【医療介護あれこれ】接遇レッスン「案内の仕方」

長 幸美

アドバイザリー

医療機関の受付で勤務されていると、様々な場面で「案内する」という機会が多いと思います。今回はそんな場面を想像しながら、一緒に考えていきたいと思います。

そもそも、「案内」とはどういう意味でしょうか?
「案内」とは、道や場所を知らない人をそこに導くこと、とあります。類義語には「説明」「手引き」「誘導」というふうにも書かれています。
つまり、医療機関の中で必要とされる「案内」は、診察室や検査室、等の場所に案内することとともに、広い意味では、機器類の操作(例えば受付機や精算機、等)を始め、受診の手順や検査の手順等を説明することも入ってきますね。

【場所を案内する場合】
初来院の患者さまやお客さまを診察室や応接室等にご案内するとき、どのようにお声掛けされていらっしゃいますか?
ある医療機関は、廊下に5cm幅の色付きのテープを貼り、「グリーンのラインに沿って、処置室に行かれてください」と説明されていました。また別の医療機関は、簡単な院内案内図を案内用に準備され、現在地からの道筋を説明されていました。今は景観を重視して少なくなってきましたが・・・

では、クリニックでは如何でしょうか?
ある診療所にお伺いした時に、検尿コップを渡され、「右手奥のお手洗いで・・・」と案内され、患者さんは患者さんの右手の方に向かおうとされると、「ああそっちじゃない!」と左手の方を指さされました。これは説明者が患者の立場に立っていなかった例だと思います。対面で話をしていますので、逆になりますよね。
相手は初めての場所ですので、手で指し示しながら、若しくは、院内の案内図を見せて説明するというのも、わかりやすい案内のひとつだと思います。

【案内するときの手の動き】
方向を指し示すとき、どうしても指をさしたくなります。しかし、その向きによっては、自分に向けられように見えドキッとするときもありますね。

方角を指し示す場合は、指し示す方の手で、指をそろえて手のひらを上に向けて、示します。
相手の方に対面している場合は、左右の方向が逆になりますので、注意しましょう!

【同行して案内する場合】
これからどこに行くのかを口頭で説明し、「ご案内いたします」「こちらへどうぞ」と添えたうえで、一歩先を行くようにします。何処に行くのか、というのは、たとえば「これから2階の検査室にご案内します」「採血をしますので処置室にご案内します」などです。

基本的には、患者さまに真ん中を通ってもらい、斜め前を歩きますが、高齢者の場合などは真横に付き添い、または手すりに近いところを通ってもらうように誘導しましょう。
車いすの患者さまの場合は、車いすを押してご案内することになると思いますが、その際も、「検査室にご案内します。私が車いすをおしますね」と一言かけましょう。いきなり車いすが動くと、吃驚される場合があります。

【手荷物がある場合】
時々トラブルの話を聞くのが、「荷物をとられた」問題です。看護師さんや事務員さんは良かれと思って、手を差し伸べる場合でも、言葉かけがなければ、「とられた!」「どっかにもっていった」というあらぬ疑いをかけられることになります。
「よろしければお荷物お持ちしましょうか」「検査中はこちらでお預かりしますね」という一言があれば避けられる問題です。

【電話による案内】
電話で医療機関の駐車場や周辺の案内を求められることがあると思います。
まずは、車での移動中の場合は、車を止めてもらい、位置と方向を確認しましょう。信号機の名前などで、正確な場所を把握した後、経路の説明をします。東西南北では方角がはっきりとわからない場合があるので、「右手に海を見ながらまっすぐ」「皿倉山に向かって右に曲がってください」「到津の森を左手に見ながら進んでください」など、目印になるものを示しながら説明するといいでしょう。
車のナビでは、近くに来ると「目的地は右側にあります」「案内を終了します」と漠然とした形で終わる場合があります。最後の曲がり角が分からずにウロウロするケースもありますので、周辺の目印は把握して言葉で説明できるようにされるといいでしょう。

【文書による案内】
お薬の内容・飲み方、検査の日付、前日の準備、入院案内、など、文書による説明をする機会も多いと思います。この内容はまたいつか、「広報」「連携」という意味でもテーマとして取り上げていきたいと思っています。見やすいフォントや図を入れるなど、工夫が必要だと思います。

今日はその説明時のポイントをお伝えしたいと思います。
説明のときには、是非、大事なところにマーカーを引きながら説明してみてください。
忘れてはいけないことはピンクでぐるぐる囲む、等、説明しながら書きこむようにしてみてください。後から患者さんが見直して、その動作と説明が思い返されてより印象に残る結果となります。

【機械の操作案内】
最近増えてきたのが、入口の非接触性体温測定器や自動手指消毒、自動受付機や自動精算機、等です。今後オンライン資格確認等が導入されてくるとその使用方法なども、はじめは職員が教えていく必要が出てくるかもしれません。写真入りの使用方法を掲示して、「職員にお声掛けください」という案内表示をすることにより、少しずつ浸透させていくしかないかもしれません。また、困ったことに、医療機関ごとに仕様が違いますから、職員さんは大変かもしれませんね。
導入時に説明を受ける前に、使ってみる、ということを体験してもらい、それぞれの「ここが困った」というところを共有したうえで、使用方法の案内を作ると、より分かりやすい案内ができるのではないかと思っています。説明を聞かずに使ってみて困ったことは、初めて来院時にどんな行動を起こすのか、ということを知る上でも、とても大事なことが学べると思いますので、是非やってみてくださいね。

今回は、様々な案内の場面を想定しながらお話を進めていきました。
医療機関には様々な「案内」の場面があります。こういった「診療とは関係がない」と思われそうな説明ひとつとっても、「医療機関の評価」につながっていきます。また、その説明をしないことにより、もっと手間がかかる事態に陥る場面を沢山見てきました。
また、医療用語は難しくて、患者さまは「聴きとれない」ことも多いということも皆さんは知っておく必要があります。皆さんにとっては「当たり前」の言葉でも、患者さんにとっては、「当たり前ではない」ということを知りましょう。
忙しい中でそんなに丁寧にできないわ・・・と思われる方もあるでしょうが、ほんのちょっとした工夫でよい印象に変えることができます。皆さんの工夫次第で、ワンランクアップの接遇が実現できますよ!

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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