【医療介護あれこれ】接遇レッスン「身だしなみ」
長 幸美
アドバイザリー皆さんは「身だしなみ」と聞いて、何を考えますか?
髪形を整える? おしゃれをして自分をよく見せる? ばっちりお化粧をする?
「身だしなみ」とは、「おしゃれをすること」でも「自分をよく見せること」でもありません。今日は、接遇を考える中でなぜ「身だしなみ」を考える必要があるか、一緒に考えていきましょう。
「身だしなみ」とは、「身」を「嗜む」ことで、見た目だけでなく、自分自身をその場にふさわしい姿・態度に整えていくことを表します。つまりその場にふさわしい服装、振る舞いを求められていくのです。例えば、仕事のとき、遊びに行くとき、冠婚葬祭など、同じ服装や振る舞いではいけないことはわかりますね。その場にふさわしい服装や態度(振る舞い)でなかったら、相手に不快感を与え、非常識な人という認識を植え付けることになります。
その中で、一つだけ共通していることがあります。それは「清潔感」です。
どのような場面でも、顔を洗い、歯を磨き、髪の毛にくしを入れて整え、清潔な服や靴を身に着けていることは、とても大事なことですね。
このように、「身だしなみ」を整える一番の目的は、人(第三者)に不快感を与えないことです。その場にそぐわない服装や振る舞いは、周りの人を不快にさせます。「常識がない人」と思われてしまうのです。医療機関であれば、そのような診療所や病院には自分の体や大事な家族の体を任せたいとは思わないでしょう。どんなに優秀なお医者さんでも、「大丈夫かな?」という疑念を抱かせることになります。
一方「おしゃれ」は自分のためにするものです。プライベートで楽しむものであり、自分の個性やセンスを人に見てもらうためのものであり、それ自体悪いことではありませんが、仕事上、学校など公的な場であれば、おしゃれは「身だしなみ」の範疇で行うことが求められますし、特に仕事の場合は身だしなみを優先させるべきだと思います。
私が以前経験したことがある事例では、介護職員でネイルをきれいに整え指先から爪の先が数ミリ伸びている職員がありました。看護部長や事務長からの注意も聞かず、爪を切ることを拒否されていましたが、ある時、患者の家族から患者の体に無数にみみずばれがあることを見つけ、受付に訴えてきました。患者は寝たきりで、処置のときに誤って爪で気付つけてしまったとのこと。厳重注意となったことは言うまでもありません。
患者の移動を援助する際にネックレスや指輪で患者にけがをさせてしまった事例もあります。また、体臭を気にした職員が香水をつけ、入院患者さんからクレームになったケースもあります。長い髪をまとめずそのままにして、ケアをしていて、患者さんの顔に当たったり、食事の中に入ったりして、クレームになったケースもあります。
あくまでもおしゃれを求められているのではないということを理解し、その場にふさわしく「身を嗜む」ことを念頭においていただければ、なぜいけないのか、わかることですね。・・・とはいえ、若い女性スタッフが多い職場です。「身だしなみ」を整えたうえで、少しだけ「おしゃれのエッセンス」を取り入れてみるのはいいかもしれません。あくまでも「身だしなみ」の中で考えましょう。
一度、同じ職場の方の「身だしなみ」をお互いに評価して、工夫してみましょう。
次回は「接遇5原則」についてお話をしていきましょう。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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