Q&Aより~オンライン診療と無診察診療

長 幸美

医療介護あれこれ

この数年コロナ禍で「対面診療」という保険診療の原則が少し曖昧になり、昨年の5月に感染症法上の区分で新型コロナウイルス感染症が5類に変更になりましたが、まだまだ電話等での診療相談やオンライン診療により投薬ができないかといった問い合わせが後を絶たない現状があるようです。

(出典/厚生労働省「オンライン診療について」ホームぺージより)

今回は、そういったお問い合わせの中から、いくつか紹介したいと思います。

事例①初診の患者さんに投薬したものが査定された・・・?

コロナ禍において「オンライン診療」により高齢者施設や治療継続の患者さん等の処方を行われていた医療機関から、「オンライン診療が査定された」という連絡がありました。もともと「オンライン診療はしない」という方針の先生でしたが、コロナ禍で治療継続のために特例を活用してオンライン診療を行われていたのです。さらに、「特定疾患の147点も査定された! どうしてだ!!」とご立腹の様子・・。

状況を詳しくお聞きしていくと・・・

実は、「情報通信機器を用いた診療にかかる基準」の施設基準を届けていなかった、ということが判明しました。コロナ禍では、特例で認められていた「オンライン診療」ですが、令和5年5月8日以降、経過措置期間を経て、特例がなくなってます。つまり施設基準の届出がないのに算定していたため、査定をされてしまったのです。

先生に今後も「オンライン診療」を継続する意向があるのであれば施設基準にある研修を受けてもらい届出を出されてはいかがかとアドバイスしました。

事例②家族から「コロナ陽性」が出たので、お薬を出してください!と要望があったが、処方してもいいものだろうか?

この事例に挙げたのは、下手をすると「無診察診療」に該当する事例です。これは家族からのお薬希望の電話ですが、この事例以外にご家族からだけでなく、訪問看護師からの電話で処方の希望があるというご相談もあります。

なぜこのような相談が増えたのかといえば、現状でコロナ禍においてインターネット等などで「簡易検査キット」が販売され、臨床用として保険収載されていない検査キットがたくさん出回っています。また、医療機関や訪問看護ステーション、介護保険施設に関しては、職員や同室の患者さんがコロナ感染になった場合の検査を行うための検査キットが配布されているところもありますそのような検査キットが手元にあるために、家族や訪問看護師、施設の職員がそれぞれの判断で、簡易検査を行い「コロナ陽性」を判断している状況が出てきています。

ご相談いただいた先生からは、「その検査がどんなものを使ったのかわからないし、診察しないと出せないよね・・・」と相談をいただいたわけですが、心配はもっともなことだと思います。他の医療機関からは、「訪問看護師が医療用キットを使って検査をした結果「コロナ陽性」が出ているので、処方してほしい」と相談があったが保険診療上問題ないか?」というご相談も、いくつか受けています。訪問看護師さんであっても、「診断」や「検査の指示」を行うことは看護師として認められていません。診療を受ける前段階で「念のために検査したら陽性だったから、受診したほうがいいですよ!」と、ご家族や本人さんに説明されるのはやぶさかではないと思いますが、「コロナ陽性だったのでお薬を出してください」はチョッと違うかなと思います。

あくまでも、診療が原則ですので「発熱外来の受診を勧めていただく」ことが大事だと思います。
「コロナ陽性」であっても、対象療法のみで重症化しない方もあり、ベースにある基礎疾患によっては重症化することもあります。また、家族や職場で常に一緒に行動している同僚が「コロナ陽性」になり、念のために受けた検査で「コロナ陽性」が出てしまった場合などで、全く無症状で経過する方もあります。この為、診療による所見と合せて、治療方針を決定し、処方等の治療を行ってもらう・・・つまり診断を受ける必要がありますね。

事例③電話による初診で投薬を行ったが、返戻された事例

今回の相談は、「情報通信機器を用いた診療にかかる基準」をクリアして届出を行っているが、「電話」相談に対し30分以上になったために「初診料」を算定し、症状に合わせて投薬して返戻された事例です。

「情報通信機器を用いた診療」は、あくまでも対面診療の代わりに「ビデオ通話」ができる機器を用いて、画面越しに診療・診断を行う、ということが原則になっています。
この為「電話による」診療では認められていません。
Zoomなり、facetimeなり、LINEなり、何らかの方法でビデオ通話ができる環境で、時間を決め診療を受けるということになります。また、緊急に検査が必要になる事例については、ビデオ通話での診療から「対面診療に切り替える」必要もあります。

受診前の相談であれば、相談内容等をホームぺージ等で明示して有料(自費)でお受けになることもなくはないでしょうが、「オンライン診療」若しくは「対面診療」による診療をお勧めするなど、適切な対応が必要ではないかと思います。

まとめ

今回この半年ほどで相談を受けた内容から、ピックアップしてご紹介しました。
こんな事例ありがちだな・・・と思われた先生方・事務員さんは、ぜひ自医療機関の対応を見直し、適切な対応を行えるようにしていきましょう!

<参考資料>  令和6年7月16日確認

■厚生労働省/オンライン診療について
  ⇒オンライン診療やそのほか遠隔診療に関する事例集(令和5年8月版)も出されています。

2024年7月19日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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