【医療介護あれこれ】資格証明書について(QAより)
長 幸美
アドバイザリー4月異動の時季を迎え、皆さんの医療機関にも「資格証明書」をお持ちになる患者さんがいらっしゃるのではないでしょうか?
今日は弊社に寄せられる質問の中から、「資格証明書」について考えてみたいと思います。
健康保険証を持たずに病院や診療所、歯科診療所等にかかると、医療費の全額が自己負担となりますので、手続きの間など、受診したい場合にお困りになる方もあると思います。
中には、退職後の保険証を返却せずに、「次の保険証をもらうまで、もっているのだから使える・・・」と勘違いして窓口に出されることもあり、返戻になる例もしばしば見受けられるのが現状でしょう。医療機関の窓口の皆さん、この時期特に注意が必要だと思います。
【資格証明書とは?】
いわゆる「健康保険の資格がある」ということを証明するためのものです。
但し、この資格証明書、国保と社保の場合、意味合いが違ってきます。
■国民健康保険場合
保険料の滞納(1年以上)がある場合には、保険証の返納とともに「国民健康保険資格証明書」が交付されます。
この場合、国保の資格はあるけれど、保険証での診療を行うことはできないため、窓口では診療費の全額負担をしてもらうことになります。
窓口では、有効期限を確認したうえで、「特別療養費」として、レセプトとは別に国保連合会へレセプトを提出します。審査後、患者さんは役所の窓口で保険割合に応じて返還を受けることはできますが、滞納している保険料に充てられる仕組みとなっています。
■社会保険の場合
一方社会保険の場合は、入社時の新規申請や再交付、異動に伴い手続き中である場合など、「保険証の手続き申請をしているけれど手元にまだ届いていない」というような状況のときに、本人の申請に基づき発行してもらえるものです。
協会けんぽ、組合、共済、共に公的な証明書として、発行してもらえます。
有効期限は交付日を含めて15日間程度と短期間になることも特徴的です。
手続きを行っていることを証明する意味合いもありますので、保険証が届いた段階で返却する必要があります。
これは公的な証明書ですので、会社独自の書式で発行されるものではありません。
【資格証明書の発行は事業所でできるか?】
本来「資格証明書」の発行は、事業主からの申し出に基づき、協会けんぽであれば年金機構が、組合や共済であれば、その本部が、証明を出すものになります。
従って、事業主が作成した「資格証明書」や「保険証資格取得連絡票」のようなものでは、病院窓口では保険診療を行うことはできません。
弊社にご相談がある事例も、資格証明書により診療を行っていたところ、「番号誤り」や「資格過誤」という理由で返戻があったというご相談が多いです。
この時期は異動が多く手続きに時間がかかる時期ではありますが、窓口では患者さんに説明をして、過誤請求とならないようにしたいものです。
【対応策】
私が病院時代に対策として取り組んでいたことをご紹介します。
① 社保の資格証明書で公的機関(保険者の押印がある)の証明書の場合は保険診療を行う
② 会社が作成した証明の場合
⇒会社に連絡を入れ手続き時期を確認する。
⇒全額をいただくか、保証金をお預かりする。
⇒レセプトは保留とし、保険証を確認して請求を起こす。
③ 保険証が確認できていないものは、月末に連絡を入れ、保険証を持参してもらう
⇒保険証はレセコンの「保険証確認チェック」を活用し、月末までに一覧表を出力し、
月末までに確認する。(電話連絡を入れる)
上記③については、今後オンライン資格確認が定着すると、不要になる作業かもしれませんが、当面は必要な作業ですね。
国民皆保険制度に慣れ、手元に保険証がない状況になり始めて 「保険証」の恩恵を感じることになります。それと同時に、医療機関の皆さんも、この時期、「資格証明書」や「資格喪失後」の受診等が増える時期でもあります。
それぞれの「資格証明書」の意味合いをしっかりと理解し、正しい取扱いをして、返戻等にならないようにしていきましょう。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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