Q&Aより~再来の方に初診料が算定できるって本当ですか?~

長 幸美

医療介護あれこれ

初診料算定については、クリニックの皆さんは悩まれていることが多いようで、1年に数件のお問い合わせがあります。クリニックの先生方からのお問い合わせの多くは、「再来初診の方は何カ月空いたら初診料が算定できますか?」というものと、「初診料は1人1回のみですよね」というものがほとんどです。また、クリニックでレセプトを拝見していて、もったいないなあと思うことが多いのもこの初診料・再診料の算定方法です。

今日は診療所での初診料の算定要件について少し整理してみたいと思います。

診療報酬上のルール

まずは初診料と再診料の算定ルールを見てみましょう。

A000_初診料の算定要件

診療報酬点数表には、「保険医療機関において初診を行った場合に算定する」と記載があります。
さらに、初診料算定の原則として、「特に初診料が算定できない旨の規定がある場合を除き,患者の傷病について医学的に初診といわれる診療行為があった場合に,初診料を算定する。なお,同一の保険医が別の医療機関において,同一の患者について診療を行った場合は,最初に診療を行った医療機関において初診料を算定する。」とされています。

つまり、分かりやすく言うと、患者さんが初めて診療所で診察を受けたときと、これまで診療していた疾患が治癒して、全く別の疾患にて受診する場合です。

初診料算定のポイントは次の3点になると思います。
①保険医療機関において初診(医学的に初診といわれる診療行為)を行った場合
②特に初診料が算定できない旨の規定がある場合は算定できない
③同一の保険医が別の医療機関において同じ患者に診療を行った場合は最初に診療を行った医療機関において初診料を算定する

①については「医学的に初診といわれる診療行為」がポイントになります。
オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(第3回資料1)」の中で以下のように整理されています。

医師法第20条にいう「診察」とは、問診、視診、触診、聴診その他手段の如何を問わないが、現代医学から見て、疾病に対して一応の判断を下し得る程度のものをいう(※)、とされている。
いわゆる初診においては、通常、症状・疾患に対する治療・処方のため、診察を通して診断等を行うことが想定されることを踏まえると、本指針における「初診」についても、診察の中でも新たな症状等(ただし、既に診断されている疾患から予測された症状等を除く。)に対する診察を行うことをいう 、と解釈される。

オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会(第3回資料1)より

②については、健康診断等を実施したのちに保険診療が発生した場合(処方や精密検査を実施する)などがあります。この場合診察料(初診料・再診料)については、健康診断料の中に含まれているという考え方になり、保険請求はできません。
レセプト上は診察料の請求をせず、治療(処方箋の発行や精密検査の算定等)のみの請求になりますので、無診察診療を疑われることになります。この為、「実日数」カウントのための診療料コードを入れ、レセプトに「初診料は健診(検診)にて済み」などのコメントが必要になります。

③については、グループ医療機関等で先生が病院とクリニックで診療を行う場合などがありますね。
例えば診療所の患者さんが、本院で同じ医師に診療を受け処置や精密検査を実施する場合などですが、これはごく少数なのではないかと思います。同一の医師の診断かどうかがポイントです。

A001_再診料の算定ルール

再診料は、許可病床200床未満の保険医療機関(200床以上の場合は外来診療料を算定)において再診を行った場合に算定するものとされています。
さらに通知の中で、「再診料は、診療所又は一般病床の病床数が200床未満の病院において、再診の都度(同一日において2以上の再診があってもその都度)算定できる」と記載されています。

Q&Aより

ここで最初にご紹介した質問事項について触れてみたいと思います。

Q1_再来初診の方は何カ月あいたら初診料が算定できますか?

同じような内容で、「前回来院から3ヶ月あいたので初診料を算定したが、査定され、再診料に変えられた」というご連絡をいただくこともあります。

結論から言うと、初診料の算定要件には、「〇カ月あけたら算定可能」というルールはありません。
これまで診療していた疾患が終了・・・つまり「治癒しているかどうか」がポイントになります。
従って、1月に2回初診料を算定する場合も出てきますし、3月に1回の来院であっても、治癒していなければ再診料の算定の状態にもなるわけです。

例えばお問い合わせの「前回来院から3ヶ月あいた・・・」という患者さんのカルテを確認すると、投薬が3か月分出ていることがわかりました。従って病名も、以前の病名が付いたまま・・・つまり診療が継続していると解釈され査定(調整)されてしまったわけです。

Q2_初診料はひとり1回だけの算定ですよね?

この質問は、クリニックからよく受ける質問です。
結論から言うと、再来院されている患者さん(カルテがある患者)であっても、初診料が算定できるケースがあります。

来院される患者さんがすべて生活習慣病のように長く継続治療が必要な患者さんばかりではありません。例えば、感染症の治療やケガの治療であれば、治療をして治癒してしまえば、その後診療所に診察には来院なさらないのではないでしょうか?

例えば、今の時期であれば感冒やインフルエンザ等で、クリニックに掛かられるケースもあると思います。その診察の時に、およそ3~5日分のお薬をもらって、
①「お熱が続くようなら診察に来てください」
②「抗生物質を出しますので、無くなるころもう一度診察しましょう」
③「お薬を飲みきってまだ症状が続くようなら来てください」
と言われた経験はありませんか?
①の場合は症状が悪化しているのでわかりやすいと思いますが、②の場合は強いお薬を使ってしっかり治癒の傾向にあるかどうかを診て継続治療するかどうかを決める為ですし、③の場合はまだ少し症状が残っているのでもう少し薬を使ってみて特に症状の悪化がなければ終わりでいい(つまり治癒)という判断ができる状況なのだと思います。
寒い時期になると、月初めに受診した方が、治癒したとしても、その月の後半に再度具合が悪くなり受診するというケースも考えられますので、そのような場合は前回の受診の時の傷病名を治癒にできる状態であれば、次の受診でも初診料が算定可能な場合があるということになります。

先生によっては、③のように表現をされるケースがあると思います。この場合再診料の算定になるケースが多いと思いますが、ポイントは前の処方時の病名が治癒しているかどうか、というところ・・・念のための薬剤処方の場合は悩ましいケースになると思います。

自己中断による初診料の算定について

初診料の算定ルール(通則)の中に以下のように記載があります。

(14) 患者が任意に診療を中止し、1月以上経過した後、再び同一の保険医療機関において診療を受ける場合には、その診療が同一病名又は同一症状によるものであっても、その際の診療は、初診として取り扱う。なお、この場合において、1月の期間の計算は、例えば、2月10日~3月9日、9月15日~10月14日等と計算する。

(15) (14)にかかわらず、慢性疾患等明らかに同一の疾病又は負傷であると推定される場合の診療は、初診として取り扱わない。

厚労省/診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 令和6年3月5日
保医発0305第4号別添1より

精密検査の予約を取っているにも関わらず来院しないケースや生活習慣病であっても投薬を自己中断して来院されないケースも時々見受けます。このような場合「自己中断」として初診料を算定することができるケースがありますが、注意が必要です。

例えば、処方された薬剤を飲みきってさらに1か月(暦月)経過した場合と考えていただくとよいかと思います。つまり最終来院日から1か月ではないことに注意が必要です。
医療機関に勤務していた時の経験談をお話しすると、予約がある精密検査の場合ですと、来院しなかった場合は次の予約を入れるようにアプローチして、カルテの中に記載をしていました。また、外来予約を入れている診療科の場合ですと、受診しなかったことがわかりますので、翌日連絡を入れ、こちらも次回の予約やお薬の残数を確認してカルテに記載するようにしていました。
このようにしていることで、仮に慢性疾患であっても「自己中断」であることが明白になり次回来院時に初診料の算定ができる状況が把握できます。

健康診断と初診料・再診料の算定の整理

健康診断と同日の診療については、初診料・再診料の算定はできませんというルールを説明しました。では当日と別日に受診した場合整理しておきましょう!

例1_当院で健康診断を行い、同日にいつももらっている薬をもらいたい+リハビリをしたい

診療内容に関係なく、初診料・再診料は請求できません。
実日数のみ計上し、「健診にて済み」のコメントを入れましょう!

例2_健診結果に基づき、後日精密検査等で受診された場合

再診料は算定できます。診療開始日と算定内容に齟齬が出ますので、レセプト請求には、「初診料は健診にて済み」とコメントを入れましょう!

例3_他の医療機関にて実施された健診結果をもって受診された場合

当院が初めての受診であれば、初診料が算定できます。当院受診中であれば、再診料を算定できます。
結果に基づき検査等の治療を進めていきましょう!

例4_当院で健診を過去に受けているが、健診内容と全く違う疾患で初めて受診した場合。

例えば、当院で健康診断だけを受けているが、健診に関連する受診はなく、インフルエンザ等により受診した場合などが該当すると思いますが、この場合は初診料の算定ができると思います。

まとめ

今回、よく質問を受ける「再来の方に初診料の算定できるか?」ということについて、まとめてみました。

初診料算定の原則に、「医学的に初診といわれる診療行為があった場合に初診料を算定する。」と記載されていますので、カルテの中にも、医学的に初診といわれる診療行為を行っていることを記載しておく必要があります。何故なら、カルテは診療報酬請求の根拠であり、カルテに記載されていないことはやっていないといわれてしまうからです。
また、カルテ記載に関しては、健康診断と保険診療のカルテを分けておく必要がありますので、そのことも、知っておきましょう!

診療所において初診料が算定できるかどうかは大きいと思います。少し整理ができたでしょうか?
診療録は疾患ごとに治癒かどうかの整理をしておくと初診料の算定漏れの助けになる
と思います。

<参考資料>  確認日令和6年12月6日確認

■厚生労働初/令和6年度診療報酬改定

 ・診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知) 令和6年3月5日
保医発0305第4号
   ⇒診療報酬に関する事項

本コラムの内容は、執筆時点での法令等に基づいています。また、個別のお問い合わせには応じられない可能性があることをご了承ください。 

2024年12月6日

著者紹介

長 幸美
医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント

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