【医療介護あれこれ】接遇レッスン「できません!を伝えるには」

長 幸美

アドバイザリー

皆さんの医療機関で、様々なルールがあると思いますが、「できない」ことをお伝えしないといけないことも多いのではないでしょうか?

例えば患者さんからの要望で・・・
「去年と同じ症状だから、去年もらっていた薬がほしい!」
「順番に受け付けていますので、(うしろに)並んでください!」
「駐車場には早くについていたんだ、駐車場が空いていなかったから、空くのを待っていて遅くなったのに・・・順番を早くしてほしい!」」
「今日検査を受けるつもりで会社を休んできたのに、予約が必要なんて知らなかった!受診させてほしい!」
「証明書に、○○○と書いてほしい!」
・・・など、医療機関では常識と思われることでも、患者さんからは「~こうしてほしい」ということを要求されることもあります。
このような時にどのような対応をされているでしょうか? すべての要望をかなえていくことはできないでしょう。こういった場合の対応について考えてみましょう。

【ルールを伝える】
まずは、患者さまやご家族さまの話を聴き、保険診療のルールや院内のルールに従い、説明することになります。この時、気を付けていただきたいことがあります。
それは「これはルールですから!」と一方的に宣言しないことです。
ある意味、医療機関のルールは「医療機関の都合」で決められたものが多いので、「ルールですから」といわれても、患者様が納得できないこともあるということを知っておいてほしいと思います。
法律で定められたルールであれば、「法律で決められている」ということを伝えるべきだと思いますし、そうではない場合は、運営上のルールとして「スムーズな診療を行っていく上での協力お願い」という形をとったほうが、スムーズに伝わるのではないかと思います。

【事例の対応について】
■「去年と同じ症状だから、去年もらっていた薬がほしい!」
まず、無診察診療は禁止されていますし、昨年と同じ病気かどうかは受付では判断できません。したがって、「診療を勧める」という対応が良いと思います。状況によっては看護師に話を聴いてもらうということもよいかもしれません。

■「順番に受け付けていますので、(うしろに)並んでください!」
時々、受付をしている横から割って入ってくる患者さんがあり、思わずそう言いたくなることもありますね。コンビニのレジに並んでいるときも、通路などがありよけて並んでいるときに同じような経験があります。
受付の構造に問題がある場合もあります。どう並ぶのか、誘導できるような表示をすることも必要かもしれません。

■「駐車場には早くについていたんだ、駐車場が空いていなかったから、空くのを待っていて遅くなったのに・・・順番を早くしてほしい!」
そもそも、どんな状態だったのか、患者さん本人の状況はこちらでは見えないものです。
「駐車場が止められなかったのですね。今日は患者さんも多くてご迷惑をおかけしました。」と、いったんは受け止めたあと、当院は受付の順番で診察をしており、前に繰り上げることはできないこと、次回から、車の中から連絡をもらうなどの対応が提案できるように考えてみてはどうでしょうか?

■「今日検査を受けるつもりで会社を休んできたのに、予約が必要なんて知らなかった!」
この事例も、いきなり「できません、予約ですから!」と断るのではなく、「今日会社をお休みされたのですね。検査の空き状況を確認しますので少しお待ちください」と一旦引き取ったあと、対応を検討し、提案しましょう。診察後、やはり今日検査をしたほうが良いという判断になるかもしれません。

■「証明書(診断書)に、○○○と書いてほしい」
以前病院に勤務していた時にもよくあったのですが、例えば、初診日より前から会社を休んでいるから、傷病手当金の書類に病院に通っていたように書いてほしい、とか、内視鏡検査を「手術したと記載してほしい」とか、本当はまだ休養が必要な状況なのに、「職場復帰は可能だ」と書いてほしいとか・・・。
それぞれの事情もあると思いますが、先生も「ウソ」は書くことができません。
したがって、丁寧に「受診日以降の証明になること」を説明する必要があります。
また、検査と手術の違いや職場復帰はまだ難しい、というような診療にかかわる内容については、医師から説明してもらった方がいいかもしれません。

【今回のポイントは?】
「できない」ということをお伝えするのはなかなか難しいものです。それぞれに事情があり、困ったなあと本人も思っているからです。
しかし、このような時こそ、いったん受けるということを意識してみてください。「~~なのですね」「それでお困りなのですね」といったんは受け止め、ワンクッションを置いて、状況を説明することも必要です。
そして、代替え案を提案しましょう。その際は、相手のペースにのまれないように、一呼吸おいて、目の前の事例について最善は何かを考えていきましょう。


医業コンサル課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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