【医療介護あれこれ】接遇レッスン「自分たちのスティグマについて考える」
長 幸美
アドバイザリー皆さんは「スティグマ」という言葉をお聴きになったことがありますか?
先日ある連携に関連する研修会において、この「スティグマ」をなくすために私たちがどうしたらいいのか、というお話がありました。
さて、私は「スティグマ」という言葉が初めてだったのですが、話を聞いていて、これは、日常的な生活や社会生活の中で、また、医療従事者としてとても大事な、気付きをいただけるお話でしたので、ここで共有していきたいと思います。
■「スティグマ」とは?
語源をひも解いていくと、ギリシャ語で、「奴隷や犯罪者等につけられる烙印」という意味合いがあるそうです。スティグマとは、「ある特性が恥ずべき特性だという事をもとに、個人が社会の一員として受けるべき尊敬が否定され、その社会から受け入れない状態のことをという。(Wikipediaより)」とあります。それには、「身体的変形」「精神異常や同性愛、犯罪歴」「民族や宗教」などがもとで、偏見や差別を引き起こす言動になる、ということと説明されています。
最近で言うと、「コロナ感染患者やその家族」「コロナ対応を行う病院職員などへの差別的行為・言動」なども含まれていくのではないかと思います。
つまり、ある種の「レッテル」を貼る、「いやな印象・負の感情を植え込む」ということだと思います。
■過剰反応もその一つ
昨年、はじめての緊急事態宣言下で、ネットやメディアでも医療機関に勤務している方の子供のいじめなど、大きく取り上げられていました。
私の周りでも、保育園に通えなくなり、仕事を辞めざるを得ない方、準夜勤務が明けて帰ろうにもタクシーから乗車拒否を受け1時間以上をかけて歩いて帰った方、マンションのドアにいたずら書きをされた方、こういったことが原因で登校できなくなった方etc・・・子供やその親御さんの中には、深く傷つきトラウマになってしまった方もいらっしゃいます。
■医療機関や介護事業所では?
日常的な会話の中にもスティグマは潜んでいます。皆さんの職場ではどうでしょうか?
「何回言ったらわかるの?」「あの子は仕事が遅いから」「あ~あ、またやっちゃった」
「また忘れたの?」「どうせ薬もちゃんと飲んでいないでしょ」「これは贅沢病だから・・・」
患者さんや同じ職場の方に、こんな言い方していませんか?
些細なことかもしれませんが、この些細なことで、心が折れ、再び傷つけられる可能性もあるのです。
■人はリカバリーすることができる!
人はダメージを受けても、リカバリーするチカラがあると思います。
それは家庭や友人、恋人などが支援者になることもあると思います。仕事や趣味に没頭すること安定させることができる場合もあるでしょう。
医療機関の職員として、相手に対する否定的な認識をなくし、安心できる場を作っていくことが必要だと感じました。「辛いこと」や「悲しいこと」に寄り添い共有していくことも大事です。その人を責めるラベリングを減らすこと、トラウマ反応を理解することも必要だなと思いました。
この研修会の最後にスティグマを少なくするためにどうしたらいいかというお話がありましたが、小さなグループの中で気付きを共有し、言葉の変換(リフレクション・言い換え)などを通して、考え方の転換を促していくことも大事だというお話をされました。
■無知の知を自覚する。
「スティグマ」についてはある種特定のことではなく日常的に起こりうる、ということを意識しないといけないと思いました。差別や偏見は負のイメージを負った人への根拠のない認識からおこっているという言葉が心に残りました。マイナスイメージを持ってしまうと、周りに連鎖し、生き辛い感情が起こります。こういった感情は些細な一言の積み重ねかもしれないと思うと、「無知の知」・・・相手のことを知らない、ということを自覚することが必要だと感じました。
これは地域包括ケアや連携の中ではとても大事で、相手に対し、「自分の価値観や考えの中で人に対応する」ということがとても危険なことだということを改めて感じました。
私は「スティグマ」になっていないだろうか、と振り返った研修会でした。
皆さんはどのようにお感じになりましたか?
医業コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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