【医療介護あれこれ】医療事務基礎講座「自費徴収のルール(その2)」

長 幸美

アドバイザリー

さて、今回は前回に引き続き、「自費徴収のルール」についてみていきたいと思います。
1回目は、「掲示要件」と「自費徴収の手続き」についてみてきました。
今回は、具体的に「自費徴収できるもの」と「自費徴収できないもの」の例示がありますので、それを見ていきたいと思います。

■実費徴収可能な範囲
「療養の給付と直接関係ないサービス等」として、実費徴収が認められているものが列記されています。

日常生活上のサービスにかかる費用 (抜粋)
・おむつ代、尿とりパット代、腹帯代、T 字帯代
・病衣貸与代(手術、検査等を行う場合の病衣貸与を除く。
・テレビ代、ゲーム機、パソコン(インターネットの利用等)の貸出し、等
・理髪代、クリーニング代      /等

公的保険給付とは関係のない文書の発行に係る費用
・証明書代(職場復帰等に関する意見書、生命保険等に必要な診断書、 等
・診療録の開示手数料(閲覧、写しの交付等に係る手数料)
・外国人患者が自国の保険請求等に必要な診断書等の翻訳料 等

診療報酬点数表上実費徴収が可能なものとして明記されている費用
・在宅医療に係る交通費
・薬剤の容器代(ただし、原則として保険医療機関等から患者へ貸与するものとする。) 等

④ 医療行為ではあるが治療中の疾病又は負傷に対するものではないものに係る費用
インフルエンザ等の予防接種、感染症の予防に適応を持つ医薬品の投与
・美容形成(しみとり等)
・禁煙補助剤の処方(ニコチン依存症管理料の算定対象となるニコチン依存症(以下「ニコチン依存症」という。)以外の疾病について保険診療により治療中の患者に対し、スクリーニングテストを実施し、ニコチン依存症と診断されなかった場合であって、禁煙補助剤を処方する場合に限る。)
・治療中の疾病又は負傷に対する医療行為とは別に実施する検診(治療の実施上必要と判断し検査等を行う場合を除く。)

⑤ その他
保険薬局における患家等への調剤した医薬品の持参料及び郵送代
保険医療機関における患家等への処方箋及び薬剤の郵送代
・日本語を理解できない患者に対する通訳料
他院より借りたフィルムの返却時の郵送代
・院内併設プールで行うマタニティースイミングに係る費用
患者都合による検査のキャンセルに伴い使用することのできなくなった当該検査に使用する薬剤等の費用(現に生じた物品等に係る損害の範囲内に限る。なお、検査の予約等に当たり、患者都合によるキャンセルの場合には費用徴収がある旨を事前に説明し、同意を得ること。)
・ 院内託児所・託児サービス等の利用料
・手術後のがん患者等に対する美容・整容の実施・講習等
・有床義歯等の名入れ(刻印・プレートの挿入等)
・画像・動画情報の提供に係る費用(区分番号「B010」診療情報提供料(Ⅱ)を算定するべき場合を除く。)
公的な手続き等の代行に係る費用

■実費徴収できないもの
「療養の給付と直接関係ないサービスとはいえないもの」に関しては、実費徴収できないとされています。その例示が以下のように記載されています。
① 手技料等に包括されている材料やサービスに係る費用
(ア) 入院環境等に係るもの
(例)シーツ代、冷暖房代、電気代(ヘッドホンステレオ等を使用した際の充電に係るもの等)、清拭用タオル代、おむつの処理費用、
電気アンカ・電気毛布の使用料、在宅療養者の電話診療、医療相談、血液検査など検査結果の印刷費用代 等

(イ) 材料に係るもの
(例)衛生材料代(ガーゼ代、絆創膏代等)、おむつ交換や吸引などの処置時に使用する手袋代、
手術に通常使用する材料代(縫合糸代等)、ウロバッグ代
皮膚過敏症に対するカブレ防止テープの提供、骨折や捻挫などの際に使用するサポーターや三角巾、
医療機関が提供する在宅医療で使用する衛生材料等、医師の指示によるスポイト代、
散剤のカプセル充填のカプセル代、一包化した場合の分包紙代及びユニパック代 等

(ウ) サービスに係るもの
(例)手術前の剃毛代、
医療法等において設置が義務付けられている相談窓口での相談、
車椅子用座布団等の消毒洗浄費用、インターネット等より取得した診療情報の提供、
食事時のとろみ剤やフレーバーの費用 等

診療報酬の算定上、回数制限のある検査等を規定回数以上に行った場合の費用(費用を徴収できるものとして、別に厚生労働大臣の定めるものを除く。)

③ 新薬、新医療機器、先進医療等に係る費用 ⇒別に規定あり
(ア) 薬事法上の承認前の医薬品・医療機器(治験に係るものを除く。)
(イ) 適応外使用の医薬品(評価療養を除く。)
(ウ) 保険適用となっていない治療方法(先進医療を除く。) 等

これら、②③に関しては、規定があり保険診療を行いながら請求できる範囲が定められています。(選定療養、評価療養)

■預託金や貸し出しするときの預り金について
これまで、「実費で徴収可能なもの」「実費徴収できないもの」等のルールを見てきましたが、「保険給付(保険診療)」と「保険外負担」について重複した請求が行われないように十分注意する必要があります。
例としては、「健康診断」後の受診での診療において、「初診料ではなく再診料の算定になる」ことや、「健康診断による内視鏡検査等で、病理組織検査等が必要になった時に、診察料を保険請求しない」、というものなどがあります。

また、医療機関の備品(車いすや松葉づえなど)の貸与のときに事前にお預かりする金銭や入院時の保証金の取り扱いについては、内容・金額・清算方法を明示し、説明と同意が必要になります。

■まとめ
2回に分けて自費徴収のルールについてみてきました。皆さんの医療機関ではどのようにされていますか?
まずは、「掲示内容を確認する」ことと「説明・同意書を準備」する必要がありますので、ご確認をお願いいたします。
在宅医療等での衛生材料等については、必要最小限のものは医療機関から支給する必要もありますので、どれだけ必要か、という「物品と量」は把握されておく必要がありますが、それ以上に求められる場合は、ドラッグストア等での購入をお勧めしてよいと思います。
参考にしていただけると幸いです。

医業コンサル課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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