不思議な印紙税
佐藤 正典
税務・会計2020 年10 月6 日付、毎日新聞経済面に「不思議な印紙税」と題した記事が、掲載されました。
業務では、よくお目にかかる収入印紙ですが、その不思議な税金について今回改めて認識させられたことがありましたので、ご紹介いたします。
印紙税とは、住宅ローンのような契約書や不動産の譲渡契約書、領収書など、印紙税法に定められた20 種類の文書を作成した場合に必要となる税金です。契約や文書の種類、金額によって納税額が異なり、収入印紙を貼付することで国に納税します。
ところが、あくまでも課税対象は、紙の文書のみ、電子契約の登場を想定しておらず時代に合わせた改正も行われなかった結果、メールやオンラインで完結する契約書は課税されない、不思議な税金です。その異色の税金が、銀行に対して預金通帳のデジタル化を後押しする結果となっています。通帳の印刷代に加え、1 口座につき年200 円の印紙税がかかり、数千万の顧客を抱える大手銀行では、印紙税だけで年間数十億円以上に上ります。低金利政策により収益環境が悪化する中では無視できない出費となっているからです。
もう一つの不思議は、同じ紙の通帳でも信用金庫や農業協同組合などが発行する場合は非課税ということです。印紙税は国にとっては貴重な財源ですが、新型コロナウイルス感染症の流行で電子契約の増加が見込まれる中、今後の減収は必至です。かねてより問題が指摘されてきた税であり『現代に即さない面が多い』としながらも、『優先的に抜本改革に取り組む状況にない』として財務省幹部は見直しには後ろ向きの発言をしています。(2020 年10 月6 日付 毎日新聞経済面 参考)
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