看護職員の処遇改善
長 幸美
アドバイザリー8月10日の中医協において、看護職員の処遇改善の答申案が可決されました。厚労省のホームページでも、説明用資料等が公開されています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html
本日はこの改定についてみていきましょう!
■看護職員処遇改善評価料の新設
基本的な考え方としては、地域でコロナ医療など、一定の役割を担う医療機関に勤務する看護職員を対象に、令和4年10月以降収入を3%程度(月額約12,000円相当)引き上げるための処遇改善の仕組みを創設するものです。
(出典:厚労省「令和4年度診療報酬改定について(10月改定分)」より)
ご覧になって分かる通り、165段階に細かく分かれています。また、初めは1点刻みだったものが、途中5点になり、10点刻みになってきています。
■施設基準1・・・地域でコロナ医療など一定の役割を担う医療機関であること
次のいずれかに該当すること。
イ、 救急医療管理加算に係る届出を行っている保険医療機関であって、救急搬送件数が年間で 200 件以上であること。
ロ、「救急医療対策事業実施要綱」(昭和 52 年7月6日医発第 692号)に定める第3「救命救急センター」、第4「高度救命救急センター」又は第5「小児救命救急センター」を設置している保険医療機関であること。
※「ロ」では、「救急医療対策事業実施要綱の中に定めている①救命救急センター、②高度救命救急センター、③小児救命救急センターを設置していることなので、多くの医療機関は「イ」の救急医療管理加算を届け出ていて、救急搬送の受入れが200件を超える。という要件に該当するかどうか、だと思います。(月17件程度の受入れです)
この場合の救急搬送件数は、「賃金改善する期間を含む年度(賃金改善実施年度)の前々年度1年間における実績」とされています。
■施設基準2・・・賃金改善の実施実績
「当該保険医療機関に勤務する看護職員等に対して、当該評価料の算定額に相当する賃金の改善を実施しなければならない」と規定されています。
つまり実績が必要だということです。
① 賃金改善措置の対象者「看護職員等」に含まれるものは?
賃金改善措置の対象者である「看護職員等」には、「保健師、助産師、看護師及び准看護師(非常勤職員を含む。)」となります。この中には、看護補助者は含まれていません。
しかし・・・
次の項において、「ただし、当該保険医療機関の実情に応じて、当該保険医療機関に勤務する看護補助者、理学療法士、作業療法士、その他別表1に定めるコメディカルである職員(非常勤職員を含む。)についても、賃金の改善措置の対象者に加えることができる。」と記載されており、看護補助者はその他コメディカルスタッフとして対象としてよいことになっています。
【別表1】
看護補助者、理学療法士及び作業療法士以外の賃金の改善措置の対象とすることができるコメディカル
ア 視能訓練士 イ 言語聴覚士 ウ 義肢装具士
エ 歯科衛生士 オ 歯科技工士 カ 診療放射線技師
キ 臨床検査技師 ク 臨床工学技士 ケ 管理栄養士
コ 栄養士 サ 精神保健福祉士 シ 社会福祉士
ス 介護福祉士 セ 保育士
② 当該評価料の算定額に相当する賃金の改善を実施とは・・・
この場合の賃金には、「基本給、手当、賞与等(退職手当を除く。)を含む」とされています。「手当」を含んでよいものとされていますが、項目を特定する必要があり、業績等に応じて変動するもの以外は下げることができません。
また、安定的な賃金改善を確保する観点から、賃金改善の合計額の2/3以上は、基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げにより改善することが求められています。
■看護職員処遇改善評価料の点数をどう決めるのか?
「当該保険医療機関における看護職員等の数及び延べ入院患者数(入院基本料、特定入院料又は短期滞在手術等基本料を算定している患者の延べ人数をいう)を用いて次の式により算出した数【A】に基づき、別表2に従い該当する区分を届け出ること。」とされています。
この場合のルールとして
① 「看護職員等の数」は、直近3カ月の各月1日時点における看護職員数の平均の数値を用いること
② 「延べ入院患者数」は、直近3カ月の1月当たりの延入院患者数の平均の数値を用いること
また、届け出後の取扱いについては、
毎年3、6、9、12 月に上記の算定式により新たに算出を行い、区分に変更がある場合は地方厚生局長等に届け出ること。
ただし、前回届け出た時点と比較して、直近3か月の「看護職員等の数」、「延べ入院患者数」及び【A】のいずれの変化も1割以内である場合においては、区分の変更を行わないものとすること。
■厚生局への実績報告について
看護職員処遇改善計画書(毎年4月作成、7月提出)と賃金改善実績報告書(7月に前年度の実績報告を提出)をそれぞれ地方厚生局に提出することが求められています。
記載内容はそれぞれ以下の通りです。
① 看護職員処遇改善計画書
⇒看護職員処遇改善評価料の見込額、賃金改善の見込額、賃金改善実施期間、
賃金改善を行う賃金項目及び方法等
② 「賃金改善実績報告書」
⇒前年度における取組状況を評価する報告書
この辺りは、介護保険定められている介護職員処遇改善計画書・報告書イメージされるといいのかなと思います。
今回令和4年10月の改定においては、基準の届出は10月20日までに届け出になっていますので、締め切りも併せてご確認ください。
<参考資料>
〇令和4年度診療報酬改定について(10月改定分)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00041.html
・診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項及び基本診療料の施設基準等及びその届け出に関する手続きの取扱いについて(看護の処遇改善)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000985117.pdf
・疑義解釈資料(その1)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000985148.pdf
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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