【令和4年度診療報酬改定】「外来機能」の5つのポイント
長 幸美
アドバイザリー今回は外来機能の改定について、気になる5つのポイントを見ていきたいと思います。
まだ改定の全貌が明らかになってきているわけではありませんが、全体の考え方を整理しておきましょう。
【ポイント1:かかりつけ機能】
かかりつけ医とは、「なんでも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療・保険・福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義されています。
では「かかりつけ機能」とは何でしょうか?
日本医師会では、日常診療だけではなく、診療以外の場でも「地域住民との信頼関係を構築し、健康相談、健診・がん検診、母子保健、学校保健、産業保健、地域保健等の地域における医療を取り巻く社会的活動、行政活動に積極的に参加するとともに保健・介護・福祉関係者との連携を行う。また、地域の高齢者が少しでも長く地域で生活できるよう在宅医療を推進する。」と定義されています。なおかつ、「患者や家族に対して、医療に関する適切かつわかりやすい情報の提供を行う。」と書かれています。
さて、このかかりつけ医の評価として「機能強化加算」がありますが、これに在宅医療等のかかりつけ機能の実績が必要になってきました。つまり「なんちゃってかかりつけ医」にはご遠慮いただきたい、しっかりと地域を支えてほしい」ということですね。
また、地域包括診療料・加算の対象疾患に「慢性心不全」が加えられることになりましたので、加算算定の幅が広がってくることになりますね。
【ポイント2:質の高い在宅医療】
在宅で心配になることは何でしょうか?
今回のコロナ禍で通いのサービスや訪問のサービスを利用されている方の近親者や一緒に利用している方から、コロナ陽性の方が出たとき、また、学校がリモートや休校等になり、外出制限になり、働き手にも影響が出る事態となりました。
しかし生活は止めることができませんから、訪問看護に対し、BCPの作成が入ってきました。つまり、災害だけではなく、感染拡大時においてもどのような方法で事業継続・・・訪問看護を提供していくかということを平時から考えていく、ということです。
感染対策についても、初診料・再診料において加算が新設されていますが、小規模な診療所にはハードルが高い内容となっているように思います。どのように対策していくのか、考えていく必要があります。
【ポイント3:医療におけるデジタル化】
今回ICTに対応できない医療機関にとって、とても厳しい状況が予測されます。
ひとつは、オンライン診療が事実上の解禁(30分要件、1割要件の廃止)になるということで、基本的なガイドラインに則って実施する必要はありますが、患者動向が大きく変わっていくことが予測されます。
さらにオンライン資格確認について診療報酬で評価し、後押しをする方向になってきました。考えていかざるを得ないことになりますね。
また、これまでは事業所間のカンファレンスなどにおいてはリモートでの対応が認められていましたが、患者や家族への説明に関しても認めていく方向が出てきました。
その他には、診療所についても「データ提出」に対し加算が新設されていますし、施設基準についても、「実績」を求められています。事務職員の統計力や集計をはじめとした事務能力、マネジメント力が求められてきています。
これは診療の「効率化」が求められているわけです。
パソコンは苦手だからと避けて通るわけにはいかなくなってきたなと感じています。
【ポイント4:連携による支える医療の推進】
地域包括ケアシステムを推進するための取り組みについて、評価が広がってきています。
病診連携は当たり前、「医療と介護(医介連携)」は少しずつ進んできました。これらに加えて、「医科歯科連携」「薬薬連携」をはじめとする、「多職種による連携」がとても重要になってきます。
これは高齢者の支援に限らず、「医療ケア児」「働き盛りの方」について幅広く支援をしていこうという動きです。
「医療ケア児」が在宅療養を行う上で、児童相談所や学校への連携がとても重要だということが評価されてきました。また総合できない医療管理を行う上での支援についても関係機関との連携を支援していく形となっています。
「働き盛りの方」が治療継続できる仕組みもあちらこちらに出てきています。主治医と職場の産業医や人事担当者との連携や「リフィル処方箋」についてもその一つだろうと思います。リフィル処方箋は、継続投薬について医師の診療を受けずに投薬を受けられるという患者にとってはメリットがありますが、医療機関にとっては診療料が減ってしまうことにもなりかねません。しかし、一般的になったときに患者がどちらを選ぶのか、ということも考えて判断していくことも必要ですし、服薬管理の問題でも課題は多いのではないかと思っています。
【ポイント5:精神科医療・認知症ケア】
精神科医療と認知症ケアを一緒に並べることに抵抗はあるのですが、地域の中で専門的な支援を行う必要があることでは、同じように考えてみてもよいのではないでしょうか。
例えば、何となくだるいな、寝ても疲れが取れない、気分がすぐれない、頭が痛い、もやもやする・・・など、様々な体の不調を感じた場合、「自分は精神疾患だ」もしくは「認知症だ」と考えて専門病院に行く方は少数だと思います。
一般的には、内科に行かれる方が多いのではないでしょうか?そんな時に、専門医療機関へ繋ぐことは、早期発見・早期治療の開始ができ、その後の生活にも影響が出てきます。対症療法により薬の多剤投与等で相互作用により重篤な状況に陥ってしまう場合もあると聞いています。専門医療機関と連携しつつ早期診断・適切な治療の継続をしていくことで、社会生活を維持できることも分かってきています。
【番外編:不妊治療】
医学の進歩は目覚ましく、不妊治療も発展してきているのですが、これまで高額であったためにあきらめる方もあったと思います。今回、不妊治療が新設され、期待されているところだと思います。産婦人科の先生方にとっては、また不妊にお悩みの方々にとっても、注目点ではないでしょうか。
さてこれまで、私が着目している点をお話してきましたが、このほか、「紹介受診重点医療機関」の評価や「精神医療における在宅」「電子カルテのセキュリティ対策」などもありますね。コロナ禍において、安心して医療機関に受診できる体制(感染対策)、継続して治療できる仕組み、在宅をはじめとする患者さんの生活を支える医療提供、そのために必要な連携など・・・まずは、先生方の医療機関での実績値や、周辺の医療機関との連携を洗いなおしてみましょう。
<参考資料>
■令和4年度診療報酬改定について「個別改定項目(その2)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000888689.pdf
■付帯意見(素案)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000888743.pdf
医業コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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