介護現場における医行為について

長 幸美

医業経営支援

令和4年12月1日医政局からの通知(医政発1201第4号)において、介護現場における処置等のうち、「医行為ではない」と考えられるもの、及び当該行為を介護職員が行うに当たって患者や家族、医療従事者等との合意形成や協力に関する事項について、取りまとめが出されています。
医師や看護師等有資格者以外で行うことが適切か否か判断する際やケアの提供体制について検討する際の参考になると思います。今回簡単にご紹介します。

■医業は医療有資格者が行うもの
介護現場等における医療行為については、関係法令により禁止されています。
以下、医政局の通知の冒頭の文章を記載します。

但し、介護現場において、これまで個々の介護の様態に応じ、「医療行為」であるかないかの判断がつきづらく、今回の通知により、「医療行為ではないと考えられる行為」が新たに整理されました。

■「医療行為ではない」とされたもの・・・抜粋
それぞれの医療行為について、判断にあたっての条件等がありますので、今回発出された通知を必ず確認してください。
① 在介護等の介護現場におけるインスリンの投与の準備・片付け
⇒あらかじめ医師から指示されたタイミングでの実施の声掛け、見守り
⇒未使用の注射器等の患者への手渡し
⇒使い終わった注射器の片付け(注射器の針を抜き、処分する行為を除く。)
⇒記録
⇒インスリン注射の実施時、患者が血糖測定及び血糖値の確認と医師の指示確認
⇒患者が準備したインスリン単位数と合っているか 読み取り

② 血糖測定関係
⇒血糖測定器のセンサー貼付や測定値の読み取り

③ 経管栄養関係
⇒テープ貼付部位の確認・・・発赤等異常の有無、外れ・汚染時の再貼付
⇒経管栄養の準備・・・栄養等を注入する行為を除く
<看護師が行うこと>
・経鼻経管栄養・・・栄養チューブの胃内挿入確認
・胃ろう・腸ろう・・・びらんや肉芽等状態に問題がないかどうかの確認
・胃・腸の内容物を注射器でひいて性状と量を確認し実施判断を行うこと
⇒片付け・・・栄養等の注入を停止する行為を除く

④ 喀痰吸引関係
⇒喀痰吸引器に溜まった汚水の廃棄や水の補充
⇒吸引チューブ内を洗浄する目的で使用する水の補充

⑤ 在宅酸素関係
⇒酸素流量の設定・・・患者が酸素マスクや経鼻カニューレを装着していない状況下
⇒酸素マスクや経鼻カニューレの装着等の準備・・・酸素を流入していない状況下
⇒酸素離脱後の片付け
⇒機械使用の環境整備・・・加湿瓶の蒸留水を交換する、機器のふき取りを行うなど
<看護師が行うこと>
・酸素吸入の開始(流量開始後の装着も含む)、停止
・在宅人工呼吸器を実施時の体位交換は医師又は看護職員の立会いが必要

⑥ 膀胱留置カテーテル関係
⇒畜尿バックからの尿廃棄
⇒畜尿バックの尿量及び尿の色の確認
⇒テープの再貼付・・・チューブをとめているテープが外れた場合(事前指示必要)
⇒留置カテーテル挿入患者の陰部洗浄・・・専門的管理不要を医師又は看護職員が確認した場合のみ

⑦ 服薬等介助関係
⇒水虫や爪白癬にり患した爪への軟膏又は外用液の塗布(褥瘡の処置を除く。)
⇒吸入薬の吸入
⇒分包された液剤の内服を介助すること
⇒以下の条件に合致している場合の医薬品使用
<服薬等介助可能な3要件>
・ 患者が入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること
・ 副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要である場合ではないこと
・ 内用薬については誤嚥の可能性など、当該医薬品の使用の方法そのものについて専門的な配慮が必要な場合ではないこと

⑧ 血圧測定関係
⇒動脈血酸素飽和度を測定・・・パルスオキシメーターを装着し、測定を確認すること
⇒半自動血圧測定器(ポンプ式を含む。)を用いて血圧を測定すること

⑨ 食事介助関係
⇒食事(とろみ食)の介助

⑩ 義歯の着脱及び洗浄

■留意事項
今回の整理については、あくまでも医師法・歯科医師法・保助看法等の解釈による整理であり、業として行う場合においては、実施者について一定の研修を行うことが望ましいものであるとされています。また、民法・刑法上の規定による責任については別途判断されるものであるとされています。
また、これら実施については、看護職員による実施計画や具体的な手技や方法等をその計画に基づき行うこと、服薬等の介助等は看護職員によって実施されることが望ましいとされています。改定の中でも、喀痰吸引等の医療措置においては、指導書の作成や実施の際の指導など、細やかな配慮が求められているものですので、実施を計画されるときにはご留意いただければと思います。

以上、詳細は巻末の参考資料をご参照ください。

<参考資料>
〇厚労省:「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の
解釈について(その2)」の周知について(医政発1201第4号)」事務連絡(令和4年12月1日)
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T221202G0020.pdf
(確認日:令和5年2月13日)

〇厚労省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」(平成17年7月26日医政発第0726005号)
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb2895&dataType=1&pageNo=1
(確認日:令和5年2月6日)

医業コンサル課 長幸美

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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