居宅療養管理指導を始めませんか?

長 幸美

医療介護あれこれ

在宅医療を実施されている先生方の中で、「居宅療養管理指導」(介護保険で請求する場合は「居宅療養管理指導費」を算定)を実施されていない先生方が、案外多いのですね。せっかく訪問診療を行い、療養指導も行われ、ケアマネジャーさんにも情報提供等を行われているのに、もったいないなあ~と思います。

そのような先生方に、居宅療養管理指導を始めるノウハウ、こっそり教えます(笑)。

居宅療養管理指導とは・・・?

在宅医療(訪問診療等)を行うにあたっては、医師が訪問診療を行ったときに、患者さんやそのご家族に対し、診察のほかに、療養上の注意事項や生活のアドバイスを行っていきます。

要介護状態となった場合でも、利用者が可能な限り居宅で、有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士又は歯科衛生士等が、通院が困難な利用者(管理栄養士及び歯科衛生士等については通院または通所が困難な利用者)の居宅を訪問して、心身の状況、置かれている環境等を把握し、それらを踏まえて療養上の管理及び指導を行うことにより、その者の療養生活の質の向上を図るもの。

厚生労働省/社会保障審議会・介護給付費分科会(R5.7.24)資料より

各職種別の指導の概要

居宅療養管理指導をおこなえるのは、病院、診療所、薬局等です。
薬局の薬剤師さんや、管理栄養士がいない診療所等の場合、調剤薬局の薬剤師に依頼し在宅での服薬状況を確認してもらうことや、栄養ケアステーションの管理栄養士さんに依頼して訪問栄養指導等を行ってもらうことも可能です。

医師または歯科医師・計画的かつ継続的な医学的管理又は歯科医学的管理に基づいて実施
・ 居宅介護支援事業者に対する、居宅サービス計画の策定等に必要な情報提供
・ 居宅要介護者や家族等に対する、居宅サービスを利用する上での留意点や
 介護方法等についての指導及び助言
・訪問診療又は往診を行った日に限る
薬剤師・医師又は歯科医師の指示に基づいて実施される薬学的な管理及び指導
・居宅介護支援事業者に対する、居宅サービス計画の策定等に必要な情報提供
管理栄養士・計画的な医学的管理を行っている医師の指示に基づき、栄養管理に係る情報
 提供及び指導又は助言を30分以上行う
歯科衛生士等・訪問歯科診療を行った歯科医師の指示及びその歯科医師の策定した訪問指導
 計画に基づいて実施される口腔内や有床義歯の清掃又は摂食・嚥下機能に関
 する実地指導を利用者に対して1対1で20分以上行う。
厚生労働省/社会保障審議会・介護給付費分科会(R5.7.24)資料より

介護報酬の請求単位は職種ごとに金額や算定回数が変わっていますので、参考までに添付します。

厚生労働省/社会保障審議会・介護給付費分科会(R5.7.24)資料より
 注)この一覧表は「令和3年度介護報酬改定による報酬」です(令和5年9月12日確認)

なぜ、居宅療養管理指導が必要か?

「在宅時医学総合管理料を算定しているから、介護保険への請求はしていない」といわれる先生がおられます。介護保険への請求になるため面倒だと判断されている先生もおられます。
しかし、お聞きしてみると、どの先生もケアマネジャーさんへの情報提供や連携はなさっていて、相談も受けておられる状況があり、もったいないなあと思います。

在宅時医学総合管理料は、在宅療養中の患者さんの全身状態を総合的に管理することを評価するものであり、通院が困難であること、患者の同意を得て、個別の患者ごとの総合的な在宅療養計画を作成して、定期的な訪問診療を行っている場合に算定が可能です。

一方、居宅療養管理指導も同じように見えるのですが、居宅介護支援事業所・・・つまりケアマネジャーさんへの情報提供が条件となっています。医療的な観点から在宅での生活を支援していくためには、医療と介護の連携は不可欠と言えますから、生活支援としては大事な項目だといえるでしょう。

治す医療から「治し支える医療」へ

超高齢化社会が進み通院するとしても・・靴を履くことも難しくなり、細かい段差やわずかな勾配にもよろめき、車に乗せるのも一苦労・・・そんな状態になると、医療者が訪問してくれて(訪問診療や訪問看護など)住み慣れた地域での生活を支えてくれる存在がとてもありがたく・・・
私も認知症の父の介護をしているときには本当に助かりました。
もし、居宅療養管理指導をお願いしていなければ、訪問診療後にケアマネジャーや訪問看護師、訪問介護や通所介護の方、そして調剤薬局さんまで自分で連絡をし、調整しないといけない状況だったかもしれません。
お薬もカリカリ食べてしまうようになり、カプセルが飲めなくなってきて、剤型も薬剤師さんから提案して変えてもらったこともあります。
負担金を気にする先生やケアマネジャーさんもありますが、患者家族にとっても、それだけのメリットはあると思います。しかし、これらの職種の人たちに居宅療養管理指導の指示を出すのは医師しかできない行為です。かかりつけ医の指示がなければできないという点も重要ですので是非一度算定に向けてお考えいただきたいと思います。

これからさらに高齢化は進んでいくと推測され、地域の中での生活を支えていくことが必要になってくるでしょう。医療と介護はそれぞれに連携し、この仕組みを使って多職種で地域を支えていくということがとても大事になってきます。ぜひ「かかりつけ機能」を担う先生方には知っていただき、活用していただきたい項目です。

<参考資料>
■居宅療養管理指導について・・・社会保障審議会介護給付費分科会(令和5年7月24日資料)

2023年10月23日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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