介護保険3施設~特養・老健・介護医療院どう違うの?

長 幸美

医療介護あれこれ

介護療養型病棟が令和6年度の介護報酬改定で廃止されることになり、公的保険である介護保険が使える高齢者施設は、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム/特養)介護老人保健施設(老健)、そして介護医療院の三つの施設になりました。

また、令和6年度の介護報酬改定において、介護保険施設は、施設内で対応可能な医療の範囲を超えた場合に、協力医療機関との連携の下でより適切な対応を行う体制を確保する観点から、在宅医療を担う医療機関や在宅医療を支援する地域の医療機関等と実効性のある連携体制を構築することを求められています。次の改定までの3年間「努力義務」とされ、地域の在宅医療を担う医療機関や入院医療が行える有床診療所・病院との連携体制の構築を急がなければなりません。

医療機関側としても、この介護保険3施設なんだか同じように見えているのではないでしょうか?
しかし、実際は似て非なるものなのです。
特に特養と老健がどのように違うのか、一度整理しておきましょう!

介護保険三施設の特徴

今回は介護保険を活用した施設の特徴を整理したいと思います。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム・特養)

いわゆる「特養」といわれるものです。
常時介護を必要とする高齢者で在宅での生活が困難な方が生活する施設で、介護保険制度では介護老人福祉施設、老人福祉法では特別養護老人ホームといいます。法律によって呼び方が変わるわけですね。
サービスの内容は、入浴や排泄、食事などの日常生活の世話、機能訓練、健康管理、療養上の世話などの生活全般のサービスを提供しています。治療を行う施設ではなく生活の場であることが特徴的です。

「常時介護を必要とする高齢者」で、入居要件は「要介護3以上」と制限があるのも特徴です。

介護老人保健施設(老健)

こちらは医療法人が主体となる「医療提供施設」となります。
介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すために、医師による医学的管理の下、医療サービスを提供する施設です。病院から在宅への中間施設、在宅での生活を維持するための支援を行う場合もあります。
入所中は看護・介護といったケアはもとより、作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、また、栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供します。利用者ひとりひとりの状態や目標に合わせたケアサービスを、医師をはじめとする専門スタッフが行い、夜間でも安心できる体制を整えています。あくまでも中間施設なので自宅での生活が送れるように医療と介護で支援し在宅に戻る手助けをする施設です。

対象者は、介護保険の要介護認定を受けている方のうち、病状が安定していて入院の必要がない方です。

介護医療院

介護医療院は、介護療養型病床の廃止に伴いできた比較的新しい施設形態です。
要介護者に対し、「長期療養のための医療」と「日常生活上の世話(介護)」を一体的に提供する施設です。対象者は医療的に在宅での生活維持が困難な利用者を想定しています。生活の場ですので最終的には看取り・ターミナルケア等の医療機能と、医療を提供しながらの生活の場としての機能を併せ持つものと位置付けられています。医療提供が必要な入所者ですので24時間医師の管理が求められます。

介護保険3施設比較表

ざっくりとした三施設の比較表です。前述の施設の概要と合せてみていただけると、特徴が何となくわかるのではないかと思います。医療提供度合いが高いほど医療職の配置が手厚くなるように設定されています。

介護老人福祉施設
(特別養護老人ホーム)
介護老人保健施設
(老健)
介護医療院
概要要介護者(要介護3以上)のための生活の場
、看取りの対応
在宅復帰を目指す要介護者に対し、リハビリ等を提供する施設長期療養が必要な要介護者(医療度が高い方)の施設
関連法規介護保険法
老人福祉法
介護保険法
医療法
介護保険法
医療法
設置主体社会福祉法人
地方公共団体
医療法人
社会福祉法人
地方公共団体 等
医療法人
地方公共団体
社会福祉法人 等
施設長及び管理者
の資格(要件)
施設長(要件あり)
 ・社会福祉主事
 ・社会福祉事業に2年以上従事した者 等
管理者(要件なし、常勤、原則専従)
管理者(原則医師、常勤、原則専従)管理者(医師、原則専従)
職員配置基準(抜粋)
(配置数は入所者数により)
医師(非常勤/配置医師)
生活相談員
介護職員・看護職員(3対1)
栄養士
機能訓練指導員
介護支援専門員(1名以上)
調理員、
事務員その他の職員
医師(常勤)
薬剤師
看護職員
介護職員
支援相談員
理学療法士又は作業療法士(1名以上)
管理栄養士(常勤配置努力義務)
介護支援専門員
調理員
事務員その他の従事者
Ⅰ=医師 (3人以上)
Ⅱ=医師(1人以上)
医師数は(併設型の場合違いがあります)

薬剤師
看護職員(4対1)
介護職員(4対1)
理学療法士及び作業療法士(1名以上)
介護支援専門員
医療専門職、その他
構造設備基準(抜粋)<従来型>
居室(4人以下)
 (10.65㎡/人以上)
静養室  介護職員室
食堂   看護職員室
浴室   機能訓練室
洗面設備 面談室
便所 洗濯室又は洗濯場
医務室  汚物処理室
調理室  介護材料室
事務室その他の運営上必要な設備
<ユニット型>
居室(原則個室)
 (13㎡/人以上)
共同生活室
洗面設備
便所
浴室 洗濯室又は洗濯場
医務室   汚物処理室
調理室   介護材料室
事務室その他の運営上必要な設備
療養室(4人以下): (8㎡/人以上)
診察室
機能訓練室
談話室
食堂
浴室
レクリエーション・ルーム
洗面所
便所
サービス・ステーション
調理室
洗濯室又は洗濯場
汚物処理室
病室(4床以下)
 (8㎡/人以上)
機能訓練室
談話室
食堂
浴室
厚生労働省/介護保険三施設の比較(当社編集)

診療報酬と介護報酬どちらに請求する?

介護施設別に入所者の医療を提供することについては「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合」としてあらかじめ、「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」(平成18年4月28日老老発第0428001号・保医発第0428001号)という中で決められています。
要介護被保険者等であって、特別養護老人ホーム等の入所者であるものに対する診療報酬の取扱いについては、「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」(平成18年3月31日保医発第0331002号)も併せて参照することとされています。

その中では、入所中の患者さんの状況に応じ、医療保険に請求できる範囲が規定されています。

 ※厚生労働省/「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(老老発0327第1号、保医発0327第8号/令和6年3月27日)

 ※厚生労働省/「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」の一部改正について
  (保医発0327第9号/令和6年3月27日)

上記内容を読んでいただくと分かるように医療と介護との給付調整は、3施設の種類によって大きく違います。施設内で医療提供ができるかどうか、というと点で判断が分かれるようです。特別養護老人ホームの場合は医師の配置が「非常勤」・・・つまり外部の医療機関の医師が「配置医師」として配置され、健康管理などを主に行います。
介護老人保健施設(老健)の場合は、常勤医師1名が施設内に配置されていますし、その他看護師・薬剤師・理学療法士等の医療職も配置されています。医師は24時間勤務しているわけではありません。

それぞれの介護施設で医療の提供に違いがあるため介護施設以外の医療機関で算定できる医療の請求範囲に制限があり、そのルールを決められているのです。

特養と老健どう違う?

介護保険施設の施設基準を見てきましたが、とはいえ現実どのように違うのか、外部から見ても違いがよくわからないというのが正直なところではないでしょうか?

近年の介護報酬改定をみていると、基本報酬に加えて、これらの機能をしっかりと提供できる施設には、「加算」というカタチで、評価されてきています。
特に、老健(老人保健施設)については、この加算による評価(加算型)よりも上位に「強化型」「超強化型」と評価があり、施設の入居等への実績評価に段階が設けられています。

 ※「老健の役割について」 ⇒全国老人保健施設協会作成パンフレットです。

医療機関の職員として、細かなことまで知っておく必要はないかもしれませんが、介護保険施設にどのようなものがあるか、診療報酬の算定では要介護状態にある患者さんや介護保険の施設に入所中の方々に対し算定ルールが決められていることは知っておかれたほうが良いと思います。

ぜひこの機会に、連携先の医療機関だけではなく介護施設についても学んで、実際に患者さんが来院された時には、どのような給付調整が行われるのか、算定のルールを調べる方法を知っておきましょう!

<参考資料> 確認日/令和6年10月14日

■公益社団法人全国老人保健施設協会 ⇒(こちら)
  〇老健の役割について ⇒(こちら)

■公益社団法人全国老人福祉施設協議会 ⇒(こちら) 「老施協.com」

■公益財団法人長寿科学振興財団 ⇒(こちら)
  〇特養とは ⇒(こちら)
  〇老健とは ⇒(こちら)

■※厚生労働省/「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(老老発0327第1号、保医発0327第8号/令和6年3月27日)

 ※厚生労働省/「特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて」の一部改正について
  (保医発0327第9号/令和6年3月27日)

2024年10月15日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

制作者の直近の記事

コラム一覧に戻る
お問い合わせ

PAGE TOP