【医療介護あれこれ】医療事務基礎講座「紹介状なしで受診する場合の定額負担の見直し①」

長 幸美

アドバイザリー

令和4年4月度の改定において、療養担当規則の改正が行われ、「紹介状なしで受診する場合の定額負担」・・・つまり、選定療養費の見直しが行われました。この改定については、9月末まで経過措置が設けられ、10月1日からの実施とされてきました。
これは、重点医療機関の認定とともに、単に大病院の受診について選定療養費の金額を引き上げただけではなく、クリニックの先生方への影響も考えられます。

■そもそも「紹介状なしで受診する場合の特別の料金」とは?
これは一部の大病院に外来患者が集中し、患者の待ち時間問題や勤務医の外来負担等の課題が生じており、医療機能の分化の観点からも、一定規模の病院は、高度な医療機能を有するものとして、かかりつけ医からの紹介状を持参し、必要に応じて医療機関の機能・役割に応じた診療を行うように求められた制度です。

このため、「患者の自己選択・自己意思」による受診として、選定療養費を徴収する制度ができました。

■令和4年10月からの改定内容
① 対象病院
・特定機能病院
・地域医療支援病院(一般病床200床以上に限る)
・紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上に限る)※
上記以外の一般病床200床以上の病院については、選定療養として特別の料金を徴収することができるものとされています。
② 対象患者
・初診・・・他の医療機関からの紹介状なしで受診する患者
・再来・・・病院から他の医療機関への紹介状を交付されたにも関わらず、引き続き受診する患者
③ 定額負担の額・・・特別の料金の引き上げ。(消費税は含まれる)
・初診:医科7,000円、歯科5,000円
・再診:医科3,000円、歯科1,900円
④ 保険給付範囲からの控除
外来機能の明確化のための例外的・限定的な取扱いとして、定額負担を求める患者・・・つまり「あえて紹介状なしで受診する患者等」については、初診料・再診料の額から以下の点数を控除することとされています。
・初診:医科200点、歯科200点
・再診:医科50点、歯科40点
つまり、定額負担を求めるものに対し、さらに初診料・再診料から上記点数を減額して請求することとなります。

■紹介重点医療機関について
医療法に基づいて令和4年度から行われる外来機能報告を踏まえ、「地域の協議の場」・・・つまり地域医療構想調整会議において、紹介患者への外来を基本とする医療機関として、都道府県が公表した病院である、とされています。
令和4年度は、令和5年3月ごろに公表される予定となっています。

紹介受診重点医療機関について
(出典:厚労省「第8次医療計画等に関する検討会(20220909)資料1」より)

患者は、まず地域の「かかりつけ医」を受診し、必要に応じて紹介を受けて受診する・・・つまり「かかりつけ医」の機能分化・役割の明確化を進めていこうというものです。
そして紹介重点医療機関だけではなく、特定機能病院、地域医療支援病院、400床以上の病院については、「紹介患者割合」だけではなく、「逆紹介患者の割合」についても、基準が設けられ、初診患者と再診患者の合計が分母に来るように計算式も変更されています。

■「特別の料金」の支払い対象外
救急の患者等、特別の料金の支払いを受けなくてよい特例・・・つまり上記③の実費を払わなくてよい場合はあるのでしょうか?
今回の改定の説明会資料を見てみましょう!
「緊急その他やむを得ない事情がある場合は定額負担を求めてはならない。」とされており、救急搬送された患者や急を要する夜間の受診、等が該当すると考えられます。

紹介状なしで受診する場合の定額負担の見直し②
(出典:厚労省「令和4年度診療報酬改定(外来医療の機能分化等)説明会資料より」

この説明会資料で気になるのは、「再診の場合」です。
「自院の他の診療科を受診している患者」「医科と歯科との間で院内紹介された患者」「特定健診・がん検診受信後の精密検査受診」「地域に当該診療科を標榜する保険医療機関がない」「治験協力者である患者」という5つの項目がなくなっています。
つまり、初診では、自院内の院内紹介患者等を認めるが、2回目以降は地域の医療機関への逆紹介を行うよう、求められていて、2回目以降の受診で認めるのは、緊急性の高い場合や災害・自己・自由診療の患者、ということになります。

■紹介され、大病院を受診した患者の心理
大病院を受診した患者は、「大病院のメリット」を感じ、継続して大病院にかかりたいことが多々あると思います。このメリットとしては、「いくつもの診療科があるので、ついでに受診できる」や「先生や看護師さんが多いので、なんだか安心」や「大きな建物や医療機器がたくさんある」ということに価値を見出している方もあるかもしれません。
しかしデメリットもあるでしょう。
「いつも医師や看護師が変わる」ことや「待ち時間」の問題、「予約が取れない」「遠くて時間がかかる」という方もあるかもしれません。

患者の立場になると、「話を聴いてくれる」ことや「身近な先生」として、クリニックの魅力がないと、紹介した患者も戻ってきてくれない・・・なんていうことも起こるかもしれません。
私は、日ごろは近くの先生に診てもらい、何かあった時は、相談に乗ってくれて適切な医療機関につないでくれる、そして大きな病院の先生からも「あの先生とはよく連携しているよ」ということを言われると、とても安心した経験があります。
同じような経験をされた友人や親せきもあり、診療所と病院の連携やつながりというのはとても大事なんだなということを考えることも多くなってきました。

今回の「紹介状なしで受診する場合の定額負担の見直し」ですが、こうしてみると、単に機能分化を「紹介状の有無」だけで見ているというより、地域の医療機能や自医療機関の立ち位置(役割)をしっかりと理解し、病院から選ばれる・・・逆紹介したいと思われる、患者さんから逆紹介してほしいと思われる魅力的な診療所になってね・・・という風に見えてくるのです。

自己負担が増えたから仕方ないクリニックに行くか・・・と思われるか、
日頃から見てくれていて、私のことをよく知っている先生に見てほしい・・・と思われるか。
大きな違いがありますよね。後者になったほうが良いと思いませんか?
そしてこの「私のことをよく知ってくれている」という判断には、医師以外のクリニックスタッフ・・・事務職員であっても「あの人がいるから」という気持ちになる方もあります。

今回の改定では、逆紹介したくなるクリニック、大病院にとっても、相談しやすい・安心してお任せできるクリニックは、とても大事な存在になると思います。そういう意味では、クリニックの先生方も大事な時期を迎えているかもしれませんね。
皆さんはどのようにお感じになりますか?

<参考資料>
〇令和4年度診療報酬改定の概要(外来Ⅰ)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000920428.pdf

〇かかりつけ医機能について(20220929)第91回社会保障審議会医療部会資料
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000994685.pdf

医業コンサル課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

制作者の直近の記事

コラム一覧に戻る
お問い合わせ

PAGE TOP