【医療介護あれこれ】接遇レッスン「イライラをひき起こすもの」

長 幸美

アドバイザリー

皆さん、仕事をしていて、理不尽に怒られたことはありませんか?
怒られるとまでは言わなくても、「理不尽な注意」を受けたり、「なんで私が・・・??」というようなことを言われたり、このような経験は一度や二度はお持ちだと思います。
説明する間もなく一方的に言われたり、なぜか相手がヒートアップしていったりすることもありますね。

最近、医療機関や介護事業所からのご相談で時々耳にするのが、「あんな言い方しなくても・・・」ということが原因でトラブルになるという相談です。

例えば・・・
① 保険証を忘れた患者さんに、「保険証はお忘れですか? 取りに行かれますか? 今日中に持ってこられますか? 難しいですか? それでは、今日は自費になりますからいいですね? 保険証と領収書をお持ちになれば返金しますから・・・!」
② 検査の都合で順番が後になった患者さんに、「あなたは、検査があるので、もう少し待ってください。順番に診察していますから・・・!いいですね!」
③ 予約時間に遅れてしまった患者に、「お呼びしてもいらっしゃらなかったので、次の方の診察をはじめちゃったんですよね~。検査がありますから、10分前に来てくださいって説明しましたよね~! 何度かお呼びしたんですけどね~! 予約表にも、後回しになるって書いてあるでしょう! 遅れるならそう言ってくれれば、説明したんですが・・・」

言葉遣いは丁寧なのですが、皆さんが同じ立場になった時に、どう思われるでしょうか?
この三つの事例はそれぞれにクレームになった事例です。
患者さんの言い分は・・・
① 保険証をうっかり忘れてしまったのは私が悪いけれど、この暑さの中、具合が悪い赤ちゃんを抱えて、取りにかえるなんて・・・毎月来ているのだし、融通してくれとは言わないけれど、もう少し言い方があるでしょう!! 今日は自費になりますからいいですね!なんて・・・!
② 検査ってそんなに時間がかかるの? 待ち時間があるなんて聞いてないし、それなら別の日に予約を入れたのに・・・! いくら順番にしているからって・・・どのくらい時間がかかるか説明ぐらいしてくれてもいいのに!
③ 駐車場が込んでて、車が止められなかったのに・・・たった5分遅れただけじゃないか・・・それなのに、後回しってどういうことだ! 遅れた自分が悪いが、予約表に書いてあるって言っても、こんな小さな字で書かれても、見えない!!

どの患者さんも一様に言われるのは、「自分が悪いのはわかっているけれど、そんな言い方しなくても・・・」ということなのです。
つまり、皆さんの声掛けひとつで、おこらなかったクレーム・トラブルなのです。
患者さんは「申し訳ない!」という気持ちはあるけれど、職員がその気持ちに寄り添っていない・・・ということになります。これではどんなに丁寧に行っても、相手は、「無礼だ!」と怒ることにつながってきます。

そこで皆さん一緒に考えてみてください。
イライラを引き起こし、クレームにつながることって、共通して、「寄り添った一言」がない場合に起こるのではないでしょうか?
明らかに自分が悪いと思っていても、それを正面から言われてしまうと、素直になれないことって誰でもありますよね。皆さんも覚えがあると思います。
例えば、子供のころであれば、おやつを食べてから宿題やろう!と思っていても、お母さんから「宿題やったの?」「おやつを食べたら、宿題やりなさい!」と先に言われてしまったら、「もううるさいなあ・・・」「今やろうと思っていたのに!」とやる気がなくなったりいらいらしたりする・・・
職場でも同じです。今やろうと思ったのに! しまった!どうしよう・・・と思っているのに、輪をかけてそんなこと言わなくても!!・・・と思うような状況ありませんか?

「保険証忘れたけど、どうしよう、診察お願いできるかしら?」
「検査の予約は入れているけど、他の人が先に呼ばれていく、ちゃんと受付できているかな?」
「予約の時間から5分遅れてしまったけど、受け付けてくれるかな?」

こんな不安を感じているとしたら・・・安易な言葉かけはできないですよね。

「保険証お忘れですか? 診察は大丈夫ですよ。ただ、今日のお支払いは自費でお願いすることになりますが、ご了承いただけますか? 後日保険証をお持ちになった時にご返金させていただきます。」
「本日検査のご希望の方が多く、少しお時間がかかっているようですが、今検査されている方が終わり次第お呼びしますので、もう少しお待ちいただいていいですか?」
「駐車場が込み合っていたのですね。お呼びした時にご不在でしたので、申し訳ないのですが、次の方の診察を先に始めてしまいました。この方の次にお呼びしますので、少しお待ちいただけますか?」もしくは、「〇時から〇時半までの時間枠に4名予約の方があります。この枠の方が後お二人お待ちになっていますので、お待ちいただくことになりますがご了承いただけますか?」

こういった具合に、きちんと説明してくれたら、この事例の立場に立った時に、どんな風に印象が変わるでしょうか? 気持ちよく納得できると思いませんか?

医業コンサル課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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