その内容をコラムに記載しましが、習慣や言葉が違う国の子たちを受け入れることに、抵抗があることも、不安があることも十分に承知したうえで、介護人材が本当に確保できていくのか、ということを考える必要があると思います。
もう一度言います。少しだけ、見方を変えてみませんか?
退職された方の働き方を変え、その方の知恵を生かすことができるとしたら、どれだけ大きなメリットがあるでしょうか?
外国人を受け入れてもしっかりとサポートできる事業所であれば、日本の「介護初任者」についても、教育していけるのではないでしょうか?標準化して一定のレベルに早期に到達していけるのではないでしょうか?
そう考えていくと、「安全に、効果的に人材の一人として働いてもらうため」に、我々受入れ側が何を準備し、どのように対処すべきか、お分かりになってくると思います。
「高齢者を働かせなければならない大変な事業所」
「外国人を入れるような大変な介護事業所・医療機関」
・・・なのではなく、
「退職を迎えたとしても、これまで培ってきたことを活かせる事業所」
「外国人を受け入れることができるほど、しっかりとした介護事業所・医療機関」
なのだということです。
私も誕生日を迎え、55歳になりました。そろそろリタイアに向けて後輩に引き継ぎをする時期かもしれません。パソコンや細かな作業にも苦労するようになって、2年に1回、3年に1回の改定作業が少しずつ負担になってくることも考えられます。言葉が同じ「日本人」であっても、一人前のスタッフに育てていくには、苦労もたくさんあります。日々悩みながらOJTで教育をされていると思います。言葉がよくわからない日本語認定N4に合格したばかりの子に業務を教えていくには、「介護業務の標準化」を行い、業務改善しておく必要があります。ニュアンスで仕事をするような、難しいことはできないのですから。
しかしながら、両者には共通点があり、時期改定に向けてポイントを整理していこうとしたときに、不思議と共通点が見えてくるのです。世の中の流れと、前回同時改定の内容、時期改定に向けて課題として残っている事柄、そして、第1フェーズで議論されていた内容を見ていて、大きな波が押し寄せてきているのを感じています。そういった観点をもって、これまでの議論を見直してみましょう。
キーワードは、
「地域包括ケア」「生活支援」「重度者(医療的処置)対応」「医療と介護のすみ分け」「コーディネーター(生活の調整)」そして、「マネジメント」 だと、思っています。
「マネジメント」というと、ケアマネジャーの見直しと思われがちですが、それだけではなく、「介護や医療の提供者のマネジメント」とともに「サービス量のマネジメント」そのもとになるのは、「アセスメント」と「評価」ということになります。その方の「尊厳」をしっかりとみとめ会うことについて考えるためには、その方のこれまでの生き方、考え方、志向さえもしっかりと受け止めていけるだけのアセスメント力が必要になってきます。そのことを意識しながら、時期改定へのキーワードをご覧ください。
「生活支援」「要介護1・2については予防に含めていくこと」などが議論される傍ら、重度者対応や医療的処置が必要な方の受入れ・対応について、地域包括ケアの一環として訪問系を中心に高く評価さていくことと思います。
医療とのすみ分け、介護保険事業の目的が何かということをしっかりと議論され、対応することができない事業所に関しては、ますます厳しくなってくると思います。ぜひ見直しをしましょう! 自事業所の足元を固めていきましょう!
見直しのポイントを記載したいと思います。
【訪問系サービス】
◆訪問介護・・・要介護1・2については支援事業へ移行が検討されている。
⇒自費サービスとの組み合わせを検討・・・身体と生活支援の割合は?
⇒自立支援、重度者対応、共生型サービス、人材確保
◆訪問看護・・・話しやすい雰囲気を心がける(介護職にとっては敷居が高い)
⇒医療保険サービスと介護保険サービスのすみ分け、
⇒看護職員のマネジメント
◆定期巡回・随時対応型訪問介護看護・・・要介護度2.5以上、在宅では必須!
⇒必要に応じた介護量を検討(やりすぎない)・・・アセスメントが重要に!
⇒生活援助は介護保険外サービスの利用など考慮が必要
⇒服薬管理は効果あり、デイサービスの利用が減少することが課題
【通所系サービス】
◆通所介護・・・大規模化、長時間、自立支援と重度化対応がポイントになる
⇒アウトカムの重視、差別化を明確にした営業が重要(通所リハとの併用)
◆認知症対応型通所介護・・・差別化がしやすい、民家改修型
◆通所リハビリ・・・医療(リハビリ)であることを意識すること!
⇒短時間化、
⇒短期集中リハビリと卒業を意識する(リハマネ加算2以上を目指す)
⇒稼働を維持するためには、他との差別化と営業力が重要!
【施設系サービス】
◆短期入所・・・重度化対応と困難事例の受入れ
◆小規模多機能・・・要介護2.5以上、要介護3を目指す
⇒要支援者の割合には注意(1割以内に収めることが大事)
⇒看護小規模多機能は、平均要介護度3.5以上
⇒必要に応じたサービス量の判定が大事(やりすぎない)・・・アセスメント重要!
◆特別養護老人ホーム・・・老朽化・建替えの課題がある施設が多い
⇒重度者対応(要介護3以上)、困難事例を受け入れるケア力・体制
⇒障害者の受入れ(共生サービス)
◆老健・・・介護医療院とのすみ分け、そもそも論に戻り議論すること
⇒中間施設(在宅復帰)と在宅療養支援機能の充実・・・チームでの対応
⇒生活支援の拠点としての役割・・・回転が上がり、営業が難しい
⇒医療と介護の適正値(量)がどうなのか、ということも課題となりそう。
◆介護医療院・・・看取りの施設、医療処置が多い方の生活の場(濃厚な医療)
⇒今までの「療養病棟」と同じ考えではダメ
少ない人員でより医療度の高い患者への対応をどうするのか?
【居宅介護支援】
◆ケアマネジャーを自施設で持つ意義を考える
⇒「公正中立」の言葉に惑わされない・・・本来の公正中立とは?
⇒アセスメントが十分に行われているか?
⇒それまでの生活・考え方が生かされた「尊厳ある自立支援」として十分な
サービス提供になっているか?
すべてのケアプランを見直すくらいのことは必要!
◆ケアマネジャーに求められることは、「一人一人の尊厳ある暮らしを継続するための支援ができているか?」という視点が大事
⇒「医療は敷居が高い」「話がしにくい」と言っている段階で、アウト!
⇒アセスメント力と、マネジメント力・・・コーディネーターの役目
時期改定に向けては、要介護1・2の生活支援をどうしていくのか、がターゲットになりそうです。ますます医療は縮小し、介護保険サービスへの移行が考えられます。その中で、介護サービスのデータベース化については「科学的介護」つまり再現性がある介護サービスの提供に向けてさらに検討が進められていくと思います。AIの活用やICTによる業務改善ができない事業所は取り残されていくかもしれません。
事業所の課題とすれば、ケアマネジャーのスキル差、質の向上をどうするのか、ということが大きな課題となりそうです。
包括報酬型サービス(小規模多機能、定期巡回・随時対応、など)については今後も拡充する方向にあると思います。ケアの目標を共有し、サービスと本人の目標に合わせた調整(チューニング、コーディネート)が必要になってきます。
このような厳しい状況の中で、我々が今できることは、利用者にも職員にも選ばれる施設になること・・・以前の「マグネットホスピタル」の考え方と同じです。このためには、自事業所のサービスに対する考え方(理念)をしっかりと持ち、「サービス提供の方針」「職員にどうなってほしいのか」ということを明確に示していくことにあると思います。
このためには「広報」の役割も大きく、「知ってもらう」ということと同時に周辺のニーズもしっかりとつかんでくることが必要になるでしょう。
「地域連携」「ケアマネ」はじめ、訪問系のサービスを提供する方々の役割も少し広がってきそうですね。
2040年に向けて、いま、考えていくことが必要ですね!
私ども、佐々木総研では、このような将来を見据えた事業展開についてのご相談もお受けしております。お気軽にご相談ください!
<参考資料>
〇平成30年度診療報酬・介護報酬改定
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411.html
〇地域包括ケア研究会 2019年3月
https://www.murc.jp/sp/1509/houkatsu/houkatsu_01/houkatsu_01_1_2.pdf
※概要版もありますので、ご覧ください。
https://www.murc.jp/sp/1509/houkatsu/houkatsu_01.html
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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