2024年賃上げについて

石井 洋

人事労務

 今回は2024年における医療機関の賃上げについて、民間エコノミストの予測や実績値を整理します。民間のエコノミストの予測では、令和6年の春闘賃上げ率の予測は、3.95%(第一生命経済研究所)、3.8%(みずほリサーチ&テクノロジーズ)。日本経済研究センター(JCER)が春闘の賃上げ率に関する36のシンクタンク・エコノミストによるまとめた予想値平均は3.85%で、内訳は定期昇給分が1.70%、ベースアップ分が2.15%となっています。なお、労働組合の連合は、今年の春闘第4回春闘の集計結果として定期昇給を含む正社員の賃上げ率を平均5.2%としました。(確認日:令和6年5月31日時点)

 このように見ていくと、令和6年度における一般業のベースアップ率は相当に高いものであることが予測されています。

 上記に対し、医療、福祉業の集計を見ると、昨年度の実績になりますが、令和5年度の1人平均賃金の改定率は1.7%(なお、令和4年度2.8%)、改定額では、3,616円という結果になっており、令和5年度での一般業と医療・福祉業界とのベースアップに関しては明確な差があったのが現状です。それを踏まえてか、今年の診療報酬改定ではベースアップ評価料という診療報酬が創設されました。ただし、このベースアップ評価料に関しては、「医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取組として、特例的な対応を行います」と特例であることを太字で強調しており、2年後の診療報酬改定にてこのベースアップ評価料がどうなるかは予断を許さない状況です。

 このベースアップ評価料も踏まえて、今年の医療機関では①ベースアップ評価料を算定するのか、②ベースアップ評価料を算定した場合の賃上げの方法、そして職員への周知方法、③ベースアップの対象外とされている事務職員の対応はどうするのか、④ベースアップ評価料を算定した場合、給与規程等の改定対応、⑤令和7年度のベースアップの有無について検討する、といった過程をたどって検討されていたかと思います。

 既に①・②・③はある程度決定・届け出の提出等を行ったかと思いますが、職員への周知・規程の改定、次年度のベースアップの在り方等を検討し、今年度のベースアップ評価料による賃金アップを踏まえた将来の賃金の在り方、基本給の設定方法・賞与の決定ルール・退職金の決定ルールも含めた人事処遇の在り方を再検討する必要がありそうです。

2024年6月3日

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