【医業介護あれこれ】第10回医療福祉士連携フォーラムに参加して

長 幸美

アドバイザリー

今回第10回医療福祉連携フォーラムに参加しました。
今回「医療を繋ぐ処方箋」と題して、地域の生活を支えていくために医療機関としてどのようなことを行うのか、ということが問われているように思いました。

連携の歴史は「病診連携や病病連携」といった医療機関同士の連携に始まり、現在では生活を支えていくための医療と福祉・介護の連携が欠かせず、広い視野で地域を見ていくことも必要ですし、何処にどのような医療資源・介護資源があるのかを知ってコーディネートしていくことを求められています。

今回のフォーラムは、そのような広い視野でマネジメントしていくために必要な様々な知恵があり、医療法改正やそれに伴う医療計画に求められている視点など、多岐にわたる話がありました。医療機関の皆様も介護や福祉の関連の皆様も是非知ってほしい内容が満載でした。私が印象に残ったワードをいくつかご紹介します。

【連携には気配りが必要】
連携は患者さんを中心として、「かかりつけ医・薬剤師」と「中核病院」「回復期・地域包括など地域に戻るための医療機能を備えた病院」との連携のトライアングルが機能しなければうまくいかないこと、地域の中で生活をしていくためには医療と福祉(介護を含む)の連携がとても大事で、お互いに相手を知ることも必要だということが各現場の方々からも提言されていました。

現在の医療は、福祉も含めて多様化しており、専門化が進んでいるように思います。しかし、地域の生活の中で、住民が的確にチョイスすることはかなり難しいと思います。そういった中で、包括支援センターの役割や、中核医療機関の連携室の役割は大きくなっているように思います。

お互いの医療機能を認め、協力していくためには、相手に対する気配りは重要です。中核病院ではつい、かかりつけ医の存在を意識せず、後方支援病院へアプローチしてしまいがちですが、それでは患者さんは地域での生活に戻りにくいことも起こるのではないでしょうか?

【地域に必要な医療介護福祉の統合】
過疎化が進む昔ながらの土地柄の中には、「地域で暮らしていく知恵」が詰まっているように思います。医療機関の中では「治療をする」という目的があり、その目的を完遂するために様々なルールがあり、「非日常」を強いられることがあります。
これはこれで致し方がないのではないかと思います。
急性期の医療の中では、治療や看護が標準化され、想定外の事象が起こらないように管理されています。急性期医療の目的は一つ・・・「病気やけがを治す」ことにあります。

しかし、退院後の生活はどうでしょうか?
入院中では考えられないような、想定外の事象が毎日起こります。

病院の中では空調管理されており、感染対策で、虫も動物もNGですが、自宅ではどうでしょうか?ベッドでは犬や猫が一緒に寝起きし、流しでは洗い物がたまり、冷蔵庫の中には、賞味期限の切れているものが入っているかもしれません。
病院で賞味期限切れのものが提供されれば、大騒ぎになるかもしれませんが、家庭の中では、賞味期限が多少切れていても、まだ大丈夫かな?と食べることもありますね。

私の家にも認知症の父がいますが、デイサービス等の介護事業は利用しつつ、本人の思うように自由に暮らしています。いつ寝てもいいし、食事も食べなくても、大きな問題にはならない。しかし、病院に入院するとどうでしょうか?
寝る時間に寝なければ睡眠剤が投与されるかもしれませんし、食事が入らなければ点滴を導入されるかもしれません。

そういう「生活を支える医療の提供」としては、医療提供の在り方が変わっていくかもしれませんし、福祉分野との連携は欠かせないことは容易に想像できるのではないでしょうか?

【2040年に向けて】
キーワードはソーシャルデザイン。今年のオリンピックでも話題になった多様性をどのように容認し、取り入れていくのか、ということだと思います。「ダイバーシティ」ですね。
地域連携の中では、その地域をどのようにデザインしていくか、というところで、各地で取り組みが活発化してきています。

その中で、「自分の病院(医療機関)がそんな役割を担うのか」「何を目指していくのか」ということを、明確にして、地域をマネジメントしていくことが必要だということを、改めて強く感じました。これはクリニックでも、介護事業所でも同じです。このことは、弊社のコラムの中でも、幾度かお伝えしていることですね。
つまり・・・自院ができること、得意なこと、周辺の住民や医療機関、福祉事業所から何を求められているかということ・・・足元をしっかり見る、ということです。
冷静に、しっかり見て、立ち位置を明確にしていくということです。

これは、424公的病院の問題にも当てはまります。
「不要論」ではなく、地域の役割として、あなた方は何をやりますか?ということを問われているということだと思います。

【第8次医療計画に向けて】
骨太の方針でも、昨年から引き続き、「新興感染症(COVID-19)」に対する課題が大きくのしかかってきています。

医療法改正でも、5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)・5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)+在宅医療を5疾病6事業(+新興感染症を加える)+在宅医療に変更することが決められています。この6番目の「新興感染症の予防計画と対策」についてどう対処するかということで、その内容は法改正の中に盛り込まれています。

今年の介護報酬改定でも、BCP作成が法制化され、その中に「感染症対策」が盛り込まれています。平時の医療体制とパンデミックの医療体制が同じでよいわけがありません。パンデミック時の医療体制を地域でどうしますか?・・・ということがこのBCP作成の大きな意味合いだと思います。
とすれば・・・次の改定、遅くとも2024年の介護保険との同時改定のときには、医療機関全体にこのBCP作成が入ってくるのではないでしょうか。

また、外来医療の機能の明確化や連携が来年4月1日に施行される内容に盛り込まれています。地域医療構想の中で、外来医療の機能としても、あなたのクリニックではどんな機能を提供するのか、ということを意識せざるを得ない状況になります。これはなかなか厳しいことだと思います。

【地域連携室の役割の変化】
地域連携室の役割としては、①前方連携(入院調整)、②後方連携(退院調整)、③相談業務となっていると思いますが、その中に、ベッドコントロールの機能が大きく求められています。
連携室は、単に相談窓口や入院調整の窓口ではなく、病床を適正に活用するための手腕が問われているのではないかと感じています。

【コロナ禍で浮き彫りにされたこと】
今回のコロナ禍で、「病院というシステムに頼っていては、非常時に対応しきれない」ということが大きくクローズアップされてきていると思います。
語弊があるかもしれませんが、平時の医療体制と非常時(パンデミック)のときの医療体制が一緒でよいはずはないと思うのです。各種報道ではベッドが足りない、という部分がクローズアップされていますが、それだけの問題でしょうか?
私はそうではないような気がしているのです。

これは、施設基準の考え方にも影響を与えてくるのではないかと思っています。どんな施設設備で、何人専門スタッフがいるか、ということだけではなく、それらの医療専門職がどんな患者にどんな治療を行ったか、どんなサポートを行ったか、ということにシフトしていっているように思います。

【医療機関のスタンス・介護・福祉のスタンス】
これを機会に、是非医療機関の中で、介護事業所の中で、「目的」「どんな医療機関(介護事業所)になりたいか」「どんな医療サービス(介護サービス)を提供していくか」「医療機関で提供しないものは何か」ということを検討してみられてください。
そして、「提供しないものは地域のどこと連携していくか」ということも、重要なキーワードになると思います。是非話をしてみてくださいね。

今回のフォーラムは、参加している中で、次期改定を示唆する内容がいくつか盛り込まれていました。参加された先生方は「地域の中での自院の役割をしっかりと見極める」ということを言われていました。これから2040年に向けてさらに高齢化が進み、今以上に働き手が不足する事態も考えられます。できる対策を早期に取り組んでいく必要があるし、そのためには足元をよく見て、地域の状況をよく見る必要があるなあ、と改めて感じております。

医業コンサル課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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