在宅医療「訪問看護の指示書の要件」
長 幸美
アドバイザリー在宅医療を行うにあたって、訪問看護により、医療処置等を依頼することはよくあることだと思います。そのような場合、自院の看護師で対応できる場合より、外部の訪問看護ステーションの看護師やリハビリスタッフ、他の医療機関にお願いすることも多いのではないでしょうか?
訪問看護・訪問リハビリについては、提供するものの所属(主体)が違うと指示の出し方や有効期間、算定可能な診療報酬も変わってきます。今回は指示の出し方により、どのようなルールがあるのか、整理してみましょう。
■自院の看護師等に指示をする場合
・ 指示内容は、診療日にカルテに指示内容を記載します。指示に対する報酬はありません。
・ 訪問看護の有効期間は医療保険・介護保険ともに診療日から1か月以内となります。
・ 訪問リハビリの有効期間は、医療保険1か月以内、介護保険は3月以内となるので、気を付けましょう。
■他の医療機関の看護師・リハビリスタッフ等に指示する場合
・ 診療情報提供書にて内容を指示します。診療情報提供書は、診療日より2週間以内であれば、診察日でなくても記載ができます。指示に対する報酬は「診療情報提供書料(Ⅰ)250点」で算定できます。
・ 訪問看護の有効期間は医療保険・介護保険ともに情報提供を行った医師の診療日から1か月以内です。
・ 訪問リハビリの有効期間は、医療保険1か月以内、介護保険は3か月以内となるので、気を付けましょう
■訪問看護ステーションの訪問看護(リハビリ)を受ける場合
・ 訪問看護指示書を作成し、依頼します。
・ 電子署名が行われていないメールやSNSを使用した指示書の交付は認められていませんので、書類を郵送等で受け渡しする必要があります。
・ 訪問看護指示書は、診療日でなくても作成できます。診療報酬は、訪問看護指示料(300点)の算定ができます。
・ 指示書の有効期間は6か月以内です。指示書の有効期間に日付を入れない場合は、1か月間のみの指示ということになります。指示書を交付した後でも、患者の病状などに応じて指示期間を変更することは可能です。
・ 訪問看護ステーションのリハビリスタッフがリハビリを実施する場合、指示書に、リハビリの時間及び実施頻度等を記載することが求められている(令和4年度改定)
・ 訪問看護ステーションの看護師に特定行為の実施にかかる手順書を交付した場合の評価として、「手順書加算(150点)」として、訪問看護指示料に加算が新設されています(6か月に1回算定可能)。
<特定行為として訪問看護で専門の管理を必要とするものは以下の通り>
(ア) 気管カニューレの交換
(イ) 胃ろうカテーテルもしくは腸瘻カテーテルまたは胃ろうボタンの交換
(ウ) 膀胱瘻カテーテルの交換
(エ) 褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
(オ) 創傷に対する陰圧閉鎖療法
(カ) 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
(キ) 脱水症状に対する輸液による補正
■特別訪問看護指示を出した場合
褥瘡の処置や全身状態の悪化、急性増悪時などにより、週4日以上の頻回な訪問看護が必要になった場合には、通常の訪問看護に加え、診療日から14日間頻回な訪問看護を受けることができます。
・ 特別訪問看護指示は、医師の診療を行った日でなければ出すことはできません。
・ 指示書の記載日と診療日が同じで、有効期間の開始日も同じで、有効期間は14日間のみです。重度の褥瘡など「別に厚生労働大臣が定める状態にあるもの」については、月2回迄指示を出すことができます。
<別に厚生労働大臣が定める状態>
(ア) 気管カニューレを使用している状態にあるもの
(イ) 真皮を超える褥瘡の状態にあるもの
・ 診療報酬は、訪問看護指示料の加算として「特別訪問看護指示加算(100点)」を算定することができます。加算のみの算定はできません。
・ 褥瘡等の処置にかかる衛生材料については指示を行った医療機関から交付します。
「衛生材料等提供加算(80点)」が算定できます(月1回)。
ただし、在医総管、施設総管、在宅がん医療総合診療料、在宅患者訪問点滴注射管理指導料、在宅療養指導管理料を算定した場合は算定できません。
■在宅患者に週3日以上の点滴の指示を出した場合
医師の診療に基づき、週3日以上の点滴加療が必要であるとされた場合に、「在宅患者訪問点滴注射指示書」を記載し、訪問看護師に点滴を実施してもらうことができます。
・ 在宅患者訪問点滴注射管理指導料は、診療日に指示ができます。
・ 指示の有効期間は医師が指示を行った日(指示書作成日)から7日以内です。
(指示書作成日と有効期間の開始日は同じである)
・ 医師の指示に従い、訪問看護ステーションの看護師がその週の3回目の点滴を行った日に「在宅患者訪問点滴注射管理指導料(100点)」の算定ができます。
・ この間に医師が点滴注射を実施した場合は、訪問看護師が実施した点滴の回数からカウントを除外することになりますので、注意が必要です。
(医師が1回、訪問看護師2回で実施した場合在宅患者訪問点滴注射管理指導料の算定はできません)
・ 週3回以上の指示はあったが、3回以上の実施ができなかった場合、点滴の薬剤料は算定できます。
・ 因みにこの場合の薬剤料は、在宅の項ではなく、注射の項で算定することになります。また、注射の手技料は算定できません(訪問看護に含まれる)ので、ご留意ください。
(あくまでも、点滴注射です。中心静脈栄養や静脈注射・筋注は含まれません)
今回「指示の仕方」に焦点を当て、まとめてきました。
訪問看護師がどこに所属しているか、を確認したうえで、適切に指示を出し、診療報酬の請求を行うようにしましょう!
<参考資料>
〇診療報酬点数表「在宅医療」
C005-2 在宅患者訪問点滴注射管理指導料
C007 訪問看護指示料
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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