令和6年度診療報酬改定~診療所への影響②整形外科~
長 幸美
医療介護あれこれ今回の改定は、「地域完結型への対応」がキーワードの一つになっています。
「リハビリテーション」についても、この地域の中での連携の観点から、見直しが行われています。
算定できる点数は何も変わらないのですが、通則の変更が行われることにより、「やらなければならないこと」が出てきました。今日はその内容を見て、整形外科のクリニックに関係する内容をみていきましょう!
目次
リハビリテーションの連携推進にかかる変更点
通所リハビリテーションや訪問リハビリテーション等の介護保険でのリハビリテーションへ移行する場合に、移行先の介護保険サービス事業所に対し、「リハビリテーション実施計画書」を提供することとされました。また、直近3月以内に目標設定等支援・管理料を算定している場合には、「目標設定等支援・管理シート」も併せて提供することとされています。
変更点①リハビリテーション計画提供料の廃止
医療機関と介護保険の訪問・通所リハビリテーション事業所のリハビリテーションに係る連携を更に推進する観点から「どんなリハビリテーションを行い、どんな状態(本人の意向も含めて)なのか」ということを情報共有することで、スムーズな生活支援が行われることを評価されたもので、これまでは、「リハビリテーション計画提供料」として、提供した場合に算定する点数がありました。その点数が削除され、介護保険への移行の際には、リハビリテーション実施計画書等を提供することが義務化されました。
介護報酬上にも「リハビリテーション実施計画書を入手し、内容を把握することを義務付ける」ことが規定され、整合性が図られています。
変更点②退院共同指導料の参加職種の追加・・・医療と介護の連携推進
退院早期に継続的に介護保険の訪問・通所リハビリテーションを提供し、在宅生活を支援する観点から、退院時共同指導料2の参加者(職種)について、介護保険によるリハビリテーションを提供する事業所の医師、理学療法士等の参加を求めることを努力義務(望ましい)とされました。
介護報酬では、退院後早期に連続的で質の高いリハビリテーションを実施する観点から、医療機関からの退院後に介護保険のリハビリテーションを行う際、リハビリテーション事業所の理学療法士等が、医療機関の退院前カンファレンスに参加し、共同指導を行ったことを評価する退院時共同指導加算(600単位/回)が新設されています。
変更点③共生型サービスとの連携強化
医療保険での「疾患別リハビリテーション」と介護保険や障害福祉サービスでの自立訓練等の共生型サービス等について、同時に実施する場合の施設基準等の緩和も実施されています。
これまでは、医療保険の「疾患別リハビリテーション」と介護保険の短時間の「通所リハビリテーション」は時間帯や医療のリハビリを受ける方への配慮をしつつ、実施することが可能とされていましたし、介護保険サービスと障害福祉サービスについても、一緒にサービス提供ができ移行がスムーズにできるようにされていました。
今回の改定では、医療保険の疾患別リハビリテーションと障害福祉サービスの自立訓練(機能訓練)を同時に実施する場合について、疾患別リハビリテーション料の施設基準を緩和されています。
疾患別リハビリテーションのうち「脳血管疾患リハビリテーション」「廃用症候群リハビリテーション」「運動器リハビリテーション」「障害児(者)リハビリテーション」が対象となり、これらに従事する専従の従事者が、通所リハビリテーションや自立訓練(機能訓練)に従事してもよい、という人的要件を緩和したものです。該当する医療機関様は施設基準等の確認をするようにしましょう!
疾患別リハビリテーションの診療報酬
疾患別リハビリテーションの診療報酬の変更はありませんが、提供した従事者ごとに算定するコードを切り替える必要が出てきました。NDB・DPCデータでリハビリテーションの実態を把握できるように実施者(職種)ごとの区分が新設されています。
実施者 | |
心大血管疾患リハビリテーション(Ⅰ)、(Ⅱ) | イ 理学療法士による場合 ロ 作業療法士に寄る場合 ハ 医師による場合 二 看護師による場合 ホ 集団療法による場合 |
脳血管疾患リハビリテーション(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ) | イ 理学療法士による場合 ロ 作業療法士による場合 ハ 言語聴覚士による場合 二 医師による場合 (Ⅲのみイ~二まで以外の場合) |
廃用症候群リハビリテーション(Ⅰ)、(Ⅱ)(Ⅲ) | イ 理学療法士による場合 ロ 作業療法士による場合 ハ 言語聴覚士による場合 二 医師による場合 (Ⅲのみイ~二まで以外の場合) |
運動器リハビリテーション(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ) | イ 理学療法士による場合 ロ 作業療法士による場合 ハ 医師による場合 (Ⅲのみイ~ハまで以外の場合) |
呼吸器リハビリテーション(Ⅰ)、(Ⅱ) | イ 理学療法士による場合 ロ 作業療法士による場合 ハ 言語聴覚士による場合 二 医師による場合 |
また、心大血管疾患リハビリテーションでは、「集団療法による場合」が新たに認められております。
対象疾患の追加
それぞれの疾患別リハビリテーションには、対象疾患がありますが、今回変更(追加)になったものを確認しておきたいと思います。詳細は「別表第九 厚生労働大臣が定める疾患」をご確認ください。
対象患者の追加 (赤字が追加された部分) | |
心大血管疾患リハビリテーション | 慢性心不全、末梢動脈閉塞性疾患その他の慢性の心大血管 の疾患により、一定程度以上の呼吸循環機能の低下及び日常 生活能力の低下を来している患者とは、 (イ)(ロ) (略) (ハ) 肺高血圧症のうち肺動脈性肺高血圧症又は慢性血栓塞栓性 肺高血圧症であって、WHO肺高血圧症機能分類がⅠ~Ⅲ度の 状態のものをいう。 |
呼吸器リハビリテーション | 一~三 (略) 四 食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌、大腸癌、卵巣癌、膵癌 等の手術前後の呼吸機能訓練を要する患者 |
呼吸器リハビリテーションに関しては、術前の有効性に関するエビデンスが出され、その内容に基づき、大腸癌、卵巣がん、膵癌の患者が含まれていることを明確化されたものです。
急性期リハビリテーション加算の新設
これは感染対策が特に必要な感染症の患者を対象に含んで、重症者に対する早期からのリハビリテーションの提供を推進するためのものです。入院中の患者に対して、発症・手術・急性増悪から7日目または治療開始日のいずれか早い日から14日間を限度に算定できる加算が新設されました。
対象患者の要件は、以下の通りとなっています。※入院中の患者に限ります。
ア | ADLの評価であるBIが10点以下のもの。 |
イ | 認知症高齢者の日常生活自立度がランクM以上に該当するもの。 |
ウ | 以下に示す処置等が実施されているもの。 ① 動脈圧測定(動脈ライン) ② シリンジポンプの管理 ③ 中心静脈圧測定(中心静脈ライン) ④ 人工呼吸器の管理 ⑤ 輸血や血液製剤の管理 ⑥ 特殊な治療法等(CHDF、IABP、PCPS、補助人工心臓、ICP測定、ECMO) |
エ | 「A220-2」特定感染症入院医療管理加算の対象となる感染症、感染症法第6条第3項に規定する二類感染症及び同法同条第7項に規定する新型インフルエンザ等感染症の患者及び当該感染症を疑う患者。 ただし、疑似症患者については初日に限り算定する。 |
早期リハビリテーション加算は点数が△5点減ってしまいましたが、重症者に対し、リハビリテーションを提供することで、初期加算・早期リハ加算に加えて、さらに急性期リハビリテーション加算が算定できます。急性期医療を提供する医療機関さまは、施設基準を確認の上届出を出すようにしましょう。
その他の変更
リハビリテーション実施患者のうち、他の医療機関に転医又は転院に伴い他の医療機関でリハビリテーションを継続される予定であるものについて、当該患者の同意を得て、3月以内に作成したリハビリテーション実施計画書又はリハビリテーション総合実施計画書等を当該他の医療機関に対して文書により提供することが要件とされた。なお、この場合において、当該患者が直近3月以内に目標設定等支援等・管理料を算定している場合には、目標設定等支援・管理シートも併せて提供することとされています。
リハビリテーションと栄養・口腔
今回の改定で、リハビリテーションの効果を上げるためには、栄養管理(食事)がとても大事で、そのためには歯科との連携(口腔機能)が大事だとあちこちで記載されています。主には回復期リハビリテーション病棟や急性期の医療機関への入院が対象となっている(「リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算」の新設)ものが多いのですが、診療所にも関わることがあります。
通所リハビリや訪問リハビリを提供している場合は・・・
通所リハビリテーション(デイケア)や訪問リハビリテーションにおいても、リハビリテーション・機能訓練と「栄養・口腔」に関して、一体的に取り組むことにより自立支援・重度化防止を効果的に進める観点から、見直しが行われているのです。
リハビリテーションマネジメント加算(ハ)が新設され新たに評価されることとなっています。
ADLを維持し重度化予防をするためにも、リハビリテーションを効果的に実施するためにも、栄養(食事)と口腔は大事になってきますので、介護保険でも評価が高くなってきています。通所リハビリテーションや訪問リハビリテーションを実施している医療機関は合わせて確認しておきましょう!
生活を行う中で、時に入院やショートステイ等を利用し在宅での生活を続けていくことを考えると、ADLを維持して行くことがとても大事ですよね。そう考えると、リハビリテーションと栄養・口腔が医療機関の枠を超えて協働し連携していくことがとても大事だということですね!
まとめ
今回の改定では、整形外科の診療所ではリハビリテーションの評価等も大きく変化はありませんでした。しかしながら、細かなところでは、要件等が変更になっているものもあり、注意が必要です。
ウチは医療機関だから介護事業はわからない・・・といいたくなる気持ちはわかりますが、地域の方々の生活を支えていくという観点を持つと、医療機関といえども、介護保険のサービスを知っておくことはとても大事になります。特に整形外科では「リハビリテーション(ADLの維持)」という観点からも、とても重要になってきますね。
だからといって、ひとつの医療機関ですべて対応しなければならないことではありません。
それぞれに得意分野があります。
信頼できる医療機関や介護保険事業所と連携をして、医療・介護それぞれの特徴を活かしてご支援できるようにしていきましょう!
<参考資料> (確認R6.3.18)
■厚生労働省/令和6年度診療報酬改定について (特設サイトはこちら)
■厚生労働省/令和6年度診療報酬改定説明会資料は (こちら)
2024年4月22日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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