
Q&Aより~高齢者虐待防止措置未実施減算、身体拘束廃止未実施減算の取扱いについて~
長 幸美
医療介護あれこれ令和6年度介護報酬改定においては、利用者の人権の擁護、虐待の防止等をより推進する観点及び身体的拘束等の更なる適正化を図る観点から、適切な措置が講じられていない場合に基本報酬を減算する「高齢者虐待防止措置未実施減算」の新設及び「身体拘束廃止未実施減算」の拡大が行われていますが、令和7年4月より一部サービスにおいて身体拘束廃止未実施減算の経過措置期間が終了することになっています。この為、経過措置終了を前に、表記通知が発出されましたので、今回はこちらをみていきましょう!
目次
身体拘束廃止未実施減算の適用について
厚生労働省は1月20日、介護保険最新情報にてQ&Aを発出しました。
内容は、介護事業所の利用者に身体拘束を行っていなくても、委員会の開催や指針の整備など身体拘束の適正化を図る措置を全て講じていなければ「身体拘束廃止未実施減算」が適用されるとするものです。
身体拘束の適正化を図る措置の要件
適正化措置の要件としては、以下の3点があげられています。
①身体拘束の適正化を図る委員会を 3 カ月に 1 回以上開催すること
②身体拘束適正化のための指針の整備
③定期的な研修の実施
つまり①については、複数で確認・協議していく仕組み、②はルール化すること、③は①②について施設内で職員に周知し、身体拘束する場合は適正に評価・実施することが求められています。
今回のQ&A発出により、これら全ての措置を講じていなければ、身体拘束を行っていなくても身体拘束廃止未実施減算が適用対象となることとされ、
■1_短期入所系・多機能系サービスでは所定単位数の 1%を減算すること
■2_施設系・居住系サービスでは、所定単位数の 10%を減算すること
そして、身体拘束の適正化を図る措置が講じられていない事実が発覚した場合は、その事実が発覚し
た月に減算が適用され、過去にさかのぼって適用することはできないとされています。
やむを得ず身体拘束を行うことができる要件
利用者の生命や体を保護するためにやむを得ず身体拘束などを行う場合には、「切迫性」
「非代替性」「一時性」の 3 要件全てを満たすことが大事になります。
また、これらは記録が確認できなければ、減算が適用されるということも、留意しておきましょう。
「切迫性」とは、利用者本人又は他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いことと定義されています。「切迫性」と判断する場合、身体拘束による日常生活への悪影響を考慮してもなお身体拘束をしなければならないような状況なのか・・・ということを判断する必要があるのです。
「非代替性」とは、、身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこととされています。
そして「一時性」とは、身体拘束その他の行動制限が一時的なものであるこということです。つまり、危険回避の時のみ短時間・最低限で身体拘束を行うということになりますね。
記録がない場合も減算の対象になる?
Q&Aでは、記録がない場合も減算の対象になることが明記されています。
また、訪問系サービス及び通所系サービス等について、減算の適用はないが、当該要件を満たした記録の確認ができない場合は、指導の対象になることに留意されたい、という記載もありますので、未実施減算の規定がなくても、身体拘束の実施については十分に留意していく必要がありそうです。
高齢者虐待防止措置未実施減算の研修会実施について
今回の事務連絡には指定基準の解釈通知に示された研修の回数についてQ&Aとして高齢者虐待防止措置未実施減算をされないように、職員研修は年何回以上実施するべきかが問われています。
回答として介護サービスごとに、必要とされる研修会の回数が異なっていることが示されていますので、十分に留意していく必要があります。施設系・居住系サービスでは、年2回以上、訪問系・通所系・短期入所系・多機能系のサービスでは、年1回以上となっています。
<年に2回以上>
(介護予防)特定施設入居者生活介護、(介護予防)認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院
<年に1回以上>
訪問介護、(介護予防)訪問入浴介護、(介護予防)訪問看護、(介護予防)訪問リハビリテーション、通所介護、(介護予防)通所リハビリテーション、(介護予防)短期入所生活介護、(介護予防)短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、(介護予防)認知症対応型通所介護、(介護予防)小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援、介護予防支援
また、研修の実施した内容や参加者についても、研修記録として残しておくようにしましょう!
まとめ
今回の事務連絡は、身体拘束廃止未実施減算の経過措置が、令和7年3月31日までで期限が切れることに基づき、改めて発出されたものとなっています。
期限まであと少し時間がありますので、サービス事業所毎に今一度見直しをされ、要件が満たせるように準備を進めていきましょう!
<参考資料>
■厚生労働省/介護保険最新情報_Vol.1345 令和7年1月20日発出(令和7年2月1日確認)
⇒高齢者虐待防止措置未実施減算、身体拘束廃止未実施減算の取扱いに係る Q&Aの周知について
2025年2月2日
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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