訪問診療と往診①~生活を支える~
長 幸美
医業経営支援地域包括ケアシステムの中では、かかりつけ医が推奨され、生活を支える医療の提供について様々に議論されています。今回は在宅医療の基本でもある、訪問診療と往診料について整理していきましょう!
目次
往診とは・・・?
往診料は、「患者又は家族等患者の看護等に当たる者が、保険医療機関に対し電話等で直接往診を求め、当該保険医療機関の医師が往診の必要性を認めた場合に、可及的速やかに患家に赴き診療を行った場合に算定できるものであり、定期的ないし計画的に患家又は他の保険医療機関に赴いて診療を行った場合には算定できない。」と通知の中に定められています。
つまり、外来まで受診に来ることが出来ず、患者やその家族の求めに応じて患者さんの自宅に医師が訪問し診療することに対し、算定できるものです。従って、緊急であることが多く、時間外や休日、深夜の加算の算定はもちろんですが、標榜時間内(概ね午前8時から午後1時まで)であっても、緊急で外来診療を止めて訪問した場合は「緊急往診加算」が算定できます。
なお算定は、往診料+初診料・再診料の算定となります。
緊急に行う往診・・・
これは患者やその家族の訴えにより、速やかに往診しなければならないと判断した場合をいい、具体的には、急性心筋梗塞、脳血管障害、急性腹症等が予測される場合があります。15歳未満の小児については、これに加えて低体温、けいれん、意識障害、急性呼吸不全等も該当します。また、医学的に終末期であると考えられる患者については、緊急往診加算を算定できるものとされていますので、留意が必要ですね。
訪問診療とは・・・?
一方訪問診療はどういうものかというと、「在宅で療養を行っている患者であって通院が困難なものに対して、当該患者の同意を得て、計画的な医学管理の下に定期的に訪問して診療を行った場合」と規定されています。
在宅での療養を行っている患者とは?
在宅での生活を行っている患者・・・つまり、「保険医療機関、介護老人保健施設又は介護医療院で療養を行っている患者以外の患者をいうこと」とされています。給付調整の中で規定されている場合を除き、特別養護老人ホーム等医師の配置が義務付けられている施設に入所している患者については算定の対象とされていません。これは利用される方のお住いの場をよく把握しておく必要があります。
例外規定もありますので、留意が必要ですね。
訪問時間による加算は?
訪問診療については、基本的な考え方の中に、「計画的な医学管理のもとに定期的に訪問する」とありますので、仮にその訪問の時間を早朝や夜間、休日に設定していても、それらに対し時間外等の加算はありません。緊急性がない為加算の算定はできないことが主な理由です。
なお、訪問診療料には、「訪問する」という費用と「診察する」という費用が含まれていますので、往診料のように初再診料を算定することはできません。
また、「計画的な医学管理」と「同意」が必要ですので、「初めまして(初診)」のときから「訪問診療料」を算定することはできないことにも留意してください。
かかりつけ機能について
訪問診療を考える中で、この「かかりつけ」という機能を考えずに話をすすめることはできません。
近年の改定で「かかりつけ機能」について話題となることが多いと思います。私のコラムでも以前かかりつけ機能について書いた記事があります。重複するところもありますが、今一度整理しておきましょう。
かかりつけ機能とは・・・?
「かかりつけ医」の定義は、①健康に関することを何でも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して②必要な時には専門医・専門医療機関を紹介してくれる、③身近で頼りになる地域医療・保健・福祉を担う総合的な能力を有する医師であるとされています。(日本医師会ホームページより抜粋)
具体的に言うと、日常的な体調の変化を相談したり、年齢に関係なく家族のことも相談できるお医者さん・・・健康診断どうしよう?予防接種は?最近食欲がない、赤ちゃんがミルクを飲まない・・・等と様々な相談ができる医師ということになります。
ご興味がおありの方は、日本医師会「国民の皆様へ」をご覧ください。
かかりつけ医は患者さんが決めるもの?
かかりつけ医は、患者さんの自由な意思により選択されます。このため、患者さんとの信頼関係がとても大事になります。
また、診療報酬では、この「かかりつけ医」の機能を有する医療機関に対し、在宅医療において評価(加算)がついています。いわゆる「機能強化加算」や「地域包括診療料・加算」「小児かかりつけ診療料」などです。この中に訪問診療に付随する医学管理料(在宅時医学総合管理料)も含まれます。これらは、医療機関が誰でも算定できるものではなくて、施設基準があり、地方厚生局に届け出をしている医療機関が算定できるものとされています。
これらの項目の要件の中にわざわざ「健康管理の相談」に応じることや、「医薬品の把握」「緊急時対応」などの他、「予防接種にかかる相談に対応すること」や「院内掲示による周知」なども記載されています。さらに、「警察医との協力」や「地域ケア会議への出席」「乳幼児健診の実施」なども記載があり、年齢には関係なく、いわゆる患者さんの相談をうけ、信頼関係を築くことを求められているように思います。
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)の 2 在宅患者訪問診療料2
医療機関が1か所ですべてをまかなうことはできませんから、主たるかかりつけ医からの相談で対応することについても点数化されています。例えば、内科の先生が訪問診療を行っている中で眼科や皮膚科など、専門外の先生の診療が必要で訪問してもらう場合などに算定するものです。
在宅療養支援診療所・病院
ここで忘れてはいけないものが、「在宅療養支援診療所・病院」です。
在宅療養支援診療所・病院とは・・・?
在宅療養をされる方のために、その地域で主たる責任をもって診療に当たる診療所・病院のことです。地方厚生局に届け出て受理されると、在宅時の診療報酬が高く設定されています。
基本要件としては、「24時間連絡を受ける体制の確保」「24時間の往診体制」「24時間の訪問看護体制」「緊急時の入院体制」「連携する医療機関への情報提供」「看取り数の報告」「適切な意思決定支援にかかる指針の作成」などがありますが、自院ですべてを満たすか、連携先と一緒に満たすか、により3段階に区分されています。在宅療養支援診療所・病院についてはまたの機会に触れていきたいと思いますが、在宅を行うための機能を持った医療機関には一定の基準があり、機能を強化することにより高く評価されているということは知っててください。
<参考:在宅療養支援診療所の施設基準(抜粋)>
在宅療養支援診療所1 (機能強化型/単独) | 在宅療養支援診療所2 (機能強化型/連携) | 在宅療養支援診療所3 | |
在宅担当医師 | 常勤3名 | 連携機関内で3名以上 | 1名 |
24時間体制(医師) | 連絡・往診可能体制 | 連絡・往診可能体制 | 連絡・往診可能体制 |
24時間訪問看護 | 訪問看護ステーション との連携体制でよい | 訪問看護ステーション との連携体制でよい | 訪問看護ステーション との連携体制でよい |
緊急入院 | 有床診療所は自院で 無床診療所は他院との 連携で可能 | 他院との連携可能 | 他院との連携可能 |
実績① 緊急往診 | 10件/年 | 10件/年 ※連携で可能 但し、自院4件/年 | 報告のみ |
実績② 看取り又は 15歳未満の(準)超重症 児に対する在宅でも可能 | 4件/年 | 4件/年 ※連携で可能 但し、自院2件/年 | 報告のみ |
診療所・病院に関しても、「3」の基準は比較的取りやすいと思いますし、「2連携強化型」は病院の場合は中心となり周辺の診療所と一緒に地域を見ていただけるといいかなと思います。1「1単独許可型」は自前である程度チームを結成できるだけの人員がいないと、病院でも難しいかなと思います。
また、実績値が必要になりますので、毎月の統計をしっかりと見ていく必要がありますね。
まとめ
さて、今日のポイントは「往診」と「訪問診療」は違うものだということです。
合わせて付属する事柄を説明していますが、この「往診」と「訪問診療」については、その違いをしっかりと把握して、使い分けるようにしておきましょう。
「往診」は、患者さんやそのご家族さまから依頼を受けて(求められて)、訪問して診療を行う場合。急ぎで対応が必要な場合が多いのです。そのために緊急対応の加算も設けられています。
そして「訪問診療」は医師が通院が困難だと判断した患者の元に患者の同意を得て計画的・定期的に訪問して医学管理を行う場合。計画的な訪問ゆえに時間外等の緊急時における加算は設けられていません。定期的・計画的な訪問から外れた場合は「往診」になるから・・・注意していきましょう!
同じ訪問するという意味合いにおいても、別々のものであるということは区別しておく必要があります。次回は、ケースに応じてどのような算定になるかを見ていきましょう。
2023年8月16日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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