【医療介護あれこれ】身寄りがない方のもしもの時、どうすればいい?!

長 幸美

アドバイザリー

身寄りがない方の入院時等の対応について悩まれるケースはありませんか?
高齢世帯、特に単独世帯・老老世帯が増えてきている昨今、入院時や在宅生活を進めていく中でも、もしもの時どうしたらいいのか・・・という悩みを抱えた方が増えているようにも思います。「終活」などをテレビ等で見ることも増えてきました。
今回は、そのような身寄りがない方の「もしも・・・」のときどんな支援があるのか考えてみましょう。

【身寄りがない方の入院】
身寄りがない方のほかに、家族が遠方に住んでいて連絡が取れない場合などもあるかもしれません。その時にどういった対応をしたらよいでしょうか?
まずはMSWがいらっしゃる場合は相談しましょう。いない場合は、病棟と連携をしながら、必要に応じて対応することが必要になるでしょう。

■身元保証人・身元引受人
「入院申込書」や「入院保証書」などを入院時にいただくと思います。
私が病院にいるころから、「保証人のサイン」については抵抗がある患者さまやご家族様がおられました。皆さんの医療機関では如何でしょうか? 「保証人」と聞くと「債務の肩代わりをする」といった認識を持たれる方があるためだと思いますが、その他に以下の役割もありますので、誰がその役割を果たすのか、話をして決めておく必要があると考えます。
・債務の保証 ・・・入院費等の支払いがない場合
・緊急時の連絡先
・医療行為の同意
・退院時の身柄の引受け
・遺体および遺品の引取り・・・もしもの際に必要になります
つまり、キーパーソンになる方、何かあった場合に連絡が取れるようにしていきましょう。

■「もしも・・・」のときの対応について
身元保証人がいらっしゃる場合は、その方がご遺体や遺品の引き取りや埋葬の手配、遺品の処分を行うことになると思いますが、引き取り手がいない場合については本人も含めて検討し決めておく必要があります。最終的には、自治体が埋葬や遺品の処分を行うことになります。もしご親戚、ご友人等の第三者が、埋葬・遺品以外の死後の事務処理がある場合は、「死後事務委任契約」が必要な場合もあるかもしれません。
ソーシャルワーカーや社会福祉協議会・行政の担当者等を交えて検討しておきましょう。
<亡くなられた後に必要な手続きの主なもの>
・関係者への死亡の連絡
・役所での手続き・・・戸籍関係、火葬許可証の申請・受領、葬儀・火葬に関すること、社会保険・国民健康保険・国民年金保険等の資格喪失手続き
・供養等に関する手続き・・・手続き埋葬・散骨等
・医療機関・介護事業所等・・・病院・施設等の退院・退所手続き・精算
・その他・・・携帯電話、各種サービスの解約・精算、遺品整理、ペット、車両関係預金、住居、生命保険等の手続き、税金関係 /等

こういった行政上、その他もろもろの手続きについて、医療機関が代行することは難しいと思います。事前にどのようなことが起こり得るのか、予測し、関係を含めて、対応を協議しておくことが大事ではないでしょうか?

【身寄りがない人の人生の最終段階の相談】
入院時や介護サービス開始時のアセスメントにて、身寄りがいない場合等は、医療機関の社会福祉士や介護事業所の相談員等に連絡を入れ、また、地域の民生委員、行政のケースワーカー、地域包括支援センター、等と協力して、支援の方法を決めていくことになると思われます。これらは医療機関として積極的にかかわることではないかもしれませんし、専門的なことは専門家に任せていくのが良いと思います。
しかしながら、社会福祉にどのような制度を準備されているか、知っておくことは良いことではないかと思います。

■成年後見人制度
認知症・知的障害・精神障害等の理由で判断能力が不十分な方の場合、不動産や預貯金等の財産を管理したり、身の回りの世話の為に介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をする場合など、わからずに不利益を被らないように支援する制度です。この制度の利用希望があれば、弁護士や司法書士、地域の民生委員、社会福祉協議会等に相談されるのが良いと思います。

■行政独自の支援制度
市町村が地域で暮らしながら「終活」していく支援をしている場合があります。
例えば、福岡市の場合ですと、「安らかパック事業」や「ずーっと安心安らか事業」などがあります。

地域によっては、準備されているものが違うかもしれません。社会福祉協議会や民生委員にどのような支援をしてもらえるのか、相談されることをお勧めします。

私自身も病院時代に何度か身寄りがない方の最期をお見送りしたことがあります。当時は社会福祉士(ソーシャルワーカー)が在籍していなかったため、行政の方や民生委員の方とお話をして、社会福祉協議会や行政のケースワーカーに繋いだケースを数件経験しました。
はじめは入院費の回収の問題からでしたが、遺品やご供養のことまで様々に考える必要があり、これは専門の方にお願いしたほうがいいと思います。

ヒトは「死」に向かって時間を紡いでいます。独居や老々介護が増えている現在、避けては通れない問題になってきています。どうしたらいいかわからない・・・と悩まれている医療機関の事務員さんの参考になれば幸いです。
なお、各自治体に、相談員や相談できる部門等があると思いますので、事前にご確認いただければと思います。

<参考資料>
・「安らかパック事業」「ずーっと安心安らか事業」
http://www.city.fukuoka.lg.jp/data/open/cnt/3/59075/1/03_7syukatsuR1.pdf?20190712172738

医業経営支援課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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