精算課税・相続前贈与加算期間を見直し(令和5年度税制改正大綱)
佐々木 大
税務・会計令和5年度税制改正大綱における資産課税関係の改正についてまとめます。
今回は、相続時精算課税制度の見直しや、暦年課税における相続前贈与の加算期間の延長、教育資金と結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税措置の延長等が盛り込まれました。
下記では、改正項目の中でも主要な項目に絞って列挙します。
■相続前贈与の加算期間の延長
暦年課税において、相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前に被相続人から贈与を受けたことがある場合の相続税の課税価格への加算期間を、相続の開始前7年以内に延長します。延長する4年間に受けた贈与については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額を相続税の課税価格に加算します。
なお、適用時期は、令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。具体的には、令和9年1月1日以後の相続等から加算期間が順次延長されることになり、令和13年1月1日以後の相続等について加算期間が7年となります。
■相続時精算課税制度の見直し
現行の相続時精算課税制度は、60歳以上の父母等が18歳以上の子や孫等に対して財産を贈与した場合に、その贈与者ごとに累積2,500万円までの贈与に係る贈与税を非課税とし、超えた部分について一律20%の贈与税が課されるものです。相続時精算課税制度はその名の通り「相続の際に税金の計算を『精算する』制度」であり、暦年課税との「選択制」となっています。一度選択すると後戻りできないことも特徴です。
令和5年度改正により、相続時精算課税を適用する者が受けた贈与に係るその年分の贈与税については、暦年課税の基礎控除とは別に、課税価格から基礎控除110万円を控除できるようになります。また、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格に加算等される贈与財産の価額は、基礎控除後の残額となります。
なお、適用時期は「令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税」です。
■教育資金の一括贈与に係る非課税措置の延長等
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、次の①~③の措置等を講じた上で、適用期限を令和8年3月31日まで3年延長します。
① 教育資金管理契約期間中に贈与者が死亡した場合に、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円超のときは、受贈者の年齢等にかかわらず、その死亡日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額を相続財産に加算。
② 受贈者が30歳に達した場合など教育資金管理契約終了時に、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額に贈与税が課されるときは、一般税率(現行:特例税率)を適用。
③ 教育資金の範囲に、都道府県知事等から一定の証明書の交付を受けた認可外保育施設に支払われる保育料等を追加。
なお、適用時期は、上記①、②の改正は令和5年4月1日以後に取得する信託受益権等に係る相続税又は贈与税について、上記③の改正は、同日以後に支払われる教育資金について適用されます。
今回の改正のうち、とくに「相続前贈与の加算期間の延長」については影響が大きく、これまでの「暦年課税の非課税枠を活用した相続税対策」の計画見直しを迫られそうです。ただ、令和5年から突然延長されるわけではありません。今年(令和5年)を見直しの1年として、対策を立てていきましょう。より具体的な部分については、別のコラムで触れたいと思います。
2023.1.20
株式会社佐々木総研 代表取締役 税理士 佐々木大
著者紹介
- 佐々木総研グループ 代表