【令和3年度介護報酬改定】令和3年度介護報酬改定の方向性について④
長 幸美
アドバイザリーさて、COVID-19で皆さん一番苦労されたのは、「介護人財の確保」と「教育」だったのではないでしょうか?
ある地域密着型特養の施設長と話をする機会がありましたが、「医療では当たり前と思っていた感染対策が役に立たない」ということを言われ嘆いておられました。それは、スタンダードプリコーションが守られず、防護衣等の正しい着脱ができないこと、がそもそもだったようです。また、不幸にもCOVID-19の感染が地域で起こった場合に、「地域に住んでいる高齢者をはじめとする住人をどう守っていくか」という観点で、何を行うかという行動計画が十分に話し合われていない状態もあったのではないか、と推測しています。
そういった意味合いでも、自事業所の役割、非常時の事業継続については十分に話し合いすることが必要ではないでしょうか・・・
それはさておき、なぜ冒頭このような話をしたかというと、これから2045年に向けて「急激な人口減少」と「超高齢者社会」を目前にして、役割分担や何を行うか、地域のニーズ等を踏まえ、検討することが必要だという話をしてきました。それはこのような非常時であればなおさらです。利用者も事業者もサービスの選択を迫られてきていると思うのです。
介護事業は「人」であるとよく言われますが、機械が行うことが難しいことがたくさんあります。半面、機械にしてもらうことができることもあると思います。どういった視点で、現在議論されているか、整理していきましょう。
【介護職員の処遇改善】
■介護事業所における人手不足
介護分野の有効求人倍率は依然高く、4倍から5倍の間を行き来しつつ右肩上がりで推移しています。これば多業種と比較しても高くなっています。これは3Kといわれることに加えて、現在は「感染」の恐怖も加わってきているのではないかと思います。
しかし、介護事業所において、退職理由の多くは、「職場の人間関係」「結婚・出産・育児の為」「法人や施設の理念や運営に不満があった」がトップ3となっています。次いで、「キャリアアップの見込みが立たない」ことが挙げられています。
ワークライフバランスや働きながら資格を取り、将来が展望できる事業所か、ということも大きな影響となりそうです。
■給与面
処遇改善と聞いて一番に思いつくのが、他の業種と比べ、給与面が低いことや離職率が高く定着しないことが挙げられています。
処遇改善加算に誘導される形で、手当てされているのが現状ですが、小手先の対応になっていませんか? キャリアアップとともに、改善できるような施策が求められていますし、処遇改善加算等の要件の中にも含まれている理由です。
【介護報酬における人員配置基準】
人口問題が深刻になる中、人員配置基準をどうクリアしていくかということは大きな課題になってきています。現状を今一度整理しておきましょう。
(出典:社保審_介護給付費分科会(20200930)資料より)
働き方改革等により、育児・介護休業法による短時間勤務制度が認められている中、介護報酬上の特例等の整理も必要です。
(出典:社保審_介護給付費分科会(20200930)資料より)
こういったことをベースにしつつ、サテライト型の特養や老健、総合事業との一体的実施等の人員配置についてきちんと整理していく必要があります。人員配置基準については、行政単位ごとにいわゆるローカルルールがあるため、一概に言えないのが現状となっています。ただ、介護や育児との両立支援制度等を活用して、人員配置を確保することが必要です。また、総合事業との兼ね合い等も課題として出てくると思われます。
次期改定で、どのような対策が取られていくのかは、注目が必要だと思います。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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