在宅自己注射指導管理料/加算の「3か月に3回」の算定について

長 幸美

医業経営支援

在宅自己注射指導管理料の算定について、このところ続けて質問が来ています。
①初診において在宅自己注射指導管理料を算定したが査定されたという質問です。そして、二つ目に
②血糖測定器や針などの材料の算定について「3か月に3回」の算定を知らない・・・という方がいらっしゃるようですので、解説していきたいと思います。

 ※在宅自己注射の基本的な内容(算定)については、こちらを参照してください。

①導入前の留意事項

在宅自己注射指導管理料は、原則「入院又は2回以上の外来診療等が必要」とされています。

通知(7)

在宅自己注射の導入前に、入院又は2回以上の外来、往診若しくは訪問診療により医師による十分な教育期間をとり、十分な指導を行った場合に限り算定する。ただし、アドレナリン製剤については、この限りではない。また、指導内容を詳細に記載した文書を作成し患者に交付すること。なお、第2節第1款の在宅療養指導管理料の通則の留意事項に従い、衛生材料等については、必要かつ十分な量を支給すること。

(厚生労働省:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)令和4年3月4日
保医発0304第1号(確認日令和5年5月15日))

例外規定

上記、通知(7)により、初診の場合は基本的に算定できないとされていますが、転院された場合など、当院では初めてだけれど、前医による在宅医療を導入されて、すでに在宅で自己注射を実施されている場合があると思います。このような場合は、「転院による継続指導」である旨をコメントし請求する必要があります。
また、この場合でも、前医の新規導入から3か月以内の場合は、導入した年月をコメント入力して、導入期加算が算定できますので、確認するようにしてください。

②血糖測定器加算等の「3か月に3回」のルールについて

在宅療養指導管理料については、その医療行為を行うために必要な医療材料費に関しても一部は加算点数での算定ができるように設定されています。

在宅自己注射指導管理料の場合は、「C150 血糖自己測定器加算」「C151 注入器加算」「C153 注入器用注射針加算」の三種類が設定されています。ただし、これらの費用は「在宅療養指導管理料」の算定があった場合に加算して管理料と一緒に算定する決まりとなっています。加算分だけを単独で算定することはできません。これが前提になっています。

3か月に3回とは?

病状が安定し、血糖のコントロールが良好である場合は、2~3か月に1回の受診でよいという患者さんもいらっしゃると思います。このような患者さんに対しては、インスリン製剤等や血糖測定用のセンサーチップや注入器用注射針なども、2~3か月分まとめて処方される場合もあるでしょう。

注射薬であるインスリン製剤等は、2~3か月分まとめて算定することもできますし、途中で薬剤が足りなくなった場合であっても薬剤料を別途算定することが出来ます。しかし、血糖測定器のセンサーチップや注入器用注射針などはまとめて渡していても、算定は受診時に管理料と一緒でなければ算定できません。

このような長期投与になった場合に、過去に渡した分若しくは未来の使用予定の分の材料費を算定できる仕組みにしたものが、「3か月に3回」の算定のルールです。

算定例① 1か月分ずつ処方した場合

4月1日に受診された患者さんに、インスリン製剤30日分と血糖測定用センサーチップ(30日分)及び注入器用注射針を院内処方したとします。この場合は、在宅自己注射指導管理料+インスリン製剤(30日分)+血糖自己測定器加算+注入器用注射針加算を算定することになります。

この患者さんが4月30日再び受診し、同様にインスリン製剤30日分、血糖測定用センサーチップ(30日分)、注入器用注射針(30日分)を処方した場合、算定はインスリン製剤30日分のみの算定になりますね。

さらに、この患者さんが残薬があったからと言って、次の受診が6月1日になった場合でも、この4月30日に処方した血糖測定用センサーチップ(30日分)と注入器用注射針については、「5月分」として、6月1日に加算が算定できるのです。ちょっとよくわからないですよね。表にして整理してみましょう!

受診月診察:在宅自己注射指導管理
   ・インスリン製剤(30日分)
   ・血糖測定用センサーチップ(30日分)
   ・注入器用注射針(30日分)
4月1日算定:在宅自己注射指導管理料
   ・インスリン製剤(30日分)
   ・血糖測定器加算_1回
   ・注入器用注射針加算_1回
4月30日算定:・インスリン製剤(30日分)
6月1日算定:在宅自己注射指導管理料
   ・インスリン製剤(30日分)
   ・血糖測定器加算_2回(5月、6月分) 
   ・注入器用注射針加算_2回(5月、6月分)
算定例①1か月分ずつ処方した場合

如何でしょうか?4月~6月の3か月間に血糖測定器加算及び注射針加算が3回算定されています。

算定例② 2か月分ずつ処方した場合

それでは4月1日、6月1日、8月1日に2か月分ずつ処方した場合どうなるでしょうか?

受診月診察:在宅自己注射指導管理
   ・インスリン製剤(60日分)
   ・血糖測定用センサーチップ(60日分)
   ・注入器用注射針(60日分)
4月1日算定:在宅自己注射指導管理料
   ・インスリン製剤(60日分)
   ・血糖測定器加算_2回(4月、5月分)
   ・注入器用注射針加算_2回(4月、5月分)
6月1日算定:在宅自己注射指導管理料
   ・インスリン製剤(60日分)
   ・血糖測定器加算_1回
   ・注入器用注射針加算_1回
8月1日算定:在宅自己注射指導管理料
   ・インスリン製剤(60日分)
   ・血糖測定器加算_2回(7月、8月分)
   ・注入器用注射針加算_2回(7月、8月分)
算定例②2か月分ずつ処方した場合

まとめ

今回、最近よく質問される内容を2つまとめてみました。

一つ目の「導入までに十分に教育期間をとる」というルールは、案外気付かずに初診から算定してしまうケースがあると思いますので、コメントで対応し査定されないようにしましょう。

また、二つ目の「3か月に3回」の算定ルールについては、実際に算定漏れや誤請求が起こりやすい事例です。算定例①では、6月に「5月分と6月分」まとめて2回分を請求することにより、もれなく算定ができます。算定例②では、6月分も2回算定したくなりますが、そうすると3か月に3回のルールからはみ出した1回分が査定されることになります。

他にも導入期加算のルールや外来受診時等の注射の算定、衛生材料の支給等に関するルールなどもありますので、診療報酬点数表等で確認してみましょう。

<参考資料>
〇診療報酬点数早見表_在宅医療_在宅自己注射指導管理料(C101)及び加算(C150,C151,C153)

2023年5月15日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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