令和6年度診療報酬改定(10月改定速報)~医療DX推進体制整備加算及び医療情報取得加算の見直し~

長 幸美

医療介護あれこれ

令和6年度診療報酬改定の中で、「賃上げ」とともに重要視されていた「医療DX」について、令和6年7月17日の中央社会保険協議会総会において、「個別改定項目」が議論され、同日に答申が出されました。今回はこの内容を見ていきましょう!

医療DXの流れ

医療DXとは、医療における「デジタルトランスフォーメーション」を通じたサービスの効率化や質の向上により、「保健・医療・介護の各段階(疾病の発症予防、受診、診察・治療・薬剤処方、診断書等の作成、診療報酬の請求、医療介護の連携によるケア、地域医療連携、研究開発など)において発生する情報やデータを、全体最適された基盤(クラウドなど)を通して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を図り、国民自身の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の形を変えること」と定義づけられています。

詳細は、令和6年度診療報酬改定~医療DXについて①~をご覧ください。⇒(こちら)

少子高齢化社会を乗り切っていくためには、必要不可欠なものであるとして、国力を入れているプロジェクトです。全国医療情報プラットフォームを立上げ、医療と介護そして行政の情報基盤に互換性を持たせて活用し、日本全国どこにいても情報が得られ、質の高い医療提供ができるようにしようというものです。

出典/厚生労働省「医療DXについて」ホームぺージより

今回の改定ポイント

令和6年12月2日で、保険証の新規発行がなくなります・・・つまり、マイナンバーカードに「保険証の情報」を紐づけ活用していくということが決められています。
しかしながら、マイナ保険証の利用率は、まだまだ平均で6%にも満たない状況です。

マイナ保険証を定着させるために、支援金の制度などを様々に考えられて来ていますが、なかなか進んでいないのが現状です。そこで出てきたのが、今回の10月改定項目ではないかと思うのです。

出典/中医協総会資料「医療DX推進体制整備加算及び医療情報取得加算の見直し」総-9(6.7.17)より

医療DX推進体制整備加算の見直し

「医療DX推進体制整備加算」については、マイナ保険証の利用をベースにしながら、「電子処方箋の仕組み」や「電子カルテ情報共有サービス」などを通じて、患者本人の健康や医療に関するデータに基づいたより適切な医療を受けることができるなど、オンライン資格確認のシステムは医療DXの基盤になると考えられています。

このため、令和6年の診療報酬改定では、
①オンライン資格確認の利用が一定程度以上であること・・・令和6年10月~
②「電子処方箋の導入体制」があること ・・・令和7年4月~
③「電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制があること・・・令和7年10月~
その他、マイナ保険証の利用勧奨(掲示)、マイナ保険証での情報取得する体制の整備などがありますが、上記①②③については、それぞれ経過措置が設けられ、準備する予定があれば、施設基準の届出ができる仕組みが整えられています・・つまり、診療報酬を上げますから準備・協力してくださいね・・・というような意味合いの点数だと理解できると思います。

今回の個別改定項目では、この①オンライン資格確認の利用率が明らかになり、10月以降は3月毎に検証して徐々にこの利用率のハードルを上げていき、オンライン資格確認の利用をさらに増加・加速させたいという思いがありそうです。

新点数(令和6年10月~)

これまで、医科(8点)、歯科(6点)だったものが、マイナ保険証の利用割合に応じて3段階に分けられ、必要な実績として、それぞれに下記の利用率をクリアする要件が出てきました。

<医科点数表>令和6年10月~令和7年1月~
A000 初診料 注16イ 医療DX推進体制整備加算1 11点15%30%
ロ 医療DX推進体制整備加算2 10点10%20%
ハ 医療DX推進体制整備加算3 8点5%10%
中医協(総-8)「個別改定項目について②医療DX推進体制整備加算の見直し」より編集

利用率の実績については、適用時期の3月前のレセプト件数ベースマイナ保険証利用率を用いるとされていますが、令和6年10月~令和7年1月に関しては、適用時期の2月前のオンライン資格確認件数ベースマイナ保険証利用率を用いることもできるとされています。
なお、この利用率については3月毎に見直しをすることとされており、令和7年4月以降は本年度末をめどに検討することとされています。

その他の新たな施設基準(令和6年10月~)

これまでの(1)~(5)(7)についてはそのまま、イ~ホ、トと読み替え、(6)(8)が変更(項目番号 へ、チ)、そして9番目に以下の項目が追加(新設)されています。

リ マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制を有している
  こと。(新設)

中医協(総-8)「個別改定項目について②医療DX推進体制整備加算の見直し」より編集

医療情報取得加算の見直し

「医療情報取得加算」については、「令和6年 12 月2日から現行の健康保険証の発行が終了し、マイナ保険証を基本とする仕組みに移行することを踏まえ、マイナ保険証の利用の有無に着目した加算の点数差を見直し、標準的な問診票や、オンライン資格確認等システムからマイナ保険証を通じて取得された医療情報等の活用による質の高い医療の評価へと見直す」とされています。

初診時・再診時(3月に1回)、調剤報酬(12カ月に1回)それぞれ1点の加算に変更されることになりました。適用開始は、令和6年12月1日からです。

現状でマイナ保険証をはじめとするマイナンバーカードの活用について、今や「使用しない」という選択はなく、活用することが前提で話が進んできている、という印象があります。
マイナ保険証を利用するのが当たり前で、次の段階(フェーズ)に移行している・・・つまり、オンライン資格確認等システムからマイナ保険証を通じて情報を取得し、その情報を診療に活かす・・・というというフェーズに入ってきています。医療機関の皆さんは少し考え方を変え、ついて行かないといけませんね。

保険証の発行をしなくなるということで、「今後保険診療が受けられなくなるのか?」という質問もいただきますが、たとえは悪いかもしれませんが、通帳にキャッシュカードが付加され銀行の営業時間外にも出金できるように、マイナンバーカードに保険証の機能が付いて、マイナンバーカードを持っていれば保険証がなくても保険診療が受けられ、自分の受診状況やお薬の内容等を伝えることができるようになる・・・ということは今より便利になる!・・・、そして医療機関の皆さんも、保険証に医療証、限度額認定証、はたまたお薬手帳に問診は・・・と色々な確認事項が多かったものが、ひとつにまとめられて、しかも、取り込みを行えば登録の手間も省けるし、間違いがなくなるし収入も増える・・・ラッキー!・・・と、考えを切り替えてみたらどうでしょうか?
患者さんの問診や予診の手間も省け、診療の形も変わっていくかもしれません。

まとめ

今回の改定では、実績・・・つまり実際にどの程度実施されているか、ということが重要視され、3月毎の見直しなど、細かな対応が求められるようになってきました。事務職員の対応力や情報収集力がとても大事になってくるように思います。

オンライン資格確認の顔認証カードリーダーを導入したけれどこれからどうするの・・・と、使えない・使わない理由を探している医療機関の皆さん、もうそんなことをしている時間はありません。医療DXを進めていくのは、事務職員や看護職員など、医療機関のスタッフの皆さんです。医療DXの本来の在り方を考え、どうすれば活用できるのか、今こそみんなで考えて、知恵を出し合っていきましょう!

<参考資料> 令和6年7月22日確認

■中央社会保険医療協議会総会(第592回)議事次第 ⇒(こちら)
 (議題)
 1.薬価専門部会からの報告について
 2.臨床検査の保険適用について
 3.長期収載品の処方等又は調剤に係る選定療養について
 4.歯科用貴金属価格の随時改定について
 5.医療DXに係る診療報酬上の評価の取扱いについて(諮問)
 6.個別改定項目について
 7.答申書附帯意見について
 8.答申について

2024年7月22日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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