【医療介護あれこれ】在宅医療「認知症③~BPSDとは?~」
長 幸美
アドバイザリー認知症の治療については、根本治療ができないという認識を持っています。
これはアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、など、進行性の病変であると認識しています。治療薬などがあるものの、進行を遅らせていくものなどで、一時的に対症療法として行われるものではないかと思います。
■治療ができる認知症もある
正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など脳疾患や、ビタミンB1欠乏症のように何らかの必要成分が欠乏しているためにおこる症状や、肝機能・腎機能が低下するためにおこるものもあるそうです。このようなものは、治療ができる認知症だということが言われています。
これらは手術療法や原疾患の診断により改善が見込めるものですが、複合的に絡み合っていることもあるそうですので、専門家に相談される方が良いでしょう。
■BPSDとは?
これまで見てきた、「記憶が失われていく」「失語・失行・失認」「見当識障害」などが認知症の中心的症状・・・中核症状といわれているものですが、それに対して、副次的に行動・心理症状といわれているものがあります。これがBPSDです。
例えば、「怒りっぽくなる」「妄想がある」「意欲がなくなり元気がない」「一人でウロウロと歩き回る」「興奮する」「暴言・暴力が見られる」などがあります。
行動・心理症状は周囲の不適切なケアや体の不調や深い、ストレスや不安などの心理状態が原因となり起こる症状だといわれています。
例えば、中核症状である「見当識障害」・・・つまり「ここはどこ?」「あなたはだれ?」などの混乱が生じた場合、不安が襲ってきます。この不安や混乱が続くことにより、徘徊や興奮、暴力行為というBPSDが起こってくると考えられています。
■日常生活上で困っていることを把握する
高齢者は認知機能が落ちて少しずつできないことが増えてくるものだと思いますが、それ以上に本人や家族の不安・混乱・戸惑いは大きいものだと思います。
適度な運動やバランスの良い食事、夜間の良好な睡眠や、余暇活動を楽しむ生活習慣とともに、糖尿病をはじめとする生活習慣病を治療コントロールしていくことが重要になると思います。BPSDとは、認知症の周辺症状といわれるもので、環境変化等が原因となり起る行動・心理症状と説明されています。
■重度認知症患者デイ・ケア料
これは精神科専門療法の中の一つですが、認知症における徘徊・昼夜逆転・不穏・ひどい物忘れなどの周辺症状の緩和、生活能力の機能維持、家族の介護負担の軽減を目的に看護・リハビリ・介護などを行ものです。 住み慣れた家庭や地域での生活を支援する「医療保険制度」にて利用できる通所施設になります。
対象者(認知症の日常生活自立度判定基準ランクM)に制限がありますが、精神科医による専門的な治療生活指導や精神症状や問題行動の軽減が図れ、介護負担の軽減もできるようサービス内容も配慮されているケースが多いと思います。
医療保険でのサービス利用となりますので、すでに介護保険のサービスを他で利用している方も、利用ができます。
■地域の中で暮らし続けることを支えるために
介護保険サービスについては、認知症デイやグループホーム、小規模多機能など、その方の生活に沿ったサービスがあります。
急激に悪化した場合は医療保険で緊急対応し、生活全般を支えていくのであれば、介護保険を活用してもよいのではないかと思います。
認知症の父と暮らしていて、果たして、今現在がどの段階にいるのか、ということは、家族としてはわからないことが多いのが現状です。さらに、BPSDなどの問題行動が多ければ、家族はつきっきりになってしまい、介護離職につながることも考えられますし、四六時中顔を突き合わせていれば「できないこと」「できなくなったこと」を責めるような言動も増えてくるでしょう。
「忘れん坊さん」「怒りん坊さん」と笑って受け止めていけるように、医療職や介護職とかかわりを持ちながら、穏やかに過ごしていけるようにサポートできるとよいのではないかと思います。
<参考資料>
〇厚労省「知ることからはじめよう~みんなのメンタルヘルス~」より
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_recog.html
医業コンサル課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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