【医療介護あれこれ】調剤薬局のピンチをチャンスに変える!~薬剤師さん、地域に出よう!~
長 幸美
アドバイザリー先日ある集まりの中で、調剤薬局の動向について、話が出ました。
その中でとても興味深い話をお聴きしたので、皆様にも一緒に考えていただければと思います。
それは、このコロナ禍において、調剤薬局がようやく「対人業務に動き始めた」というお話だったのです。これは、在宅医療を行う先生方にとっては、喜ばしい動きですし、薬-薬連携の必要性を感じている医療機関にとってもうれしい動きです。一人の生活者としての患者が入院した時に在宅での服薬状況が分からない、退院後の服薬管理を行う医療機関は、どのように患者の生活力が変わっているのか分からないという状況では在宅での在宅での患者さん支援が十分にはできない・・・というところを感じておられる薬剤師さんがいらっしゃった!ということだと思います。
実は「コロナ禍」において、医療機関にとってもとても厳しい状況が続きましたが、その影響は調剤薬局を直撃している状況があります。4月~5月にかけ「緊急事態宣言」により、患者の受診控えが起き、電話再診による長期投与など、これまでにない受診動向となってしまったのです。病院や診療所から患者がいなくなり、その影響で調剤薬局の患者も減り、収入が半減したところもあり、とても経営維持していくことが難しくなった調剤薬局もありました。
調剤薬局の収入は、調剤技術に対する報酬と、対人業務といわれる服薬指導等のいわゆる薬剤師フィーといわれるものと薬剤料の差益により得られています。その調剤自体が減ってしまうのですからどうしようもない状況なのです。
前回の平成30年度改定から薬剤師の仕事は「対物業務から対人業務へ」というフレーズで役割が変わってきていることがうたわれていましたが、どうしても目の前の「調剤業務(対物業務)」に手を取られ、なかなか人に対する業務が後回しになっていることがあったと思います。それが、薬機法の改正もあり、法的に薬剤師さんの役割が変わり始めているということを話されていました。
外来医療や在宅医療の役割が、「地域の生活を支える医療」に変化していっていますが、調剤薬局の役割も、単なる処方箋の薬剤を調剤して渡す、という役割から、地域の中で医療機関と生活を繋ぐ「地域連携薬局」、つまり、地域包括ケアを支える一員としての役割に変貌を遂げようとしています。どういうことかというと、病院の薬剤師と地域の薬剤師が連携を取り、お薬の服用や効果、副作用について、いち早く気付き生活の支援をしていく役割に変化しているということです。
「地域連携薬局」は地域包括ケアシステムの一員ですから、訪問看護やケアマネジャーと同様に医療機関よりも患者に近いところで、生活に寄り添い、服薬状況や副作用等の状況の把握、薬剤の管理状況をみていくことが求められていると思います。
例えば、心不全で薬物管理が必要な患者が入院した場合、服用している薬物については、調整し退院後の投薬量なども細かに調整されるでしょう。そして、退院後は地域のかかりつけ医のもとで、継続投薬を受けることになると思います。仮に、認知機能が低下し、入院中に一包化や粉砕等の配慮が必要になっていたとすると、看護師や病院薬剤師の管理下で服薬管理を行われていた状況でそのまま退院された場合、在宅療養において同様の服薬管理ができるでしょうか? そういった患者の変化を察知することも必要かもしれません。
家族のサポートがどの程度行われるかにもよると思いますが、誰も気にしない状況が続けば、服薬管理がうまくいかず、病態が悪化して医療機関に再入院となることも考えられます。
薬剤師さんからは、「退院カンファレンスや担当者会議に呼ばれない」・・・というケースはまだまだ多いのではないでしょうか?
「病院から入院連絡もないし・・・」「かかりつけ薬局があるとは知らなかった・・・」という声が聞こえてきそうですね。けれど、待っていても声はかかりません。調剤薬局の姿勢や「私たちがかかりつけ調剤薬局、こんなサービスができます」というアピールは行われていますでしょうか? ケアマネジャーや地域連携室にどのようなアプローチをされているでしょうか?
私も、地域連携室の立上げにも関わっていましたが、病病連携・病身連携がすんなりとはじまったわけではありません。今でこそ、かかりつけ医やケアマネジャーの存在を病院側も意識していますが、連携が行われ始めた当初は、後方連携・前方連携といっても誰も知りませんでした。地域連携室とて、なかった時代です。診療報酬の政策誘導が行われたとはいえ、病院の地域連携室は診療所やほかの病院へ日参し、自分たちの取り組みを伝えていく努力を積み重ねてきました。自分たちの病院に何ができるのか、連携の重要性を繰り返し、伝え続けましたよね? 今は、調剤薬局も、地域に出て「地域包括ケアシステム」の一員として、何ができるのか、ということを伝えていく時期ではないでしょうか?
ホームドクター(かかりつけ医)を持ちましょう、ということとともに、ホーム薬剤師(かかりつけ薬剤師)を持ちましょう!ということは、新しい概念であることを意識して、繰り返し、アプローチする必要があると思います。
ピンチはチャンス!
調剤薬局の皆さん、地域の中での立ち位置をもう一度見直してみませんか?
医業経営支援課
著者紹介
- 医業経営コンサルティング部 医業コンサル課 シニアコンサルタント
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