【医療介護あれこれ】在宅緩和ケアについて

長 幸美

アドバイザリー

皆さん「在宅緩和ケア」という言葉をお聞きになったことはありますか?
地域包括ケアシステムの中で、「住み慣れた場所で生活し続ける」ということに力を入れています。その中で、病気を治すだけではなく、病気による痛みや苦痛を和らげることで、患者を支え、患者が過ごす時間をできるだけ良くする・・・つまりQuality of Lifeを高めることを目的とした治療のことです。

以前は、末期の悪性腫瘍の患者さんの苦痛をとる、安楽のため・・・というイメージがあったかもしれません。しかし、病気であることを初めて診断された時、治療開始の時、治療の最中、治療の変更の時など、様々な場面で苦しい、つらい場面があると思います。緩和ケアは末期の患者だけが必要なものではありません。

■在宅緩和ケアとは・・・?
緩和医療とは、病気に伴うこころとからだの痛みを和らげることです。
例えば、「がん」と診断された患者の場合、身体症状の緩和や精神・心理的な援助については、終末期だけではなく、がんと診断された時からがん治療と同時に行われる必要があると考えられています。医師だけではなく、看護師、薬剤師をはじめとする医療専門職が、チームを作って緩和ケア外来等の専門的緩和ケアを提供することが求められてきています。

在宅緩和ケアは、在宅療養中の患者の緩和ケアということですので、地域連携体制も必要になってくると思われます。

■緩和ケア研修会
平成28年にがん対策基本法が改正され、緩和ケアについて定義されました。その後、緩和ケアについては、基本的な考え方を正しく理解し、緩和ケアに関する知識や技術・態度を修得するために、緩和ケア研修会や実地研修が数多く開催されています。
研修会の対象者は、がん等の診療に携わるすべての医師・歯科医師、及び緩和ケアに従事するその他の医療従事者、とされています。現在e-learningと集合研修を組み合わせ、疼痛管理だけではなく、精神的・心理的ケア、社会的苦痛に対するケアなど、行われています。

■診療報酬上の評価
外来・在宅で療養される方の緩和ケアについては、以下のような評価があります。
B001 20 がん性疼痛緩和指導管理料 (届)
対象者:医師ががん性疼痛の症状緩和を目的として麻薬を投与しているがん患者
算定要件:WHO方式のがん性疼痛の治療法に基づき、当該保険医療機関の緩和ケアに係る研修を受けた保険医が計画的な治療管理及び療養上必要な指導を行い、麻薬を処方した場合

B001 24 外来緩和ケア管理料 (届)
対象者:医師ががん性疼痛の症状緩和を目的として麻薬を投与している入院中の患者以外の悪性腫瘍、後天性免疫不全症候群又は末期心不全の患者のうち、疼痛、倦怠感、呼吸困難等の身体的症状又は不安、抑うつなどの精神症状を持つ者
算定要件:緩和ケアを要する入院中の患者以外の患者(麻薬が投与中の患者)に対して、当該保険医療機関の保険医、看護師、薬剤師等が共同して療養上必要な指導を行った場合

■緩和ケアチームについて
緩和ケアチームの構成員は、以下8つの分野の専門性を踏まえて構成されるものと考えられています。
①緩和ケアチームを構成する医師(身体症状担当)
②医師(精神症状担当)
③看護師
④薬剤師
⑤ソーシャルワーカー(SW)
⑥医療心理に携わる専門職(臨床心理士、公認心理師)
⑦リハビリテーション専門職(作業療法士、理学療法士、言語聴覚士)
⑧管理栄養士

緩和ケア診療加算などの施設基準の中では、上記①②③④職種がそれぞれ配置されていることが要件とされ、うち1名は専従であることが求められています。また、⑧に関しては、個別に栄養指導等を行うことにより加算という形で認められています。

それぞれに求められている役割も違いますが、緩和ケアは診断されて間がない時期からの心理的サポートがとっても大事であることがわかってきています。そして病気のステージごとにかかわる役割もウエイトも徐々に変わってきます。
最近では、麻酔科のドクターや緩和ケアの普及をコンサルとしてくださるドクターもいらっしゃいます。あちこちの医療機関からのオファーが多いとお聞きしています。
これからの地域包括ケアシステムを考えていく中では、この「在宅緩和ケア」の役割が大きくなっていくのでではないかと思っています。
緩和ケア学会の資料がわかりやすくまとめられていますので、ぜひ参考にされてください。

<参考資料>
〇緩和ケア(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_kanwa.html

〇第5回がんの緩和ケアにかかる部会(厚労省、令和4年4月13日)
https://www.jspm.ne.jp/active/pdf/job_type_v1.pdf

〇緩和ケアチーム活動の手引き(追補版)(日本緩和医療学会)
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000928414.pdf

医業コンサル課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

制作者の直近の記事

コラム一覧に戻る
お問い合わせ

PAGE TOP