Q&Aより「他の医療機関撮影の読影は算定できますか?」
長 幸美
医療介護あれこれ他の医療機関からの紹介の時に、撮影されたフィルムやCDを持参される患者さんがあり、時々、「他の医療機関でのCDを持ってくる患者さんが多いけれど、これって見ても何にも取れないよね~」ということを聞かれることがあります。実は算定できる項目があるのですが、よく知られていない項目でもあり、算定漏れも多くみられます。
また、診断料を算定しているけれど、査定されるよ・・・というお声も聴きます。つまり、算定漏れも多いけれど、間違えた算定も多い項目でもあります。今回はこの算定ルールを整理してみましょう。
他の医療機関の画像データ等を診断(読影)して算定できる項目
他の医療機関で実施した画像診断や検査などの中で、持ってこられた画像等を診断することを「読影」と言います。「読影」することにより算定できる場合が以下の5項目あります。
他医療機関での画像診断①CT及びMRI
他医療機関で撮影したコンピュータ画像撮影のフィルムについて診断を行った場合、初診料を算定した日に限り、コンピューター断層診断料(450点)を算定できます。
他医療機関での画像診断②単純撮影等
初診・再診にかかわらず、撮影部位および撮影方法別に1回、「診断料」が算定できます。
撮影方法別ということは、単純撮影、特殊撮影、造影剤使用撮影または乳房撮影を指し、アナログ撮影またはデジタル撮影の別は問わない、とされています。例えば、胸部単純写真と断層像についてであれば、2回として算定できます。
ただし、一つの撮影方法については撮影回数、写真枚数にかかわらず1回となります。
他医療機関での内視鏡写真を診断した場合
内視鏡検査の通則3に「当該保険医療機関以外の医療機関で撮影した内視鏡写真について診断を行った場合は1回につき70点とする」と記載されています。この場合、事務連絡の中で、「A000初診料」を算定した日に限り算定できる、とあります。これはA000初診料の注5「2つ目の診療科にかかる初診料」の場合にも算定できますので、留意しましょう。
他医療機関での検査データによる診断した場合
上記「画像診断」および「内視鏡写真診断」の他、心電図、負荷心電図、脳波検査については、他医療機関からの持参情報により診断した場合、算定が可能です。
①心電図・負荷心電図
D208_心電図の注では、「当該保険医療機関以外の医療機関で描写した心電図について診断を行った場合は 、1回につき70点とする」と記載されています。ただし、事務連絡の中に、「患者が当該傷病につき当該医療機関で受診していない場合は算定できない。」とも記載されていますので、注意が必要です。
また、「当該保険医療機関以外の医療機関で描写した検査について診断を行った場合の算定については、2回目以降においても 100 分の 90 の算定としない」・・・つまり、この診断料については90/100の低減はしなくてよいということです。
D209負荷心電図においても同様の考え方ですので留意しましょう。
②脳波検査(区分番号D235_注2)
D235脳波検査_注2「当該保険医療機関以外の医療機関で描写した脳波について診断を行った場合は 、1回につき70点とする」とされています。
画像診断の設備がない為、他の医療機関に依頼して撮影してもらう場合
画像診断など、自院に検査・画像診断の設備(医療機器等)がない場合、他の医療機関にお願いして画像診断や検査等をお願いする場合があります。この場合の算定方法は2通りあります。
一つ目は、検査・画像診断だけではなく、その判読も含めてお願いする場合です。この場合は、依頼を受けた医療機関では、初・再診料、実施した検査・画像診断等、及び診療情報提供料(Ⅰ)算定し、診断結果等を添えて紹介元の医療機関にお返しします。
そして、2つ目に検査・画像診断の設備のみを提供し、検査・画像診断のみ行う場合です。この場合は、双方の医療機関で委託契約を結び、依頼した医療機関で保険請求を行い、委託され検査・画像診断を行った医療機関は、依頼元の医療機関から、検査・画像診断の実施料を受け取ります。
この場合の算定は、弊社の別のコラムでも記載していますので、ご確認ください。
画診共同~画診共同~医療機器の共同利用をしていますか?
返戻・査定の事例より
ほとんどの査定事例は上記の説明文書を読んでいただけると解決するのではないかと思いますが、いくつか事例としてご紹介したいと思います。
再診時に持参された単純撮影およびMRIの読影をして、査定された事例
他の医療機関で、撮影された写真を診断しているので、①写真診断料70点と②コンピュータ画像診断料450点を算定し、②コンピュータ画像診断料が査定されたケースです。
算定ルールの中に、「他医療機関で撮影したコンピュータ画像撮影のフィルムについて診断を行った場合、初診料を算定した日に限り、コンピューター断層診断料(450点)を算定できる」とありますので、今回、再診料算定時には算定ができないと判断できます。留意しましょう。
他の医療機関で受けた内視鏡の写真により診断して、査定された事例
一般内科及び消化器内科を標榜している医療機関です。当院で通院中の糖尿病の患者が、大腸がん検診でポリープが見つかり、その際撮影された写真を持参し、ポリープ切除術を施行しました。内視鏡検査の通則に「写真診断料70点」が算定できるとありましたので、算定し査定されたケースです。
これも、事務連絡の中に、「A000初診料を算定した日に限り算定できる」とありますので、留意しましょう。
整形外科の術前検査のため、他の医療機関で撮影した心電図を読影し、査定された事例
当院は病床を持たない為、大きな手術は近隣の連携医療機関に依頼しクリニックの院長が執刀する予定で内科の医師から心電図検査の結果をもらい読影し、診断料70点を算定し査定されました。「術前検査として読影」とコメントをつけておられたようですが、事務連絡の中に「患者が当該傷病につき当該医療機関で受診していない場合は算定できない。」とも記載されています。このため査定されたものと判断されます。また、連携先の医療機関で術前検査として手術前の評価を依頼されたほうがよかったのかもしれません。
まとめ
診療報酬点数表には、告示・・・つまり点数がかかれたものの他、事務連絡の中にも算定におけるルールが記載されているケースが多いので、「注」だけでなく、「通知」の部分もしっかりと呼んで、算定要件を確認するようにしましょう!
2023年11月28日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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