【医療介護あれこれ】他科受診について(QAより)
長 幸美
アドバイザリー皆さん、入院中の患者さまが外来受診された場合がありますか?
ここ数年、保険者からの指摘や薬剤の査定を受けたクリニック様からのお問合せなどもあります。この「入院中の患者が他医療機関への受診」した場合の保険請求上のルールについて、今日は整理していきたいと思います。
入院中の患者が当該入院の原因となった傷病以外の傷病に罹患し、入院している保険医療機関以外での診察の必要が生じた場合は、他の保険医療機関へ転医又は対診をもとめる・・・という原則があります。
「他医療機関受診」や「他科受診」と省略して言う場合があります。
入院している医療機関の主治医の専門外の傷病等の場合などで、比較的よくあることです。
【対診の考え方】
保険診療のルールの中に、「保険医は、診療上必要があると認める場合は、他の保険医療機関の保険医の立会診察を求めることができる」とされています。(昭18.8.23保健保発277)
これを、「対診」といいます。
立ち合い診療(対診)を行った保険医は、基本診療料・・・すなわち「初再診料」「往診料」の算定はできますが、治療にかかる特掲診療料は、主治医の属する医療機関で請求し、対診を行った保険医は重複して請求ができません。従って、共同で診療を行った場合は、診療報酬の分配は相互の合議に委ねられています。
例えば、A医療機関に入院中の患者に対し、専門外等の理由で、他の医療機関(B)の医師に往診を依頼したり、手術をお願いしたりすることがあると思います。
このような場合、(B)医療機関の医師は「初再診料」「往診料」については要件を満たせば算定できますが、医学管理料をはじめ、診療行為(検査や投薬、処置や手術など)については入院中のA医療機関で保険請求を行い、(B)医療機関と相談の上、医師の手技にかかるものを合議の上A医療機関から支払うということになります。
【他医療機関を受診した場合の請求は・・・】
入院中の患者が他医療機関を受診する場合は、入院している病床の性質により請求方法が変わってきます。
■入院している医療機関
他医療機関を受診するばあいは、受診依頼の「診療情報提供書」と一緒に、請求方法を記載した様式を準備し、添付しましょう。
医療機関名はもちろん、「患者に算定する入院料、診療科、受診理由」を記載し、「レセプト請求を行う」か「合議精算方法」を採用するか明確にします。
他医療機関で保険請求を行う場合は、入院医療機関側は、出来高病棟の場合は入院基本料の10%、包括病棟の場合は入院基本料に応じて、10%から40%を控除した額を保険請求することになります。
一方、他医療機関(外来)側の算定はどうなっているかというと、医学管理料及び在宅医療等、入院料に含まれている医療行為については算定ができません。投薬や注射薬も、専門的な診療に特有な薬剤を用いた投薬と注射のみ、算定が可能になります。
【レセプト請求について】
入院している医療機関、外来受診をした医療機関ともにレセプトに記載する内容が決められています。
■他医療機関においてレセプトに記載する事項
①入院医療機関名、及び当該患者の算定する入院料
②受診した理由
③診療科
④他医療機関受診日数:○日
■入院医療機関のレセプトに記載する事項
①他医療機関を受診した理由
②診療科
③他医療機関受診日数:○日
但し、入院医療機関においてポジトロン断層撮影、放射線治療等の入院料10%若しくは但し書きの5%控除を行う場合は、他医療機関のレセプトの控えを添付する必要がありますので、注意してください。
これ以外に、他医療機関においてレセプト請求をしない場合は、入院医療機関において診療報酬を請求し、医療機関間で診療報酬の分配については協議して決めることになっていますので、参考までに記載いたします。
また、DPC算定病院等々に入院中の場合は、他医療機関で実施された診療にかかる費用は入院医療機関で請求し、診療報酬の分配は相互の合議に委ねられています。事前に協議されておくことをお勧めします。
入院中の患者さまはこのようなルールを知らずに外出・外泊をして受診し、返戻や査定等で医療機関側は知るという事例も相変わらず起こっているようです。入院時のオリエンテーションや他医療機関での受診・投薬などを把握して、事前に案内ができるような工夫も必要ではないかと思います。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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