医療機関における電話応対について②~事例編~
長 幸美
医療介護あれこれ前回は電話応対での基本的なルールを学んできました。
今回は事例を通してどのような応対が良いか一緒にかんがえていきましょう!
前回を見逃した方はこちらもご覧ください ⇒⇒⇒ 電話応対①~基本編~
目次
事例①/相手の電話が聴き取りにくい
雑音が多かったり、携帯の電波の状況でとぎれとぎれになってしまったり・・・よくありますよね。なかには、声が出ていなくて聴き取れない・・・といったこともあります。
そういう時、思わず「はあ?」って言っていませんか?
ある医療機関に電話した時に、私がどうやら途中でミュートにしてしまったらしく、受話器の向こうで、「はあ? もしも~し、聞こえないんですけど~。あれ~?どうなってんの?」といわれたことがあります。こちらには聞こえていなくても、相手様にはよく聞こえていることもあります。
このような場合でも、丁寧に聞き返すことが必要ですね。
「恐れ入りますが、お電話が遠いようでございます」「電波の状況が悪いようでございます」と丁寧に断り「もう一度仰っていただけますか?」「もう一度お伺いしてよろしいでしょうか?」と聞き返すようにしましょう!
~その①「私の名前は上げられませんぜ!」
お名前の確認をしたいときに、「お名前頂戴してもよろしいでしょうか?」と言っていませんか?
私が勤務していた事務長が、よく、「いや~なぜあなたに私の名前をあげないといけないの?」「あなたが欲しいといっても、私の名前はあげられませんぜ」とよく仰っていました。丁寧に言おうとしているのはわかりますが、とてもおかしな日本語になっています。注意しましょうね。
「恐れ入りますが、もう一度お名前を伺ってよろしいでしょうか」「もう一度お聞きしてもよろしいでしょうか?」とお尋ねするようにしましょう。
~その②「申し訳ないと思っているんだったら何度も聞かないで!」
何かと「申し訳ございません」「すみません」を連発する方がいらっしゃいます。何度も聞いたり、書かせたり申し訳ないなあ・・・という気持ちの表れでしょうが、頻繁に謝られても、何となくいい気持ちはしないものです。クッション言葉を多用することによって、逆に馬鹿にされているように感じる方も多数いらっしゃいます。場面に応じて使い分けるようにしましょう。
何度も同じことをしてもらう(書いてもらったり聞いたりする)場合でしたら、「恐れ入りますが」「何度もお手数ですが」という方がすっきりとしてよいですね。
事例②/電話が途中で切れてしまった!
携帯電話の電波状況によって、話をしている途中に電話が切れてしまうことがよく起こります。
また、新人の時や電話機の操作になれていないときに、保留と間違えて電話を切ってしまうことも多々あります。私も新人時代によく操作を間違えて叱られた記憶があります。
このような場合は、原則として、電話をかけた側からかけ直すのがマナーです。例えこちらのミスでなくても、「先ほどは失礼しました」「電話が切れてしまい申し訳ありません」とお詫びの言葉を一言添えましょう!
事例③/電話の取次ぎ
病院時代に、新入職員が入ってきて、比較的叱られることが多いのがこの「電話の取次ぎ」です。
院内のそれぞれの部門がわからないまま、右往左往してしまい、相手様からも職員からも怒られる・・・というような経験がおありになるのではないでしょうか?
電話をかけてこられた相手様をまずは確認すること、そして、院内の誰宛の要件なのかを確認することが大事です。そして院内のルールです。患者さんからの相談の電話であれば医師につなぐ場合と看護師さんにつなぐ場合があると思いますので、それぞれの医療機関でこの取次のルールは確認するようにしましょう。
~その① 患者さんの家族編
「○○△△です」「○○△△の家族です」と言って病状を聞かれたり、病名を聞かれたりすることはありませんか?時に「入院してませんか?」「何の検査をするんですか?」「治るんですか?」と聞かれる場合もあります。このような場合、どう対応されているでしょうか?
電話では、本人確認や本人の意向を確認することが難しいので、折り返しにしてご本人やご家族様の意向を確認することも必要だと思います。私も病院時代に兄弟仲が悪く疎遠になっている方からの電話で後でもめた経験があります。遠い親戚という方からの電話も用心したほうが良いですね。病院としてどのように対応するかを決めていて、ご本人様から電話してもらうようにお伝えするようにしていました。
~その②「とにかく代われ」編
大学病院の医局を語って医師の名前を聞き出そうとしたり、「とにかく代われ!」と口汚く命令する方もあります。よくお付き合いのある病院名や薬剤や医療材料の卸さんや医療機器のメーカーの名前をかたってつないでもらおうとするような悪質な営業もあります。その手にのってはいけません!
このような方の場合は、折り返しの電話にして、お付き合いのある病院や卸さん等の代表電話に電話をして確認するようにするとよいでしょう!
本当に医局の先生だったり、卸さんやメーカーさんの営業の方だった場合は、事情(悪質な営業に悩まされている旨)を説明し、丁重にお詫びをして医師に速やかにつなげば問題にはなりません。
事例④/残念な電話
様々な電話を受けていく中で、とても残念に思うケースもあります。皆さんも経験があるのではないでしょうか? その一つひとつは皆さんが反面教師として私だったらどんな対応してもらいたいかな?と考え、同僚の方と話をするようにしてみてください。
~その① 間違い電話
病院宛にかかってくる電話で案外多い「間違い電話」。全く違う企業さんの電話だったり、個人の家にかけているつもりの方だったり、いろいろだと思います。
ところが・・・間違いだと気づいたとたん、
「え~、違うって!」 ガチャン
「ウッソ~?」 ガチャン
「ヤダ~また同じところにかかった!」ガチャン
いきなり切られることありませんか? 好きで間違い電話をかけてこられたわけではないと思いますが、とても残念だなあと思います。
また、同じことをあなた自身していませんか?
「違います!!」ガチャン
「どこにかけてるんですか?」ガチャン ・・・なんてね(笑)
電話番号はかける前に確認し、間違えてかけてしまった場合は、丁寧にお詫びし、かけた番号を相手に確認してみましょう。二度同じ間違い電話をかけない工夫です。
~その② 取次ぎを依頼したら、待てど暮らせど・・・
ある医療機関に電話をかけ、事務長に取り次いでもらうようにお願いしました。すると・・・
最初、3、4回は探しているんだなあ・・・という音がしていましたが、そのあと保留音が流れるだけで、3分経ち、5分経ち・・・しびれを切らして電話を切り、かけ直しました。すると、同じ人が出て、「事務長探してるんですけど、いないんですよね~。」「・・・ん!」
どうやらしびれを切らして相手が電話を切るのを待っていたようでした。
皆さんの医療機関でこのようなことはありませんか?
電話の取次ぎでは、「長く待たせない」というのが大原則です。
私は接遇研修の時に、目をつぶって、取次電話を待っている・・・という想定で模擬体験をしてもらいます。なかには1分以上待てる方もありますが、早い方では、10秒、多くの方は30秒前後で「待てない!」と手が上がります。研修の時でもその状態ですから、日常的な場面ではどれほどイライラして待っているか、想像できますよね。
30秒だと、だいたい2ヵ所程度探すくらいの時間です。ですので、2~3か所探してみて不在であれば、折り返し、若しくは伝言をお聞きするようにしましょう。
~その③ 終わりよければすべてよし
電話が終わった時、皆さんは受話器をどのようにおいていますか?
ある医療機関に電話をかけたときに、相手の方の口調や話のテンポ、敬語の使い方など、とても素敵な対応をしてくださいました。要件が終わり、「何かご不明な点はございませんか?」と聞かれ、「丁寧な対応ありがとうございます」と申し上げたのですが・・・。
「いえ、では失礼いたします」というや否や、ガチャン!
別の時に別の医療機関でのことです。予約の変更だったのですが、少々面倒なこと(2科受診で検査もあり)をお願いしてしまい、担当の方はおそらく汗をかきながら対応してくださったと思います。
ずいぶん待たされたし、電話をたらいまわしにされ、15分ほどかかって予約の変更が無事に終わりました。「面倒なことをお願いして申し訳なかったですね」と声をかけたところ、
「いえ、こちらこそ不慣れな対応で大変お時間をとらせてしまい申し訳ございませんでした。実は別の部署から応援に来ていて、本来ならもっとスムーズにいくはずでしたが、もたもたしてしまい、ご迷惑をおかけしました。何かありましたら、○○と申します、ご連絡いただければと思います。では、お大事になさいませ」・・・。
はじめの事例は途中の対応はとても良かったのですが、最後に受話器をたたきつけたのか、というような「ガチャン!」具合にびっくりし、残念な印象しか残りませんでした。
一方二つ目の事例では、途中イライラしていたことが、ウソのように、さわやかな気持ちで電話を終わることが出来たのです。まさしく、終わりよければすべてよし。
院長にどのように報告したのかはご想像にお任せします。
まとめ
電話の応対について、実際の応対からいくつか事例を記載しています。どの事例も、医療機関であればあり得る内容だと思います。皆さんの中で、ひとつの事例として共有され、自院の電話応対の時の参考にしていただけると幸いに思います。
2023年9月15日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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