【医療介護あれこれ】他科受診について(QAより)

長 幸美

アドバイザリー

先日このような質問がありました。
「DPC対象病院に入院中の患者が受診しました。他科受診についての考え方を確認したいのですが・・・当院では保険診療できないものは入院の病院に保険請求の10割で請求しています。入院中の病院からは、10割で請求するのは厚生局もできないとの見解を示されていると連絡が入りました。どう考えたらいいでしょうか?」

さて、皆さんはこういった場合、どのように対応されるでしょうか?
今回は、他科受診について考えてみましょう。

まず、入院している保険医療機関において入院の原因となった傷病以外の傷病に罹患し他医療機関での診療の必要を認めた際には、転医または対診を求めることが原則となっています。その中でもやむを得ず他医療機関受診となった際には、保険請求上のルールがあります。

診療報酬点数表の入院料の通則において、以下の3パターンに分けてルール化されています。
① 出来高入院料を算定している病棟に入院中の患者の場合
② 特定入院料等の包括病棟に入院する患者の場合、
③ DPC対象病棟に入院する患者の場合

入院している病棟が違うと保険請求のルールが変わってくるため、注意が必要です。
これは病院だけではなく、専門的な医療を提供する診療所において外来診療として医療提供する場合にも算定できるものが変わってきますので、クリニックや外来医療を提供する病院の事務の方も知っておく必要があります。

他科受診が行われる場合の診療報酬は、これら①②③のルールに則って入院費の一部を控除したうえで、他医療機関において診療にかかる費用を「他医療機関で請求する」ということになります。この場合であっても、入院している入院料の包括されている診療にかかる費用は、請求できませんので、この場合の診療報酬については相互の合議に委ねるものとされます。
ただし、「受診した他医療機関で診療報酬を請求しない場合は、入院している医療機関において、当該費用を算定することができる」とされています。
つまり、他医療機関で受診された場合の診療行為については、入院医療機関が算定し、外来診療を提供された医療機関は、入院医療機関との「合議」により入院医療機関に診療にかかる費用を請求するということができるということになります。

さらに、この場合でも、以下の項目については算定できません。
・短期滞在手術等基本料2及び3
・医学管理料・・・診療情報提供料を除く
・在宅医療
・投薬及び注射・・・当該専門的な診療に特有な薬剤を用いた受診日の投薬又は
注射にかかる費用を除き、処方料、処方箋料及び外来化学療法加算を含む)
・リハビリテーション・・・言語療法にかかる疾患別リハビリテーション料は除く

つまり入院している医療機関で診療ができない医療行為については、他医療機関での診療を保険請求上認めるけれども、他の医療機関にお願いをしてみてもらうのだから、その分入院料を減額し、算定できる項目も規定されているという風に考えられます。

お問い合わせのように、厚生局から「10割負担もできない」との指摘があったとのことですが、これは、入院中であるために「患者へ全額負担を求めてはいけない」ということであると考えています。

今回のようにDPC対象病院の場合、包括内容に該当し請求できないものが多くなると思いますし、入院中の病院に遠慮して「内緒で受診」されるケースなど、請求した時点でトラブルになるケースもあるとお聞きします。
診療中に判明した場合は、その時点で入院中の医療機関に連絡を入れ、請求方法を協議することをお勧めします。

<参考資料>
〇診療報酬点数表 「入院料」の通則「入院中の患者の他医療機関への受診」

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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