Q&Aより~医師国保がいい?それとも協会けんぽ?~

長 幸美

医療介護あれこれ

時々、職員さんの福利厚生についてご相談をいただくことがあります。
その中で最近比較的よく聞かれるのが、「医師国保の場合、自家診療は保険診療をできないといわれますが、協会けんぽの場合はどうですか?」というご相談です。
今回は医師国保と協会けんぽの違いを見ていきましょう。

医師国保とは・・・?

医師国保は各自治体や大学の医師会が運営する保険制度で、簡単に言うと、医師会に所属する従業員5人未満の個人開設開業医とその家族、従業員が加入することができる保険制度です。
開業医であっても従業員が5人以上や医療法人の場合は、協会けんぽなどの健康保険に加入することが義務付けられています。また、従業員が5人未満の開業医であっても必ずしも医師国保に加入しなければならないわけではなく、通常の国保などに加入することも可能です。


例えば、福岡県医師国保に加入できる方は、医療に従事する福岡県医師会員であって、福岡県、佐賀県、熊本県、大分県及び山口県の地区内に住所がある方・・・と限定されています。
75歳以上の方は、新規に加入することはできません
75歳のお誕生日を迎えた場合は、後期高齢者医療の対象(被保険者)となるため、医師国保の資格を喪失することになります。

医師国保と一般的な国民健康保険・協会けんぽとの違いは?

医師国保は前述したように「医師会に所属する従業員5人未満の個人開設開業医とその家族等」が加入することができる保険制度で、加入要件がありますが、一方で、国保は一般的な自営業者が加入する保険であり、健康保険は会社員などの事業所に雇用されている労働者が加入する保険です。

その他、医師国保と国民健康保険・協会けんぽの違いは、保険料の違いが大きいといわれています。
一般的な国保や健康保険は、収入に応じて加入者が負担する保険料が決まります。
収入が高くなると保険料も高くなるため負担が大きくなりますが、医師国保は収入に関係なく年齢区分や加入者の種別によって保険料が定められるのが特徴のようです。
また、医師国保と国保は扶養家族にも保険料がかかるため同一世帯の加入者が多い場合はその分負担も増えます。一方、健康保険は扶養家族の収入などの条件によっては保険料が免除されるため、扶養家族が増えても保険料の世帯負担は大きく変わらないということもあるようです。
加入される保険により、ご確認ください。

医師国保のメリット・デメリット

医師国保の一番の特徴は、保険料が収入に関係なく一定に定められている為、収入が高い医師ほど保険料の負担が割安になる、という特徴があります。また、医療費の一部負担や高額医療の一部払い戻し、出産一時金などの制度も利用できるため、高額な医療が必要な扶養家族がいる場合にも有利になると思います。また、協会けんぽのように事業所との保険料の折半する制度もありません。

しかし、保険料が収入に関係なく一定額であるということは、何らかの理由で収入が減少した場合であっても、保険料が減額されることは無いということになります。
また、自家診療を行った場合の保険請求が出来ないこともデメリットの一つだと思います。
保険料の事業所負担がないということは、従業員本人の保険料が一般的な協会けんぽより増えてしまうこともあるかもしれませんので、所属される医師会等によくご相談いただいて、判断されることをお勧めします。

医師国保では自家診療はできない?

自家診療とは、医師が、医師の家族や従業員に対し診察し治療を行うこといいます。
医師国保では、自家診療を保険請求することが認められていません

国保や協会けんぽなど、自家診療を保険診療として行う場合については、加入する医療保険制度の保険者により取扱いが異なります。認められる場合についても、診療録を作成し、必ず診察を行い、その内容を診療録に記載し、一部負担金を適切に徴収することが必要になります。
無診察投薬、診療録記載の省略、一部負担金を徴収しない等の問題が起こりやすいため、診察をする側、受ける側ともに注意が必要です。

まとめ

今回、今年4月より福岡県の医師国保も自家診療のお薬代について、保険請求することが認められなくなり、最近になり返戻等が行われてしまい、弊社へのお問い合わせいただくことも増えてきました。
これを機に、一度仕組みを見直し、ご検討いただければと思います。

<参考資料> 令和6年10月28日確認

■福岡県医師国民健康保険組合/自家診療に係る「薬剤保険給付の廃止」について は(こちら)
  ⇒「福岡県医師国保組合のご案内」 ⇒「自家診療について

  ⇒他県については別途医師国保組合がありますので、そちらでご確認ください。

■厚生労働省/保険診療における指導・監査 のページは(こちら)
  ⇒ 令和6年度保険診療の理解のために「医科」は(こちら) 

2024年10月29日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

制作者の直近の記事

コラム一覧に戻る
お問い合わせ

PAGE TOP