【医療介護あれこれ】接遇レッスン「コロナ禍での接遇」

長 幸美

アドバイザリー

コロナ禍で、マスク生活、しかも手指消毒・検温、ファイルの消毒など、作業が追加され、さらに対面での業務から非対面へ、様々に医療機関のお仕事が変わってきました。
受付機や自動精算機の導入や、予約システム・受付システムの導入、さらにはオンライン診療に薬剤配送まで・・・医療機関でのあり方も少しずつ変わってきているように思います。

さて、そんな中での医療機関の接遇についてはどうでしょうか?
マスクにより口元が見えないため、言葉がはっきりと聞き取れない高齢者や表情がわからずにうまくコミュニケーションが取れない、特に子供さんたちにとっては、医療機関で相談しずらい、何となく声がかけにくい、という思いを持たれていることもあるでしょう。

今回は、非接触が推奨される中での、クリニックの接遇を考えてみたいと思います。

■接触(対面)をなくすメリット/デメリット
接触を少なくすることで、確かに対面による飛沫感染を少なくすることはできるかもしれません。感染対策を考えていくと、非接触での対応が良いこともあるでしょう。
しかし、初めての医療機関で、具合が悪く、どんな悪い病気かしら・・・と不安を抱えている方にとっては、機械操作によりだれとも話をせず不安も募る一方・・・という方も多いと思います。
知り合いの医療機関で、問診を書いている方がボールペンを落とされ、「落としましたよ」と拾ってお渡ししたところ、堰を切ったように号泣され、初めて来た病院で検査の予約も機械、受付も機械、問診を渡され、放射線科の前で待つように言われ、不安で不安で・・・と。機械に頼りすぎちゃだめね~と話してくださりました。このような話は、あちこちでお聞きします。

■受付も医療チームの一員である自覚をもとう!
医療機関に来て一番最初に患者さんと接するのは受付職員です。
いま、来院時の検温や手指消毒の声掛けなど、作業は増えているように思います。しかし、そのような中でも、受付も医療機関の職員です。小さな子供連れの患者さまや「いつもと違うな」ということをキャッチして、看護師等と連携をとることにより、待合室でのストレスが減らせると思います。

また、ある医療機関で、文字による案内用の掲示物を、サイズも大きく、できるだけシンプルにイラストを入れて最小限の文字で掲載するように見直しを行いました。もちろんおうちに持って帰って読んでもらうように説明文書も作成しました。
こうすることにより、患者さんからの問い合わせも減り、院内での説明も減ってきたと報告がありました。

■院内の患者動線の見直し
ある医療機関では、会計窓口の目の前に中待合と診察室の入り口がありました。このため、会計周りには、診察待ちの方、会計待ちの方、診察室に出入りする患者さまやその家族さまがごった返してしまう・・・という問題もありました。
診察室から処置室前の廊下を抜けて待合室に出るように、患者さんの動線を見直し、この混雑解消と感染対策も兼ねて行うことにしました。これがおもわぬ効果があり・・・これまで、患者さまと看護師が話をする場面というのがとても少なかったのですが、処置室前の職員動線を利用することにより、診察後の不安や質問などを看護師に尋ね、逆に看護師から声をかけるようになってきたのです。
こうすることにより、「最近クリニックの雰囲気が変わったね」とお褒めの言葉もいただくようになりました。

■マスクの人には話しかけずらい・・・
マスクをかけていると、表情が読み取れないので、何となく話しかけるのを躊躇するということもよく耳にします。確かに、目元しか見えていませんから、なかなか表情がわかりにくい・・・しかも、医療機関でパソコンに向かって何かをしているときなどは、ちょっと声をかけられない・・・ということもあるかもしれません。
できるだけ、目元で笑うように・・・にこちゃんマークのように口角を上げ、笑う・・・ということを意識しましょう。そして、皆さんから声をかけてほしいのです。
例えば・・・
・おはようございます。今日も暑いですね~
・こんにちは、急な雨でぬれませんでしたか?
・検査お疲れ様でした。ご気分は大丈夫ですか?
・お待たせしました。これから処置をしますね。初めてですか?・・・
・(会計後)お大事に! お気をつけて帰ってくださいね。
など、挨拶+αの言葉かけを意識していただくことが、とても大事なのではないか、と思います。

コロナ禍になり、何となくいらいらしている人が増えた、怒りっぽくなってきたな~と感じておられる方も多いと思います。これはしてはいけないことをする人が増えたわけではないと思います。人は自分自身のストレスや置かれた環境・・・例えば「暑い/寒い」「眠い(寝不足)」「おなかがすいた」「仕事が重なっている」などの要因が増えてくると、ちょっとしたことでも、イラっとしたり、怒りっぽくなったりすると思います。それはみんな同じです。そして、コロナ禍になり、一番ストレスになっていることは、自由に出歩けなくなったこと(行動抑制)や会食等の楽しみが減ったことではないでしょうか?

医療機関では、「人が人を癒す」ことも多々あると思います。コロナ禍で、よりこの「寄り添う力」が大事になってきたように感じています。
皆さんにとって医療機関は「職場」です。医療人として、プロとして、いつでも涼しい顔をして、患者さんに寄り添うことができるといいですね!

医業コンサル課

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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