【令和3年度介護報酬改定】概要①改定率
長 幸美
アドバイザリー介護報酬改定の改定率が出ましたね。
今年の改定は、コロナ禍のために助成金等に財政投入されマイナス改定ではないか・・・とも言われていましたが、開いてみると、+0.7%のプラス改定となりました。
また、世相を反映した内容となっていますので、簡単に見ていきましょう。
(出典:社会保障審議会介護給付費分科会(R3.1.13)より)
今回の目玉は、なんといっても、感染症や災害への対応力強化でしょう。今回のコロナ対応において、介護事業所のクラスター発生や家族等が濃厚接触者になり、自宅待機を余儀なくされている事業所も多かったと思います。
会社や店舗はお休みすることはできても、地域の中の生活は「お休み」することはできません。この中で、多くの事業所がどのようにサービス提供を継続していくか、ということを悩まれてきたと思います。このため、非常時への対応をしっかりと常日頃から考え、対応できる力をつけてほしいということの表れ(メッセージ)だと思っています。
これは、1事業所だけで解決できるものではありません。
地域の生活の中に根付かせていくことが大事で、その要となるのが、医療機関や介護事業所だと思います。
手洗いや手袋をはじめとするPPE(個人用防護具)の着脱方法など、スタンダードプリコーション(標準予防策)を徹底し、感染や汚染から身を守る考え方がとても大事だということも、医療機関だけではなく、介護事業所でも大事なのだ、ということを考える良いきっかけになっていると思います。
これは「知っている」だけではいけません。どのように日常的に実践していけるか、というところにかかっていると思います。
それと同時に、「自立支援や重度化防止の取り組みの推進」があります。
どういうことかというと「介護保険サービスの基本理念」にある「要介護者が尊厳を持って、自立した生活を営めるようにサービスを給付(第1条)すること」や「国民は、要介護状態となることを予防するための健康保持増進、要介護状態となった場合にも、介護サービスを利用して能力維持向上に努めることを義務付けている(第4条)」の考え方に則り、「予防介護」「重度化予防」の観点を持っていくことが重要であるということです。
そのためには、地域包括支援センターの役割の見直しや、ケアマネジメントに着眼した対応が必要になるのではないか、と考えています。
具体的に言うと、地域包括ケアシステムの要としての役割、地域でのネットワークづくりにおける「多職種共同」の要としての役割、等があります。
入院時等の関わりについて、生活から治療の場への「繋ぎ手」としての役割が大きくなるのではないかと思います。
また、最終的には「人」が重要になってくるのが介護事業だと思います。医療にも言えることですが、これから2045年に向けて、介護を必要とする人は増加する見込みですが、「支え手」としての生産人口は増加しません。出生率からしても減少傾向にあることは明白です。このような少子高齢化の中で、「介護人財の確保」は永遠の課題かもしれませんが、ICTの発達を活用して、「人がすべきことは何か?」ということを問われていると思います。
介護の現場でも、医療の現場でも「これまでこうしてきたから」「今までがこのやり方で問題がなかったから」というだけでは、通用しなくなってきます。
人は、私を含め「過去」にとらわれがちです。これまでの経験から物事を考えていきたい・・・意識していなくても、経験を生かしていこうとします。
人手が多い時代の介護方法では、いずれ破綻してくるのではないかと思います。
事業所の中で、「これは譲れない」「災害があった場合でも、ここはしっかり対応する」ということを一度考えていく必要があるかもしれません。
【参考資料】
〇介護報酬改定の概要(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000718178.pdf
〇第198回社会保障審議会介護給付費分科会資料(20210113)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_15884.html
〇第199回社会保障審議会介護給付分科会資料(20210118)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16033.html
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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