【医療介護あれこれ】公費医療制度について
長 幸美
アドバイザリー前回、公的医療保険について、お話をしました。
https://www.sasakigp.co.jp/ssk/column/10016159
その時に、保険診療を受けた場合には、一部負担金を支払う義務がある、というお話をしましたね。しかしながら、透析や難病のように、長期的に一定の医療を受ける必要がある場合、または入院や手術などにより、高額な医療を必要とする場合など、一部負担金の支払いが家計の負担になる場合があります。
このような場合に、医療費の全部または一部を国や地方公共団体が負担する、「医療費の助成制度」が準備されています。公費医療制度はこのような医療費助成制度のひとつです。
感染症や精神障害・難病などの患者、生活に困窮しているなどの社会的弱者、公害などにより健康被害を受けた人など、保護を必要とする人が対象になります。
■主な公費助成制度
詳しい公費助成制度については、それぞれの公費について役所で詳しく確認されることをお勧めします。ここでは、大まかに分けて、どのような公費助成制度があるのか、見ておきましょう。
<福祉的給付>
社会的弱者といわれている方々の助成制度です。
・生活保護法 ・・・(医療扶助)
・児童福祉法 ・・・(療育医療、児童福祉施設措置医療)
・母子保健法 ・・・(療育医療)
<戦争への国家補償、健康被害等>
・戦傷病者特別援護法 ・・・(戦傷病者療養給付、戦傷病者更生医療)
・原子爆弾被害者に対する援護に関する法律・・・(原爆認定医療)
・石綿による健康被害の救済に関する法律 ・・・(石綿健康被害救済制度)
<難病・慢性疾患の治療研究と助成>
・難病の患者に対する医療等に関する法律 ・・・(特定疾患治療研究事業)
<公衆衛生の向上>
・感染症法(入院医療) ・・・結核入院医療
・感染症法 ・・・(一類・二類感染症、新感染症)
・心身喪失等の重大な互い行為を行ったものの医療及び観察等に関する法律
・・・(心身喪失)
■公費負担医療制度における医療費負担のパターンは?
公費負担医療制度は、国の法律に基づく公費と、地方自治体の条例に基づく公費(福祉医療費助成制度に分かれています。
① 公費単独 ⇒患者負担なし
一番わかりやすいのは「生活保護」だと思います。ほかには、「原爆認定医療」「感染症(新感染症)」などがあります。
レセプトでは主保険に記載をせず、公費の番号のみで請求を起こします。
② 医療保険+自己負担金分を公費負担 ⇒患者負担なし・あり
これは、公的医療保険(主保険)を使いながら該当する医療行為について、「一部負担金」を助成するものです。
難病や更生医療、自立支援医療、等がどちらの医療機関でも経験があるものではないでしょうか。
レセプトの請求では、右側の欄に主保険を記載し、左側の公費欄に公費の医療証の番号を記載します。
窓口負担があるか・ないか、等は、その都度、確認をされることをお勧めします。
また、これ以外に公費+公費という請求の仕方もあります。
公費の優先順位や一部負担金のある・なしにより、複数の組み合わせでレセプト請求する場合があります。とても複雑な仕組みになっていますので、その都度確認していきましょう!
■公費対象医療と公費対象外医療
公費医療でもう一つ注意が必要なのが、特定疾患等、疾患により医療費の助成が受けられるものについては、治療内容より、公費対象外医療になる場合があるということです。
一番わかりやすい例が、特定疾患の医療証では、感冒に対する治療はほとんどが受けられません。こういった内容については、正しい請求事務を行うために、事務職員の皆さんも「疾患に対する標準的な治療」を知っておく必要があります。
■指定医療機関
多くの公費助成制度は「指定医療機関」の申請を行い、指定を受けていなければ、助成制度を利用できないことが多いものです。この為、診療所の先生の専門や、地域の状況をしっかりと把握しておくことも大事になります。
今回は公費助成制度の概要をお話してきました。詳細な内容までは、ここでは触れることができておりません。管轄する行政の部署等は役所により異なります。
患者さんが不利益を被らないように、医療機関としてもしっかりと把握しておきましょう。
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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