整形外科の処置について③~簡単な骨折の処置~

長 幸美

医療介護あれこれ

整形外科の処置シリーズの第3弾。今回は、簡単な骨折の処置についてみていきたいと思います。

 ※整形外科の処置シリーズを見逃した方はこちらからご覧ください。
    整形外科の処置について①~痛みに対する処置~ ⇒こちら
    整形外科の処置について②~リハビリテーション~ ⇒こちら

骨折とは?

「骨折」とは読んで字のごとく、「骨が折れる」と書きますが、実は小さなヒビから開放骨折といって命にかかわるような重症の骨折まであり、その状態によって治療法が異なります。
骨折と一言でいっても、その折れ方により、算定の方法が様々に違います。先生方の医療行為をしっかりと診療報酬(収入)に替えていくためにもまずはどのような「骨折の種類」があるのか、骨折の分類を整理しておきましょう!

開放骨折(複雑骨折)

事故等で皮膚や軟部組織(筋肉など)が破れその傷口から折れた骨が飛び出した状態で、傷口が泥や細菌で汚染されていることが多いのが特徴です。観血的な手術が必要です。

皮下骨折(単純骨折)

骨折部位の皮膚が破れていない状態で、閉鎖骨折ともいいます。

完全骨折

骨が途中で完全に折れている状態。転位といって、骨がずれていることがありますので、そのような場合は手術をしてプレートやボルトで固定することになります。

不全骨折

骨にヒビが入った状態のもの。部位や程度によって、創部固定帯固定やギプスによる安静、徒手整復や牽引によりずれをもとの位置に戻し、骨接合を待つ場合もあります。

その他、骨折の原因による分類

外傷性骨折・・・一時的に外からの強い力が加わって生じる骨折です。

疲労骨折・・・過度のスポーツなどによって集中して繰り返し力が加わり、小さなヒビから徐々に大きくなって生じる骨折です。

病的骨折・・・もともとある病気等が原因となり、通常では骨折が起こるとは考えられない軽微な力によって生じた骨折です。

骨折の処置

今回のテーマである「簡単な骨折の処置」とは、手術を伴わなくてもよい程度の骨折・・・つまり、原因はどうであれ、ヒビが入った程度の軽度の骨折の場合の処置・・・と考えていただいてよいと思います。

骨は再生能力が高い組織の一つといわれています。適切な治療をおこなえば、骨折後も多くの場合は正常な機能を取り戻します。その適切な処置の一つが「固定」することです。キルシュナー鋼線等のワイヤーによる固定やプレート・ボルトによる固定術が行われますが、これらは手術の項目となります。

今回見ていきたいのは、診療区分40_処置の項目にあるものです。算定漏れや誤請求が多い項目ですので、一緒に見ていきましょう!

胸椎・腰椎圧迫骨折

J119-2「腰部又は胸部固定帯固定(1日につき)35点」+J200「腰部、胸部又は頸部固定帯加算(初回のみ)170点」で算定します。ここでいう「固定帯」とは、従来、頭部・頸部・躯幹等固定用伸縮性包帯として扱われてきたもののうち、簡易なコルセット状のものをいう、と定義されています。

簡易なコルセット状のものとは、バストバンドマックスベルト頸椎カラーが該当すると考えられます。固定に使用したコルセット代は、サイズ等に関わらず、「腰部、胸部又は頸部固定帯加算」で算定します。自費では算定できませんので、注意しましょう!

肋骨骨折

バストバンド等を用いて固定した場合は、上記「胸椎・腰椎圧迫骨折」と同様にJ119-2「腰部又は胸部固定帯固定(1日につき)35点」+J200「腰部、胸部又は頸部固定帯加算(初回のみ)170点」で算定します。

また徒手整復を行った場合は、J001-3「鎖骨又は肋骨骨折固定術500点」により算定します。
この場合、J200「腰部、胸部又は頸部固定帯加算」の通知に、「胸部固定帯については、肋骨骨折に対し非観血的整復術を行った後に使用した場合は、手術の所定点数に含まれており別途算定できない」とされていますので、注意しましょう!

徒手整復

徒手・・・つまり、骨折部を皮膚の上から医師の手を用いて整復する方法です。骨折に転位(ずれ)がある場合は痛みを伴うため、麻酔をして行う場合があります。整復後は、ギプス等で外固定を行います。

この場合の算定は、K044「骨折非観血的整復術」+J122「四肢ギプス包帯」により算定します。骨折部位により、診療報酬の点数が違いますので、注意しましょう!

副木固定

副木とは、石膏・グラスファイバー・アルミニウム等でできた細長い板のことで、シーネともいいます。骨折した部位にあてて、弾性包帯やテープで固定します。

プラスチックギプスを用いてシーネとして用いた場合は、J122「四肢ギプス包帯」で算定します。この場合プラスチックギプスにかかる費用が含まれますので、どのようなものを使用して固定したのか、確認をして算定するようにしましょう!

牽引(直達牽引、介達牽引)

折れてずれてしまった骨を持続的に引っ張って正常な位置に治すために行われます。重錘のついた牽引装置で、持続的に引っ張ります。これを「牽引」といいます。折れた骨が靱帯や腱、周辺の筋肉等により、徒手整復だけでは再びずれてしまう可能性がある場合(正しく整復できない場合)などに行われる処置です。

牽引には二種類あり、手術で骨にキルシュナー鋼線を刺して、馬蹄や滑車、架台等を使用して重錘をつけて直接的に引っ張る「直達牽引」と、皮膚を介して固定し、一時的に力を加えて牽引する「介達牽引」があります。リハビリ室等で、胸腰椎(脊椎)や頸椎等の牽引は「介達牽引」に該当します。

直達牽引の場合は、初日には、手術のK083「動線による直達牽引(初日、観血的に行った場合の手技料を含む)」を算定し、2日目以降はJ117「動線等による直達牽引(2日目以降、1日につき)」を算定します。詳細なルールは点数表にてご確認ください。

その他の手術療法(今回は省略します)

その他、ワイヤー等を使用して固定するピンニング、外科的に骨折の手術を行うもの(K046_骨折観血的手術)人工骨(インプラント)等を用いる手術、プレートやボルトによる固定(K046-2_観血的整復固定術)、一時的にボルト等で行う創外固定術(K046-3)などがありますが、必要に応じて手術記事を確認し、的確な保険請求を起こしていきます。請求漏れがないようにしていきましょう!

よくある質問

当社に寄せられる質問の中からいくつか紹介したいと思います。

腰椎バンドの2個目の処方は自費でしょうか?

通知(1)の中に、「本加算は、それぞれの固定帯を給付する都度算定する。」とありますので、算定は可能と考えます。間隔が短い場合など、査定対策として追加で固定帯を給付した理由を記載されている医療機関もあります。
マックスベルト等の腰椎バンドの場合でも、使用しているうちに金具が悪くなったり、へたってしまい、新しいものを処方する場合があると思います。このような場合は保険請求が可能です。

肋骨骨折の場合、「肋骨骨折固定術(500点)」と「固定帯固定加算(170点)」を算定し、C査定されました。査定された場合は自費でもらえますか?

肋骨骨折の場合の算定は基本的にJ119-2「腰部又は胸部固定帯固定(1日につき)35点」+J200「腰部、胸部又は頸部固定帯加算170点(初回のみ)」で算定します。
J001-3「鎖骨又は肋骨骨折固定術」の場合は処置の項目ではありますが、前述のとおり、肋骨骨折固定術に含まれているので、別に算定すると、重複しているとして査定されているものと思われます。

査定されたものは患者さんからもらいたくなる気持ちはわかりますが、保険請求として認められないものは、患者さんからの追加徴収はできません。自費徴収のルールの中にも、「自費徴収するものの内容と金額を掲示しておくこと」「事前に説明し同意をえること」が必要と書かれていますので、このような理由からも、査定された後・・・つまり事後に発生したものについて追加徴収することはできないと考えられます。

慢性疼痛疾患管理料を算定している場合、腰部固定帯固定加算も算定できませんよね?

答えはNoです。慢性疼痛疾患管理料やリハビリテーション、消炎鎮痛処置を算定している場合は、「腰部固定帯固定」は算定できませんが、それは、慢性疼痛疾患管理料等の中に含まれているという考え方で、併算定ができない、とされているからです。
コルセットや腰椎バンド代に当たるJ200「腰部、胸部又は頸部固定帯加算(初回のみ)170点」は算定できますので、算定漏れがないようにしましょう!

まとめ

今回、「簡単な骨折の処置」についてみてきました。
電カルになり、先生方が入力してくださるから、改めてレセコンに打ち込む作業はなくなりました。
先生や医療職の皆さんはその専門性が高い医療のプロですが、保険請求やその細かなルールに関して詳細に把握して、算定ルールに沿った入力をしていただけることは少ないと思います。
保険請求に関しては、医療事務の皆さんがプロです。
先生方の記録に則り、正しい保険請求を起こしていくためには、現場でどのような医療提供をしているか、その場合どんな算定があるのか、ということをしっかりと学んでいくことがとても大事になります。

これを機会に、処置室を除いてみませんか?
私も、処置室で、使用している物品や薬剤の話、固定の様子、診察の様子など、のぞかせてもらっていました。先生方や看護師さんもぜひ基本的なことをお話ししてもらい、コミュニケーションをとっていただけるといいなと思います。
先生方の医療行為について過不足なくしっかりと保険請求できるようにしていきましょう!

<参考資料>

■診療点数早見表 令和4年4月度版(医学通信社)
   ※処置及び手術の通則及び各項目をピックアップしています。詳細は点数表でご確認ください。
  診療区分J001-3 鎖骨又は肋骨骨折固定術
 【整形外科的処置】
  診療区分J117 鋼線による直達牽引
      J118 介達牽引
      J119 腰部又は胸部固定帯固定
 【ギプス】
  通則
  診療区分J122 四肢ギプス包帯
 【処置医療機器等加算】
  診療区分J200 腰部、胸部又は頸部固定帯固定加算
 【手術:四肢骨】・・・四肢骨を例に挙げています。関連するところをお読みください。
  診療区分K044 骨折非観血的整復術 
      K045 骨折経費的鋼線刺入固定術
      K046 骨折観血的手術
      K046-2 観血的整復固定術(インプラント周囲骨折に対するもの)
 【保険医療材料:骨格系材料】
   ※骨格系材料の部分をご確認ください。

2024年1月18日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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